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【ライブ感想】Morfonica Concept LIVE 「forte」

(セットリスト等については下記記事を参照している)

昨年10月の同じ名前を冠したライブツアーファイナルにて同名のミニアルバムとともに発表されたこのライブ。当初から重い雰囲気のキービジュアルやそこに描かれたキャラクターたちの険しい表情、そして彼女達のコンプレックスを主軸とした収録曲の歌詞やリリックビデオと「ただごとではない」雰囲気が漂っていた。気づけば活動開始から早4年、その「新境地」とは…?

ライブ前半

夕闇迫る花吹雪のお台場、散りかけではあるもののまだ存在感を保った桜のもとに多くの人達が賑わっている。ダイバーシティ東京も多くの人がショッピングにアイドルイベントにとそれぞれの時間を楽しんでいる。天気はよく晴れていて、暖かいというよりは少し汗ばむくらいの陽気。

その地下にあるZepp DiverCityはしかし、一転して重苦しい空気に包まれていた。黒ベースでライブタイトルだけが書かれたスクリーンに陰鬱な旋律を奏で続けるバイオリンのBGM、普段の「ライブ前の期待と興奮」とは明らかに異なる空気。
そうだ、これが見たかったんだ、どす黒い重苦しい世界。その世界観をこれでもかと体現した空間に否が応でも期待が高まる。元々(観客の声出しが制限されていた時期にライブなどの展開が本格化したこともあってか)朗読などの演出が積極的に取り入れられてきたものの、基本的には前を向く物語として描かれてきたこれまでのライブ。
その経験を活かして創り上げる彼女達のネガティブな感情が軸の物語、その世界観というのが本当に興味深く、楽しみだったのである。

それだけに序盤はむしろ意外なくらいの思いがした。
メンバーカラーの蝶が印象的なキャラ紹介ムービーまでは重い雰囲気のまま進んでいったのだが、そこからは少し久々ながら明るい曲調の「ハーモニー・デイ」。ステージ上の演者さん方の笑顔や雰囲気は昨年のツアーの続きを見ているかのよう、このまま行くはずがないという疑念が胸の片隅で蠢きながらもステージ上に釘付けになる感覚は忘れがたい。
続いては「ブルームブルーム」そして「メランコリックララバイ」、こちらはツアーでも演奏された曲だし、特に後者はツアー始まりの大阪で初披露された思い出の曲、左右に傾くのもすっかり慣れたもの。そういえば大阪では自分がいたところがとてもそんなことする余裕なかったなあなどと思いつつそんなツアーの追加公演という要素もあるのかななどとも考え出していた。今思えば、完全に油断していた。
―少しずつ歌詞が暗くなっていないか?

ベースサウンドで「新曲」となればやはりこの曲だろう、期待していた新曲のお出ましだ「両翼のBrilliance」。運命をキーワードとした作品を歌ったこの曲が4曲目というそろそろ区切りの位置、これまでのコンセプトライブの展開からするとそろそろストーリーに来そうな場所ということはこれから語られるであろうストーリーはその「運命」を示唆するようなストーリーになるのだろうかとも思った。
疾走感のあるメロディーが締めくくられるとともに、紗幕が降りてステージが暗転。映し出されたのはこれまでのガルパやアニメ"Morfonication"で描かれてきた思い出達、しかしそれはザッピングと共に少しずつ不穏なものになりやがては口論や自身を責めるようなものに―

ライブ後半

懐かしいようなオルゴールの音色に合わせて瑠唯の語りが始まる。幼かった頃の、そしてMorfonica結成後のバンドストーリー2章で語られた「トップを獲れない・期待した成果を得られないものに関わり続けるべきなのか」という問いかけ。そしてそれに続くのはつくしの語り「頑張っているのに芽が出ない」「周りは皆それぞれ花を咲かせているのに、自分だけ置いていかれる」…『変わりたいよ!!』という悲痛な叫びと共にステージが青く照らされ、ステージ中央の門の前には黒い衣装に身を包んだヴォーカルの姿があった。

紗幕が再び上がりいよいよこのライブの真骨頂、「フレージング ミラージュ」とそれに続く「esora no clover」から第二部が始まる。曲調や照明だけではない、ステージ上の演奏からさっきまでの賑やかさが嘘のように笑顔が消えた。
―これだったのか、このライブで描きたかった世界というものは。

メンバーの苦悩や葛藤、日頃のセリフにはあまり出てこないような思いを全身で描きあげるような演奏、その世界観に圧倒される。曲自体はリリックビデオやCDでここまでに数え切れないほど聴いてきたが、やはりライブ会場現地でこれを聴くとなると現地ならではの音の圧が撃ち抜いてくる。その様子はまるで必死に訴えかけてくるようだった。

少しの間を置き「unravel」、シリアス寄りの楽曲として初お披露目から2年経ちすっかり定着した感があるがここまで陰鬱とした、不安な感情を掻き立てるように演奏されることがこれまであっただろうか。

再び暗転して「『普通』ではないこと」「それ故に独りでいることを強いられ、自身を隠すことで周りに紛れ込んだ」七深の物語が語られる。その象徴に筆を折るような、あるいは握りつぶすようなショッキングなSEに動揺する間もなくそんな彼女に焦点を当てた「わたしまちがいさがし」。
続いてそんな暗い空気の中でも必死に飛ぶ蝶を表すような「アゲハ蝶」、先程から続くような歌詞に聴き入っているとステージ上も明るく照らされてきたようにも見えた。そこから激しい光に彩られた「Nevereverland」、やはり陰鬱とした海で足掻くような雰囲気となる。これまでのライブでもシリアスな雰囲気の中で演奏されることが多い曲ではあるが、今回の空気はそれらと比べてもやはり異様だ。

突き抜けるような力強さの「誓いのWingbeat」はそんな中でも存在感を強く放つ、ともすればこのセットリストの中では浮いているのではないかとも思わせるが終盤が見えてきたところで空気を整え直すという役割もあったのかもしれない。それにこの力強さは続く「彼女」の物語には是非とも欲しい要素だったろう。
いつも前向きに力強く進む透子、しかし彼女もまた迷える蝶だった。切れ味鋭い正論は時に周りを切り裂いてはいないか、いつか見放されやしないかという不安。それでもこの想いを貫いてみせるという強い決意はどこまでもひたむきで揺るぎない。「MUGEN Reverberate!」のギターの音色からはその思いが普段の、あるいは他の曲と比べても更に強くにじみ出てくるようだった。続く「flame of hope」はそんな彼女を象徴する曲として変わらぬ輝きを魅せる。悩むより突き進む、眼の前の仲間そして好敵手と共にいるならそこに怖いものなどない。

切なくも美しい「Ever Sky Blue」の調べが沁み渡る、ここまで激しい曲が続いたあとに来るとギャップもあって格別のものがある。昨年のツアーでは全公演ともアンコールで演奏された曲だが、後半スクリーンに映し出された映像は今回初めて見るものだ。5匹の蝶が花畑を飛び、曲のラストシーンでうち1匹の青い蝶だけが手前の窓の中に入り残りの赤、橙、ピンクそして緑の蝶は変わらず花畑を飛び続ける…

5人の物語はアンカーのましろの語りで締めくくられる。「何者にもまだなれていない自分」「変わりたいが踏み出せず、救いを求める」問いかけから彼女を象徴する「きょうもMerry go rounD」が始まる。悩み苦しみ、それでも前を向こうと足掻き続ける…ラスサビ前の『苦しいよ……それでも息をして、』はリリックビデオのものに比べても更に聴いていて辛くなるほどの悲痛な叫びとなっていた。
曲が終わり、暗くなったステージからメンバーがいなくなっていく。最後に独りが後ろの門に辿り着き、その場に崩れ落ちる。それでもその手は救いを求めるように掲げられ…

ガラスが割れる音、そしてライブタイトルのロゴがスクリーンに映し出されて終わりとなる。しかし会場はまだ明るくならずにBGMが再び鳴り響き、スクリーンには「ff」の文字が映し出され会場がどよめく。

10/12 河口湖ステラシアターにてMorfonica Concept LIVE 「ff」開催決定。
2つ重なる"f"は左側が今回のロゴのもの、そして右側は昨年のツアーのものだがその色合いはバンドロゴのように明るくなっているもの…会場の河口湖ステラシアターはデビュー曲の「Daylight -デイライト-」MV撮影に使われたところという。しかしこの曲は今回セトリから外れているのだがこの示唆するものは何なのか、いよいよ面白くなってきた。

2年ぶり、そして2回目の"Concept LIVE"、前半は曲の紹介などもあったが、後半はMCもなければ掛け合いもなく、そして唐突とも思えるアンコール無しでの幕引き…世界観を強烈に印象付ける構成に感嘆した。
しかもそのライブは前年のアルバムを引っ提げた同名の東名阪ツアーに始まり名前こそ同じだが空気を大きく変えたミニアルバム、そしてそれをフィーチャーしたライブと繋がるものだった。更にその物語は強調され、そして「始まりの地」を目指す。

―まさか1年越しの物語だったとは、何が歌われるのだろう。

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