2024年4月20日(土)床屋で

昨日は歯医者へ、それから夕方、床屋へ行ってきた。床屋で髪を切ってもらっている時に、前の道で大きなクラクションが何度も鳴っている。明らかに誰かが怒っている。そんな鳴り方だ。床屋の主人がぼくの髪を切りながら、鏡越しに外を見て、様子を説明してくれた。

工事で片側交互通行をしていて、路線バスと乗用車が向かい合っていて双方がゆずらないらしい。だから動けないらしい。それで、乗用車の運転手(じいさんだね、と床屋の主人は言った)がクラクションをたびたび鳴らしている。田舎の短い商店街に響き渡っていた。そのうちそのじいさんが車から出てきたらしい。「ああ、バスを殴っているよ」と教えてくれた。

「車がちょっとずれれば通れるのにね。あのじいさん、むしゃくしゃしていたのかね、ちょうど。だれかにあたりたかったんだね。」

それから急に静かになって、バスが鏡の中を通過するのを、ぼくも見た。

いつもは床屋では、ひたすら目を閉じて無言なのだけど、しばらく床屋の主人と話をしてしまった。

鏡の中を、向こうへ去ったバスの運転手の、やれやれという思いが、なんだかわかるような気持ちがして、ぼくもホッとして床屋を出た。

それから、怒りが湧き出てどうにもならす、どうしてこうなってしまうんだろうと、泣きたくなるような、じいさんの気持ちにもなった。

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