銀行と資格試験と私

「おいお前、資格だけ取っても営業ができなかったら何の意味もないんやぞ」


これは私が新入行員の頃にとある先輩に言われた言葉。表面上だけ見れば言い方はアレですが、まあ一理あるように見える言葉です。

が、この時私の取った資格は「証券外務員会員二種」

金融機関に勤める人以外はなじみのない資格ですが、簡単に言えば投資信託等の販売資格でこれがないと投資信託を販売することが出来ないのです。

タクシー会社にとっての「普通二種免許」であり、ガソリンスタンドにとっての「危険物取扱者」のような資格です。

つまり銀行員にとっては取ったら褒められる資格ではなく、取っておかないと仕事にならない資格なのです。当然人事部からは1年目で取るように指示され、取ってない行員は昇格できません(まあ当然ですが)。

そんなレベルの資格をとって言われたのが冒頭の言葉です。


「いやいや、流石にそれは頭のおかしい先輩に引っかかっただけじゃないか。」
「その先輩も当然その資格がないと肝心の営業すらできないことは知っているのではないのか。」

等と思われるかもしれないが、その先輩は証券外務員会員二種資格を持っていませんでした。
じゃあどうやって販売していたかと言えば「特別会員」という簡易版の資格で販売していたのです。
※銀行での投資信託販売が許可されて、段々一般的になってきた頃のお話です。

まあ、ペーペーだった私が持っていない資格を取ったのが気に入らなかったのでしょう。
今考えたら単純な話、そんなしょうもない先輩はほっといたらいいのでしょうが、新入社員の当時はそうは考えず、

「資格取って嫌味を言われるのもだるいな」

等と思って資格勉強をすることをやめてしましました。実にひねた考えでしす。

それ以来、必要最低限の資格以外は取らずに過ごしてきました。
いわゆる最初は「こじらしていた」状態でしたが、困ったことに段々この状態が楽になってきたのです。

仕事自体は当然ですが手も抜かずに、また一応最低限の資格は取っていたので悪目立ちもせず、言われた事はやるけどそれ以上はやらない。いわゆる「ぬるま湯」につかっている状態です。

世の中は「ハードワーク」から「ワークライフバランス」の世界への徐々に移行していきます。
新卒採用についても、まだ就職氷河期の雰囲気の残っていた我々の時代から売り手市場へのシフトが露骨に見える状況でした。

そんな時代の流れとして平均で夜9時だった退行時間も8時、7時と段々と早くなります。

自分の職位も上がっていく中で、単純に業務が楽になるという事はなかったのですが、昔より確実に色々と考える時間は増えてきました。


そんな中、初めて自主的に資格を取ろうと思ったのが「宅地建物取引士」いわゆる宅建試験です。

簡単な資格ではないと思いますが、アラフォー銀行員が取って褒められる資格でもありません。


だからこそ意味があると思いました。多分努力すれば取れる資格。だから不合格は言い訳もなく自分の努力不足。
5年か10年か…自分が努力しなかった期間。資格一つ取って埋まるとも思えませんが、何かのきっかけにはなるのではないか、そう思って受験を決意しました。

加えて現実的な話として、不動産関連の知識を付ければ業務に活用できると考えました。
宅建レベルで専門知識というと、その筋の専門の方からは笑われるかもしれませんが、それぐらい自分自身知識が不足していると感じていました。

漫然とした状況から何かを変えるために行動しなければならない

新入行員の頃から避けてきた試験。アラフォーになって果たして努力なんて出来るのか?

宅建受験経験者ならわかると思いますが、中途半端な知識がある分、気持ちいいぐらい引っ掛け問題に引っ掛かります。段々いやになります。

「誰かに指示された受験じゃないから」
「途中で辞めても誰も怒らないから」
「合格しても大して褒めてもらえない」
「逆に落ちたら恥ずかしい」
等等辞める理由は山ほどありました。

続けた理由は「自分で決めたことだから」


そんな宅建試験の合格発表が令和5年11月21日の本日でした。


得られた一番の成果は、「まだ誰に言われなくても自分の為に頑張れる」という事を確認出来たこと。


まだ捨てたもんじゃない。


そんな私がITもDXもよくわからないのにSUNABACOのDXあんとれ講座を受講しようと思ったのはまた別の話ですが、根っこの部分は同じなのでしょう。

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