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あんですマトバ

週末は新小岩に初上陸した。

今春小学校にあがる甥っ子は、現在スイミングスクールに通っている。それで5歳にして既に背泳ぎとクロールが25m泳げるようになり、東京開催の水泳大会出場をスクールに推されての晴れ舞台となった。

が、姉はひと月後に出産を控えるデリケートな時期にあり、姪っ子の面倒も見なくてはならず、大会への同伴役は義兄になった。

が、その義兄、高学歴なのに今でもガラケー使用のアナログ人間、Google MAPも使えないというクルマ社会の強者だ。

大会会場は江戸川区総合体育館。話を聞いて調べたところ、新小岩駅と小岩駅の中間地点、どちらともつかない場所にあり、どの駅からもバス移動が必須。暴れん坊の甥っ子を伴って見知らぬ都会での行動となると東京に住む私ですら気の重い任務であることは想像に難くない。私やYさんも新宿渋谷界隈や中央線沿線なら大体わかるのだけど、新小岩なんて私自身行ったこともないし今後も恐らく自分で行くことはない土地。知らない街探訪するには格好の機会だ。

というわけで土日の東京駅〜ホテル〜大会会場間のナビを引き受けることになった。


で、この新小岩、美味しい和菓子屋でもないものかとあれこれ調べてみると、どうやらあんこ本に掲載されていたあんですマトバというパン屋の支店があることが判明。楽しみが一つできた。

あんですマトバは老舗の製餡所が運営する浅草に本店を構えるパン屋さんで、今でこそ惣菜パンなども手がけるものの、最初はなんとあんパン専門店として出発したという、あんこ好き巡礼の地。支店といえどあんパンを置いていないはずはないという確信を胸に、期待を膨らませた。

大会開催日は日曜日ながら朝の現地集合時間が8時半ということでの土曜前乗り。東京駅17時着の新幹線でやってきた義兄と甥っ子を新小岩駅南口のホテルまで無事送り届けた後、はやる気持ちを抑えて足早に北口へ向かったのだが、駅前商店街の入口にある文明堂につい吸い込まれ、あれこれ買い込む。

文明堂のカステラなんていつどこでも買えることは百も承知だけれども、この日はちょうどYさんがギター仲間のOさんを自宅に招いて音合せしていたので、手みやげにカステラを持ち帰ることにした。

そんなやや予定外の脱線もありつつ、改めてあんですマトバへ。アクセスは新小岩駅北口を出て目と鼻の先。

製餡所のパン屋とはいえ、時間が時間なので、あんパンが売り切れていないことを願う。

煌々と輝く「あんです」の看板の文字。昭和感溢れる店構えにテンションMAXだ。

こぢんまりとした店内には先客の姿もあり、ほんの7、8分程度の滞在だったと思うけれども、私の後にも入れ違いに客がやってきていて、それだけでも店の実力のほどが伺われた。

そうして狙い通り、あんパン数種類を購入。文明堂とあんですマトバの手提げ袋を大事に持って総武線で帰路についた。

家に帰って、まずはYさんとOさんと文明堂のカステラを実食。


このシャープな線の美しさよ。

お招きしたOさんにふた切れ、私とYさんは1.5切食べた。開封直後のベストコンディションなのでしっとりふっかりと弾力があり、さくらの風味が男性好みの甘ったるくない程よいシックな甘さ。あまりカステラを好んで食べないYさんも、これは喜んであっという間に平らげていた。

音合せの後は一旦3人で近くの焼鳥屋へ。いつもの初台千串屋。余談だがOさんが店にある中で一番辛口めの銘柄と聞いて「酔鯨」という日本酒をグラスで注文。私もひと口いただいてみると柑橘を思わせるスッキリとした酸味のあと味が良かった。


日付が変わる前に解散、帰宅。

紅茶を淹れて、待望のあんですマトバ!

まずは人気No.1のポップにつられて衝動買いしたあんドーナツパン。カロリーを思うとややいたたまれない気持ちになるけれど、買わずにいられなかったのだから仕方ない。


中はこしあん。パンの生地が黄色くていかにもおいしそうで、素材へのこだわりを感じた。実際に食べた感想としては、確かにきちんと手作りされたまっとうなあんドーナツパン。でも、言ってしまえば、ふつう。あくまで好みの話になるけれども、私個人の感想としては、安定感のある、良くも悪くも想像を裏切らない味だと思った。

そしてその次、今回の真打ちのつぶあんぱんをいただく。

実はこの個包装、店の陳列棚に並べて売り出されている時からずっとこの状態である。

パンにとって乾燥は大敵だし、これならトングをすべらせたり、万一小さい子が勝手に手を出したりしても安心だ。より確実にパンの美味しさを維持した状態で商品を提供しようというお店の気概を感じる。(ただしあんドーナツパンをはじめ、その他惣菜パンなど、個包装されていないパンもある。パンの特性に応じて対応されているのだと想像するが、少なくともあんパン系はほぼ個包装済みで販売されていたのは、やはり製餡所でありもともとあんパン専門店という歴史をもつこの店ならではのあんこに対する意識の高さによるものなのかもしれない。)

というわけで前置きが長くなってしまったが、なんでこんなにも前置きが長いのかというとー

思わず目を見張るほど、このつぶあんパンが美味しかったからに他ならない。

「!!なにコレうっま!!」と驚く私につられてYさんもひと口。食べた瞬間にYさんも私のリアクションに納得して、ひと口では収まらず、結局半分分け合うことになってしまった。

こんなに美味しいならもう一個買ってくればよかった…!と内心悔やんだ。とにかくこの粒あんパンは、先に食したあんドーナツパンの一段も二段も三段も上だった。

パン生地のしっとりふっかり感、しっかりとした小豆の味わいが口の中で広がり鼻孔を抜けていく香り高い粒あん、その粒あんが惜しげもなくたっぷり詰まって手に持ち重りのする重量感。パンとあんこの甘みと水分のバランス。いや、何よりもやはりここで特筆すべきは粒あんで、粒あんだけでもまるで和菓子を食べているような質の高さをひしひしと感じるのだけれど、それに負けないあんこを包むパン生地の完成度といったら…!これがお店の人気No.1じゃないのは何故なのか、地元民のチョイスがまったくわからない。あんドーナツパンも揚げたてならもっと美味しかったのか…。

こんなに完成度の高い粒あんパンを食べたのはもしかしたら初めてかもしれない。奇をてらったことは何一つしていない、見た目はどこにでもありそうなありきたりなあんパンなのだけど、それゆえに純粋にそのおいしさが際立って感じられた。あんドーナツパンの直後に食べたからこそ、こしあんと粒あんの比較がはっきりと明白にできたような気もした。

しかしふつうのパン生地でのこしあんパンは出ていなかったけれど、このパン生地でこしあんパンだったらどうだったのだろう?

とにかく、365日の白あんパンに並ぶ、心に残るあんパンの記憶になった。

一緒に買った桜あんパンや塩あんパンも翌日食べたけれど、粒あんパンの感動には遠く及ばない。あんこ好きならば迷わず粒あんパンを買い占めるのが得策だ。

とはいえ、せっかくなので翌朝食べた桜あんパンと塩あんパンも併せて載せておく。粒あんパンには勝てなくともいずれも実力派であることには違いないので。パンの肌ツヤ、デザインセンスなど参考にどうぞ。

翌日もまた新小岩へ行くから是非リピートしよう!と鼻息荒く意気込んだのも束の間、日曜日定休だと知り、落胆。無念。

初めは私を冷静に見ていたYさんも、今度は自分の分の粒あんパンも買ってきてとリクエスト。二人揃って見事陥落である。

また行きたいのはもちろんだけど、今度は浅草の本店に行こうかな。浅草界隈には名の通った和菓子屋があるので、そちらを巡りながら立ち寄るのも良いかもしれない。

色々とあった惣菜パンにも惹かれたけれど、今はこの店を訪れたならば粒あんパンはマスト商品と自信をもってお薦めしたい。

こしあんパンも絶対メニューとして存在するはずなので、今度はスタンダードなこしあんパンと粒あんパンの食べ比べができたらいいなと思う。今回見送った惣菜パンも試したい。あんですマトバ、お近くの方は是非足しげく通うべし。

ちなみに今回は18時時点で、何品かはセール価格になっていた。それで購入した全品130円。良心的過ぎる。うちの近くにも店舗拡大してくれないかしら。

以上、あんですマトバレポート日記でした。

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