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カラスのせい

とある夏の金曜日、小学2年生の息子が学校から帰宅し、ランドセルを開けると、「ない!」と叫んだ。

息子は日頃からよく学校に忘れ物をして帰ってくる。
使用済みのお箸セットが入った給食袋や水筒、汗まみれの体操服、宿題、等々。
息子が通っている小学校には「放課後、忘れ物を取りに学校に戻らない」という決まりがあり、基本的には次の登校日を待つしかない。
金曜日に忘れ物をしたら、月曜日まで
学校に置きっ放しになる。
衛生面から二日間も放置したくないものだったら嫌だなと思いながら、何がないのか聞くと、今回は体操服だった。
多少、汗臭くなっていても月曜日に持って帰ってきて洗濯すればいいかと少し安堵したのも束の間、「絶対、ランドセルに入れた!」と言い出した。
落ち着いて詳しく経緯を聞くと、帰りの準備の際に体操服をランドセルにギュウギュウ入れ、手に図書バックを持って下校した。
図書バックの中には借りた本が4冊も入っていて、途中で重すぎて持つのが辛くなり、ランドセルの中に入れようと思い立ったらしい。
そこで、道端でランドセルから体操服を取り出し、本を入れた。
そして、そのまま、そこに体操服を置いてきてしまった、とのこと。
確かにランドセルは図書の本でギチギチになっていた…

息子の説明を聞きながら、きちんと説明出来るようになってきたなぁ、いや、私の理解力が向上したのか(笑)…と考えたりする余裕もなく、ひたすらイライラした。

さらに、念のため、ランドセルをチェックすると、中身のない、ペチャンコのプールバックが出てきた。
体操服を落としてきただけでなく、濡れた水着やバスタオルを持って帰るのも忘れてきていた…
なぜプールバックだけをランドセルに入れたんだ…
プールバックの中身も道端に出したのかと焦ったが、これは普通に学校に忘れてきたらしい。
「教室のロッカーに忘れた。先生が持って帰るの忘れたら、めっちゃ臭くなるよって言ってたよ」と悪びれることもなく言う息子に、1回その臭さを体験させようかとも思ったが、時間割を見ると休み明けの月曜日にも水泳の時間があった…これはもう学校に取りに行くしかない。

ひとまず、息子に道端に落ちているだろう体操服を取りに行かせ、担任の先生に取りに行ってもいいかの確認の電話をした。
先生からの許可も出たので、小学校に向かうと、途中、手ぶらの息子に会った。
なんと、体操服はなくなっていた。
息子はケロッとした顔で「きっとカラスが持って行ってしまったんだよ」と言った。
一旦、小学校にプールバックの中身を回収しに行き、帰り道、周辺を探し回ったが、全く見つからず、ダメ元で警察に落とし物届を出して帰宅した。
息子が忘れ物に気付いてから帰宅するまでの所要時間、2時間半…疲れた。

帰宅後、きっと体操服は見つからないだろうと踏まえて、新たに購入する方法をあらかじめ調べておいた。
ネットで注文でき、10日以内に届くようだった。
しばらく体育は水泳の授業になると先生から聞いていたので、月曜日まで待って、何の音沙汰もなければ注文しようと決めた。

そして、月曜日。
お昼過ぎ、警察から体操服の届出があったと連絡が入った。
わざわざ時間をかけて交番に届出をして下さった方がいたことにビックリし、嬉しくなりすぎて、すぐ夫に連絡してしまった。
警察に受け取りに行き、私の気分は一気に晴れやかになっていた。

小学校から帰宅した息子に「誰かが交番に届けてくれてたよ」と伝えると、またケロッとした顔で「カラスが落としていったんだね」と言った。

いや、落としたのは、あなたですよ。


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