私がなぜ映画を見るかといえば、
元気になりたいから見る。
単純に、元気になれた＝いい映画
なのである。

子育てで忙しく、めっきり映画など見る時間が減ってしまった。
でもそんな中この映画を見ることができて良かった。

『天気の子』

ネタバレあります

久しぶりにすごい恋愛映画を観ちゃったわ。
新海誠って恋愛の表現はすごい。
それプラス千と千尋とポニョとセカイ系も入ってる。

んでこの映画、元気が出る映画ですよ、とか言っておきながら
描いてるのは気候変動のディストピアと貧困問題なんですよね。
そして新海誠の得意だった美しい青空の描写を封印！！
映画のほとんどの時間で雨が降り続いており、
まあ、暗い暗い。陰鬱になる。

で、主人公がまた可哀想なの。
なんの理由か具体的に語られてないんだけど、顔に絆創膏いっぱい貼って、なけなしのお金持って家出してきた高校生。愛読書は『ライ麦畑でつかまえて』あーなんかもうこの時点で痛々しすぎて嫌な予感がしまくりなイノセントな子なんですが、
ビッグマック食べて「僕の人生で、これが間違いなく、一番おいしい食事だった」とかなんとか言うんですよ。もう、どんだけ可哀想なの。ご飯食べさせてあげるからおばちゃんの家にいらっしゃい。
んで、この映画のすごいところは、
ビッグマックもそうですが、
実在の食べ物が名前変えずにそのまま登場していること。
宮崎アニメじゃそうはいかない。
んで、出てくる食べ物が
どん兵衛、チキンラーメン、湖池屋ポテトチップスのり塩、からあげクン。
なんかことごとくファーストフードとジャンクフード。で、またこの子がそれを嬉しそうに美味しそうに食べるんですよね。
それで、またさらに輪をかけて切ないのが
それに対比するようにこの映画、タワーマンションがなんかやたらとちょこちょこ登場するんです。
それで、その中のだだっ広いリビングダイニングでお母さんが料理してるんですが、その料理がね、野菜ばっかりなの。そんで、横に置かれてるのが、なんだかよくわからない体に良さそうなオーガニックなオリーブオイルとかの瓶が4本くらい。
これ2秒くらいのシーンで、とくに料理してるお母さんがアップになってるわけじゃないんですが、
わーこれ…あきらかに主人公たちとの格差を描いてるわ、と。
なんて切ないんだ。鬱になる。
なんでこの映画が元気が出る映画なの？

んでその高校生君、よりによって東京でも一番の危険地帯、新宿にノコノコやってくるわけです。
で、この映画は背景の書き込みがヤバい。歌舞伎町の看板、ラブホのネオン、飲み屋街、♪バーニラバニラバニラ高収入のトラックなどが、あたおかレベルの画力で描かれており、圧倒されます。
大型モニターに映し出される物騒なニュース、居酒屋の客引き、ヤクザ、捨てられた謎の拳銃、ポン引きに声かけられる女の子。

で、肝心な、
なぜ元気がでたかと申しますと

主人公は社会の都合より愛する人を選んだ。
例えそれによって街もろとも水に沈むとも。

すごい選択肢ですが、身につまされました。
いつも自分は、自分の意思より
人にどう思われるか、親のすすめ、世間の目などに惑わされて幾度なく本当の自分を押し殺してきました。

それが大人になるということかもしれません。主人公も劇中で何度も「大人になれ」と言われます。

でもそんな立派な大人たちが作った社会が環境破壊と気候変動、そして♪バーニラバニラみたいな体たらくです。
非常にクソだと思いませんか？

本当にすごい作品でした。

クソッタレな世の中だけど、
何がベストなのかと問われれば
この映画は愛こそ全てと答えている気がしました。