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【イベントレポート】 SSFF & ASIA 2021 秋の国際短編映画祭 オンラインイベント 「ナラティブカンパニー」の著者 本田哲也氏と、別所哲也がナラティブ×映像を語る!

10月より「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2021 秋の国際短編映画祭」がスタートし、13日にオンラインイベントとしてウェビナーが開催されました。
『ナラティブカンパニー』の著者であるPRストラテジストの本田哲也さんを迎え、映画祭代表の別所哲也と共に、W哲也で〈ナラティブとブランデッドムービーの可能性〉をディスカッションしました。

冒頭には事前の概要として別所よりショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下、SSFF)とブランデッドムービーについて説明。
(※ブランデッドムービーとは?→企業や団体が「広告」という枠を超えて、自らの社会的価値を伝えることを目的としてつくられる映像。ブランドメッセージと、宣伝的な意図を感じさせないような魅力的なストーリーという、二つの要素が求められます。)


ナラティブとは?

トークライブが始まりまずはMr.ナラティブ、本田さんに“ナラティブ”という言葉の意味について語っていただきました。
辞書を引用された上で、本田さんはさらに『企業と生活者が共に紡ぐ物語』と定義。
いわゆる“ストーリー”との違いについて、“ナラティブ”とは社会全体を舞台とした、ステークホルダーも演者として参加する、現在進行形の物語であるとしました。一方で、二つに共通するものとして、共に創始者や企業の強い思いが起点となる事をあげられました。

ナラティブが求められている理由、時代背景

現在、世界的にナラティブが求められている理由とコロナとの関係については、直接関係はないとしつつ「もともと社会に起こっていた変化があって、そこにナラティブの重要性というのが高まってきて、昨年からのコロナ禍が起こってブースト(後押し)されたというのが恐らく正しい解釈かなと思ってます」と本田さん。
起こっている変化としては、「共体験」の価値向上、コロナ禍におけるソーシャルディスタンスとは違う意味での「社会的距離」の見定め、「自分らしさ」が問われる、という3点があり、その具体的な事例として『100日後に死ぬワニ』『NIKEのDon’t Do It』『閉館中のサンリオピューロランド』をあげられました。
「非常に良い共体験になっている状態をよく考察すると、なんらかの物語性がそこにあるんですよ。」と本田さん。また重要だと思う事として、そこに集う人たちの間では“共有されている価値観がある”という事をあげ、人が集まる価値観が見出せれば、ナラティブを紡ぎ出すやり方はいろいろあると説明しました。

ナラティブの起点と条件

「ナラティブはどうやって作り始めるのか、何が条件になるのか?」という別所の質問に本田さんは、「そもそもナラティブを作るっていうのが表現として正しいかどうか微妙なところがある。(ナラティブは)世の中に結果論として出現してくるものなので、制作するものではない。あえて言うとナラティブな状況を生み出していく為のステップという事はあると思う」として、ナラティブ実践の5ステップを紹介いただきました。
中でも特にステップ1「起点」について、例としてパタゴニア、ソニー、Airbnbのパーパス(社会的存在意義)について、実際に各社で行われた活動も含め紹介し「結局これは、キャッチコピーじゃない」と本田さん。
誰でも言えることを言うのではなく、自分らしさが大事になる。なぜ存在するのか、創業時の理念に戻らざるを得ない。言っている事とやっている事に裏表がないこと、存在が比較的世の中の為になるということもポイントだと語る本田さん。

また、動画コミュニケーションやショートフィルムに繋がる話として、本田さんの著書内での“現在進行形で進むナラティブを動画で表現するのは意味がない”との文言がショッキングだったという別所に対し本田さんは「別所さんに意地悪しようとした訳じゃないですよ」と笑いを交えつつ、「ナラティブというのは全体的に世の中に現れるものなので。例えば広告、PRイベント、動画など、何か一つでナラティブの実践がイコールになるという事ではないという事です。ブランデッドムービーの中身の話として、企業からの一方的なものでなく生活者側が主役で一緒に紡いでいくような対等なストーリーがそこに作られているか、動画の中がナラティブっぽいかどうかって話はあると思う」と説明しました。
さらに、表現のフォーマットとしてストーリー性を埋め込むことのできる動画やブランデッドムービーは、企業の考え方をエモーショナルに伝える事ができ、ナラティブの全体像の中でも果たす役割は大事になってくると思う、との本田さんの考察に「そう言っていただけてよかったです。」と安堵の様子の別所。
続いて別所から企業・クリエイター・生活者の共創であるBOOK SHORTSの取り組みが紹介されると、本田さんからは「やり方それ自体ナラティブアプローチであると思います」と評していただきました。

企業が実践するナラティブの領域

ナラティブの領域として「SDGs」「DX」「人」の3つをあげた本田さん。中でも「人」について、これからの時代の人材確保についての話が盛り上がりました。
いわゆるミレニアル・Z世代と呼ばれる若い層の間では就職活動での会社選びにおいて、人気企業である事やスペック(給与、知名度等)はあまり重要視されず、自分の物語と合致する企業を選ぼうとする傾向があるとのこと。何を存在意義とし、何をやろうとしている企業なのか、自分はどういうナラティブに参加できるのかという視点が大事にされているそうです。
その点で、HR(Human Resource/人材採用)動画への注目と今後の進化が期待される結びとなりました。

上映

途中、今年のBranded Shortsでナショナルカテゴリーの優秀賞を受賞したユニクロの作品『服の旅先』が上映され、終了後に本田さんより感想をいただきました。


ナラティブとはどのような企業価値に直結するか?

「売上はもちろん、従業員の満足度、株主の期待に応えることなど色々な価値の見方があり、またお客さんだけでなく色々複雑に異なる人たちをまとめなきゃいけない中で、個別の対応をしていくことには限界が来ている。それらを全体で括って解決していかなければならないとなると、ナラティブという考え方、ナラティブアプローチ、ナラティブカンパニーになること自体が様々な企業価値に貢献する。」と本田さん。

質疑応答

イベント参加者からの『小規模な企業でもパーパスを設定するために、何かアイデアはありますか?』という質問に、本田さんからは「パーパスの話は企業の大小は全く関係ない、また新しいか古いかも関係ない」とした上で、様々なアドバイスをいただきました。


未来像について、本田さんは「魅力的でパワフルなナラティブをつくった会社が勝ちます。これからは。」
別所は「人は物語る存在、この物語の文脈の中にナラティブという視点・考え方がとても大切な時代になっている。」と語りました。

「一番良くないのは何も語らないということ。これからの時代は語らなければ忘れられたり、あるいはもっと魅力的な物語にどんどん組み込まれていってしまう。自分らしさを大切にした魅力的な物語を共創的につくっていけるかが本当に重要なことになっていく。
ぜひ一緒に素敵な物語をつくっていけたらいいなと思っています。」と本田さんが締めくくりました。

今後ますます注目されることが予想されるナラティブという考え方。
鮮度高くタイムリーに時代を映すショートフィルムの世界に、ナラティブ的ストーリーがこの先どのような形で出現してくるか楽しみです。
トークイベントの模様は SSFF&ASIAのYouTubeチャンネルにてアーカイブ配信しています。