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【PODCAST書き起し】山内ケンジさん(劇作家・演出家)と城島和加乃さん(プロデューサー)に演劇と「城山羊の会」について聞いてみた(全5回)3,山内さんの演劇の創作と演劇・映画・CMのこと

【PODCAST書き起し】山内ケンジさん(劇作家・演出家)と城島和加乃さん(プロデューサー)に演劇と「城山羊の会」について聞いてみた(全5回)
3,山内さんの演劇の創作と演劇・映画・CMのこと

【山下】山内さんは本を書く時は、なんか自宅の書斎でとか、そういうの決めていらっしゃるんですか?

 

【山内】自宅ですね。外では書かないですね。

 

【山下】それは別にコロナとかではなくて。

 

【山内】じゃなくて。

 

【山下】それは前から?

 

【山内】うん。

 

【山下】じゃあ、割とちゃんとこうスペースを、自分のところで書けるところが用意されてるんですか? 書斎的なものが。

 

【山内】書斎っていうか机っていうのがあれば。

 

【山下】ああ、なるほど。だいたいあの……。

 

【山内】ベッドがあってね、うしろに。

 

【山下】ああ、もうすぐ寝れるんですね。

 

【山内】すぐ寝れる。

 

【山下】へえ。じゃ、僕の受験勉強の時の部屋みたいな感じだな。

 

【山内】うん。

 

【山下】寝てましたけど、私は。

 

【山内】もうほとんど寝てますよ。

 

【山下】え、本当ですか?

 

【山内】うん、だからその、もう、1日2行しか書けない時もある。

 

【山下】はいはい。

 

【城島】全然外では書かないんですか?

 

【山内】書かないです。

 

【城島】はあ。岩松(了)さんとかは外でしか書けない。

 

【山内】そうそう。

 

【山下】そう、なんかね。

 

【城島】喫茶店でいつも。

 

【山下】この前来てくれた、横山拓也さんは図書館で書くって。

 

【山内】まあ、図書館静かだからいいですよね。

 

【山下】ああ、家だとやっぱりいろいろ、ね、っていうのあったけど逆なんですね、山内さん。なるほど。

あと、創作のルーチンっていうので、僕なんか午前中に書き物しないと書けなくなっちゃうんですけど。午後はなんか疲れちゃって。山内さんはどうですか? 逆に夜中に書くみたいな。

 

【山内】うーん……その期間は、とにかくそれしか考えて……考えられないから。

 

【山下】それに集中して。

 

【山内】うん、でも結局、一日中考えても2行しか書けないとかありますね。

 

【山下】逆に、ものすごいさらさらっと書ける時もあるんですか?

 

【山内】それは追いまくられた時ですね。ギリギリのところ。もうだから、たいてい本が完本するのが、だいたい本番の1週間前とか。

 

【山下】なるほど。

 

【山内】今回10日ぐらい前ね。

 

【山下】あ、早かったですね、今回。なるほど。

 

【山内】まあ、それの……だから終わる……そうですね。だから要するに、終わりのほうはもう見えるんですよ。

 

【谷】え? なんでですか?

 

【山内】終わりのほうって、だから……。

 

【山下】それは終わりが見えちゃうって。

 

【谷】終わり方っていう事ですか?

 

【山内】そうそう。だから全体の5分の4くらいまで書けば。

 

【山下】終わりが見えちゃう。

 

【山内】あと5分の1はもう全部見えていて。そんな感じですよ。

 

【山下】そうなんですね。それ面白いな。初めてそんなの聞きました。

 

【山内】でもその5分の4までいくのが大変なんですよ。

 

【山下】大変なんですね。

 

【山内】だからそのあとの5分の1は、今回は一日で書いてますね。

 

【山下】あ、じゃあ……。

 

【山内】10ページを。

 

【山下】8割ぐらいまでいくとすーっと終わりが見えてきて書けるんだ。なるほど。いや、勉強になりました。いろんな人の創作の話、本当に面白いです、聞いてて。

 

【山内】うん。でも大きいのはやっぱりね、うん……やっぱりその、相当、当て書いてるからっていう事はあると思うんですけどね。

 

【山下】当て書きだから、やっぱりそれが……。

 

【山内】うん、そのようにしかしゃべれないんですよ。そう書いてるから。

 

【山下】そっか。

 

【山内】うん。他の可能性はないの。その人は。

 

【山下】逆に。

 

【山内】その人がそういうふうにするしかないふうに書かれているから。だから翻訳劇とか、別の人の作品で誰かのために書いたものとかになっちゃうと、新しい人たちがそれをやるわけでしょ。

 

【山下】はい。

 

【山内】それはそこに入っていくのに、もういろんな試行錯誤しなくちゃいけないし……だからそれでやっと見つけていくみたいな。本当はキャラが違うのに、この人はキャラが違ってこういうふうにせりふが書かれているのに、でもその人だから、まあこういうふうにやっていこうとかなんか……。

 

【山下】決めていかないといけないですね。

 

【山内】そうそう、思い切ってこう変えてみようとかさ。

 

【山下】そう、難しいですね。

 

【山内】いろんな事しなくちゃいけないですよ。それは、本当に1カ月まるまるかかっちゃうかもしれないです。

 

【山下】なるほどね。逆にそっちの方が大変かもしれない。

 

【山内】大変ですよ、そうなるとね。そうなると大変。

 

【山下】あれですか? 山内さんはその……戯曲を当て書きしているのって、俳優さんはもうほぼそれをそのまましゃべってる感じ?

 

【山内】そう。

 

【山下】だからそれでしゃべれちゃうわけですよね?

 

【山内】そう。もう覚えなくてもいいの。

 

【山下】じゃ、俳優さんとしては結構いいんじゃないですか? しゃべりやすいんじゃないですか?

 

【山内】しゃべりやすいと思いますよ。

 

【山下】ねえ。ちょっと聞いてみたいけど、本当に。「イワタニさんどうですか?」とかね。本当に聞いてみたい。

 

【山内】岩谷(いわや)さんね。

 

【山下】岩谷さん、岩谷さん。岩谷健司さん、失礼しました。

 

【山内】そう。でもみんなそれは岸井(ゆきの)さんとかも言ってましたよ。もう全然覚える必要ないからって言ってた。スルスル入るから。

 

【山下】ギリギリにあがっても、スルスル入れるっていう事なんですね。

 

【山内】ギリギリね。でもギリギリでいいわけじゃないんですよ、でもそれは。言い訳を言ってるようだけど。そりゃあったほうがいいんですよ。

 

【山下】それはそうですよね。

 

【山内】ええ。あったほうがいいです。稽古前にはね。

 

【山下】ええ。でも今の稽古場は、1カ月前ぐらいから稽古場に入って1カ月稽古してっていうのは普通でしょうからね。それ以上なかなか時間も取れないでしょうから。

 

【山内】うん、いろいろなスタイルがありますよね。でも本を書くため……だからなんていうんだろう、新作の場合っていうのは本を書くために稽古するっていうか、ワークショップっていうか、そういう場合もあるし。

 

【山下】ああ、そうか。

 

【山内】あるじゃないですか。だからその場合はなんか1カ月どころか、もう2カ月とか3カ月とかやって、そういう、だんだん作品ができていくように……人もいますよね。

 

【山下】それはでも、いろいろあってもいいっていう事ですよね? 逆に言うと。

 

【山内】うん。でも若い人系ですよね。そんなぜいたくな時間の使い方はやっぱり。

 

【山下】年齢重ねるとやっぱり厳しいですか?

 

【山内】どうなのかな? まあそうですね。年齢重ねると疲れちゃうしね。

 

【山下】まあ僕も同じ……。

 

【山内】というか、僕はでもそのやり方をやった事ないので……ゼロから集まって、ワークショップをしながら作っていくみたいな事を1度もやった事ないんですよ。だから比較もできないんですけど。でもそういう人はいますよね。

 

【山下】はい、いますよね。

 

【山内】それに良いものを作る人もいると思います。

 

【山下】なるほど。圧倒的な手間もかかるけど。あの、これ以降、今日必ず聞こうと思った事。山内さんの舞台の中に、セクシャルなシーンが割とよく出てくるんですけど、あれはたぶんすごく、みんな印象的に残ってると思うんですけど、あれはもう普通に書いて、そういうのが出てくるもんなんですか?

 

【山内】どうですかね……。

 

【山下】割と確信犯的にやってらっしゃるとかっていうのはあるんですか?

 

【山内】確信犯……。

 

【山下】これはここに、これは入った方がいいとかいうような。流れとして。

 

【山内】うーん……。

 

【山下】なんか人が生きる行為の大切なものなんですけど、セクシャルなものっていうのは。なんかそれが、なんかすごく印象に残ってるんで。そこはなんか、無意識の意識なのかしら? なんですかね?

 

【山内】それはやっぱり、その時のキャストによると思うんですよ。

【山下】あ、そういう事なんですね。

 

【山内】そう。それが似合う人はそういうふうになってる。似合うっていうか、それができる人。

 

【山下】そうでない人もいる時は書かないと。

 

【山内】書かない。

 

【山下】ないのもありますよね?

 

【山内】あります。

 

【山下】ありましたよね?

 

【山内】そう。キスぐらいはしてますけどね。

 

【山下】でもね、あの、割とものすごくエキセントリックなセクシャルにはなってないのもあるからね。

 

【山内】そうそう。『埋める女』とかそうです。

 

【山下】ああ、そうですよね。

 

【山内】キスするぐらい。

 

【山下】はい、そうでしたね。ああそういう事か。なんか今ずっと聞いてると……これ、城島さんにもちょっと聞いてほしいんですけど、山内さんって俳優さんを選んで、俳優さんをどうやって活かして、そのシチュエーションで舞台上で遊んでいくかみたいな事を、なんかすごく意識して考えていらっしゃる方なのかなって、すごく今日お話聞いて思ったんですけど、うがち過ぎ?

 

【城島】いや、全く考えた事ないです。

 

【山下】あ、そうですか。

 

【城島】山内さんに全部おまかせというか、なんでしょう……たぶん俳優も私たちスタッフも山内さんのやりたい事にただついて行ってるだけなので、それがどういうふうな意図で、どういう目的でどんな事をしたいから、っていうのを、たぶん聞いた事のある人はひとりもいないと思います。私も聞いた事ないですし。ただやっぱり完成したものの完成度の高さと、他にはない山内演劇にしかない魅力みたいなのが……。

 

【山下】ありますよね。オンリーワンなのが分かりますよね。

 

【城島】そうそう。それで、これは本人の前ではずかしいんですけど、本当にはずれがないんですよ。できあがった時に。だからみんな、これからもたぶんなんにも考えずにただついて行くだけ。

 

【谷】いやもう、本当にリピーターは絶対ですよね。いますよね。

 

【城島】そうです、お客さんもそうですよね。

 

【谷】多いですよね。

 

【城島】私たちだけじゃなくて。

 

【谷】それでまたそれが広がっていくって感じですよね。

 

【山下】1回観て面白くなくても2回……。僕、2回か3回は観るようにしてるんですよ。でね、2回以上面白かったらずっと観に行きます、だいたい。時間が空いていれば。で、城山羊の会はそうなっているんですよね。

 

【城島】城山羊の会って、おじさんが多いって言われているんですよ、お客さんに。

 

【山下】ああ、私がまさにそれ。

 

【城島】おじさんの心をわしづかみにする何かが。

 

【山下】僕と谷さんはおじさんだから、ばっちりおじさんの心だ……。

 

【城島】「中年の男性を劇場に呼ぶには城山羊の会しかないだろう」と言われている。いや、本当に。そう言った評論家の方がいるぐらい。

 

【谷】そうですかね。

 

【城島】でも本当に割合からすると、他の演劇に比べると……。

 

【山下】男性率高いですよね。

 

【城島】男性率、しかも、たぶん40代、50代、60代っていう。

 

【山下】あとなんか、会社の話とか出てくると、なんか社会人経験を。

 

【谷】ああ、確かにね。

 

【山下】その、それがむっちゃリアルなんですよ。なんかあの……。

 

【城島】『効率の優先』とかですか?

 

【山下】そうです。もう『トロワグロ』とかもそうだけど、広告会社の人が来たりとかしてね。

 

【山内】それは単純に最近ほら、今回出してないけど、前回、前々回、電通……。

 

【山下】あれ具体的。

 

【山内】「電通にお勤め」とか出してるんですけど、その前、『トロワグロ』は企業名。

 

【山下】そう、企業名出てますよね。だから……。

【山内】それはね。

 

【山下】あれは何?

 

【山内】なんて言うんですかね? 別に電通をどうしても出したいわけじゃなくて、他にこんな事で電通の人が出てくるってあんまりないだろうっていうだけですね。

 

【山下】ああ、そうか。だから面白いんだな。

 

【山内】あと悪役ですよね、たいてい電通は。

 

【城島】私の知り合いの電通の人が、帰りがけに「やっぱ電通ってそう思われてんだな……」って一言言って帰ったことありましたけど・・・。

 

【山下】あの、あともう1個、山内さんがインタビュー答えたやつで聞きたいのが1個あって。CMをやってて演劇をやり始めたら全然違うものなんだよ、っていうふうにおっしゃってたのがすごい印象に残ってて。

 

【山内】そりゃそうですよね。だってCMから映画よりかはね。

 

【山下】いや、そりゃそうだ。

 

【山内】なんにも共通点……演技してる部分があるっていうだけです。

 

【山下】だけですよね? しかも尺も違うし。

 

【山内】そう。

 

【山下】逆に、じゃあそこから話を広げると、映画とCMだと近いですか? 山内さん。

 

【山内】機材は同じですもんね。

 

【山下】そうですね。

【山内】役職も。

 

【山下】ええ。やってる現場もほぼ一緒ですもんね。ただ本が違うじゃないですか。長いし。そこはどんな感じなんですか? 映画は。山内さんやってて。

 

【山内】CMと映画の差っていうのは本当にない。長さだけだと思うんですけど。

 

【山下】そうなんですね、なるほど。

 

【山内】ただそれよりも、演劇の本と映画の本の違いっていうほうが、僕には今なんていうか課題というか。

 

【山下】なんですか? それ。

 

【山内】当然会話が長くなるじゃないですか。演劇の本書いて。

その演劇の本、劇作家が映画の本を書くっていうのが、まあだから当然……。

 

【山下】会話長くなる?

 

【山内】そう、長くなる傾向にあるんですよ。

 

【山下】そうなんですね。

 

【山内】で、それは映画の本としては、あんまりほめられた事じゃないわけ。だからそこですよね。

 

【山下】なるほど。

 

【山内】と言って、でも、もう短くしようとは思ってないですけどね。

 

【山下】それはそれでいいじゃん、と。

 

【山内】っていうかもうやけくそになって。

【山下】やけくそになって。

 

【山内】やけくそになってんの、もう。

 

【山下】そんな事ないと思いますけど、本当に。

 

【山内】もうね、そんな感じです。ほら、シネフィルの人たちがいるじゃないですか。

 

【山下】シネフィルね。

 

【山内】(シネフィルの人たち)は、そのほら、演劇的な映画っていうのをばかにするでしょ?

 

【山下】そうですか?

 

【山内】とってもだめ……。

 

【山下】『ドライブ・マイ・カー』とか違うじゃないですか、あれ。演劇のシーンが出て来るし。どうでしょうか?

 

【山内】演劇が出てくるだけで、映画なんじゃないかな。ちょっと分かんないんだけど。

 

【山下】そっか、違うんだ。でも、そうかもしれないね。あの、山内さんの今度の映画の話を少ししてもいいですか? ちょっとだけ聞いても。それはややこしいのかな?

 

【山内】いや、別にいいんですけど。

 

【山下】チラシが入っていたんで谷さんに持ってきてもらったんですけど、実はこの『夜明けの夫婦』という映画が2022年6月に公開をされるんですけど。これ河村(竜也)プロデューサーがかんでらっしゃるんですね。

 

【山内】ああ、それはたまたま。

 

【山下】はい、びっくりしたんですよ。

 

【山内】たまたまですね。なんか本を。

 

【山下】ありがとうございます。

 

【山内】本を……ま、もともと知り合いだったんですよ。

 

【山下】河村プロデューサーと?

 

【山内】そうそう。

 

【山下】へえ。それはどういうきっかけですか?

 

【山内】それは河村さんのほうから僕の『友だちのパパが好き』っていう映画をすごく気に入って。

 

【山下】面白かったと。

 

【山内】そうそう。で、僕のところに連絡が来て、そこからなんだかんだと定期的に会ってたりとか。

 

【山下】あ、そういう事だったんですね。

 

【山内】野上(信子)さんとかもね。

 

【山下】ああ、そうなんですね。

 

【山内】つながりがあるんですけど、でもこれは別に初めからからんでたわけじゃなくて。

 

【山下】あ、そうだったんですか?

 

【山内】そう、もう自主映画だから。これを作って、本……本の段階かな、配給だけだったら手伝うよ、みたいな。それだけの事。

 

【山下】あ、そういう事だったんですね。

 

【山内】たいした事ないです。

 

【山下】いや、なんか割と社会的なメッセージを汲んでるものなのかなあとか思って。

 

【山内】いや、別に。

 

【山下】そうなんですね。でも6月に。

 

【山内】R18ですから。

 

【山下】あ、じゃあ私行けます。18歳以上なんで。

 

【山内】まあ、あんまり観なくていいよ。

 

【山下】観なくていいんですね?

 

【山内】出てる人たちは城山羊(の会)に出てる人たちばっかりだから。

 

【山下】そうですね。

 

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/

 

担当:木村晴美

いつもご依頼いただきありがとうございます。

山内さんの作品を存じ上げていなかったので、文字に起こしながら出て来た作品の予告変や舞台挨拶の様子を動画で少し拝見しました。

「当て書き」というのがどういうものか調べて、演じる役者さんを決めてから脚本を書いていく、ということで、『友だちのパパが好き』の舞台あいさつで吹越満さんや岸井ゆきのさんが、苦労というよりは楽しんで演じられたというような話をされていたのを聞いて、今回のお話とつながりました。

『夜明けの夫婦』は、簡単なあらすじしか見つけることができませんでしたが、コロナ禍が過ぎてからの夫婦、家族の様子を描いたお話ということで、考えさせられることがあるような気がしました。

数人のレビューを拝見しました。山内さんの作品がとても好きだという方、シュールでユーモアがある会話劇という方、セクシャルな場面が印象的だという方、どれも、この映画も含め、山内さんの作品を観てみたいと思う興味を持てるレビューでした。

私にとって新しい世界に出会えそうな感じです。観る機会を作ります。

ありがとうございました。

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