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真似する地域続々!絶滅寸前の地元店を救う群馬発のPR戦略とは?

こんにちは!
ブランディングテクノロジーの公式noteに寄稿をさせていただいております、山崎です!

今回は、どのまちにもある地元飲食店の後継者不足問題に対して、独自のアプローチでその解決に乗り出したある市に着目し、その戦略を分析してみたいと思います。

本記事で取り上げさせていただくのは、群馬県の高崎市。
着目するきっかけになったのは、ふと目にしたこのニュースでした。

『群馬県発の地方PR「絶メシ」がニューヨークでも絶賛された理由とは?』

ニュースタイトルにもある通り、この高崎市のシティプロモーションは日本国内で複数の広告賞を受賞したのち、アジア、ニューヨークの広告賞でも高評価を獲得。これほどの反響を呼んだ高崎市の地方PR「絶メシリスト」とは、一体どのような取り組みなのでしょうか。

その取り組みの詳細を分析すると、同じく地元飲食店の後継者不足問題に悩む地域にとって活気を取り戻すためのヒントがいくつか見えてきました。

高崎市とは?

“ 高崎市は、広大な関東平野の北端に位置する、群馬県を代表する都市です。市の人口は37万人を超え、面積は459.41平方キロメートルに及びます。(一般社団法人高崎観光協会HPより)”

高崎というと、まずはだるまの全国生産シェア80%[※1]を誇る「高崎だるま」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

[※1]参照:群馬の魅力発信サイト | 群馬県広報課
http://www.gunmachan-navi.pref.gunma.jp/report/12.php

どこにでもある「後継者不足に悩むまち」だった高崎市

『異例の広告賞受賞! 高崎市発の「絶メシリスト」はなぜ成功したのか?| AERA dot.』では、このプロジェクトの仕掛人である博報堂ケトルのクリエイティブディレクター・畑中翔太氏によって当時の状況が語られてまいす。高崎市が「絶メシリスト」誕生のきっかけとなる地方PRに乗り出した背景とは。

《当時の高崎市の状況まとめ》

・全国区のグルメ都市と比較すると、ブランド力に劣る。
・住民は、『昔はいい店があったんだけどね』と口を揃える。
・町中心部のアーケード街はシャッター通りになっている。
・人が郊外の大型モールに集まっていて町が空洞化している。
・昔ながらの大衆食堂の閉店が相次ぎ、チェーン店が増えている。
・閉店の理由の多くは、経営者の高齢化と後継者の不在。

高崎市からは『高崎のグルメを盛り上げてほしい』との依頼を受けた畑中氏。このような状況の中で、ある点に違和感を覚えたといいます。

“市民の方々に聞き取りをすると、みなさん口を揃えて『昔はいい店があったんだけどね』『いい店がどんどんなくなってるんだよ』と言うわけです。(〜略〜)言い方は悪いですが、自らの行動で招いていることだけど、みなさん“被害者”のようにその状況を嘆いているわけです。矛盾しているように見えますけど、これって日本のあらゆる都市に共通して起きている現象じゃないですか。この部分……つまりローカルに共通する課題にフォーカスして、本当に大切なものがなにかを気づいてもらい、そしてそれを守るために自分たちができること(=店に行って、たくさん食べるという実行動)をしてほしい。”

そのような想いを背景に、絶滅の危機に瀕した絶品高崎グルメをPRし、後継者不足問題の解決を狙う「絶メシリスト」は誕生。

『絶滅』しそうな『絶品』高崎グルメ「絶メシ」

『絶滅』しそうな『絶品』高崎グルメ「絶メシ」。とても耳に残りやすいネーミングですね。

「絶メシリスト」には、顧客に愛されながらも後継者が決まっておらず、このままでは絶滅してしまいそうな個人経営の飲食店が並んでいます。

クリックしたくなるタイトルや美味しそうな写真、ほっこりする写真がたくさん載っていますね!サイト公開後、150万PVを超える反響があり、そのPR効果13億円以上と言われています!掲載店舗からは嬉しい声が届いているといいます。

《掲載店舗 店主》

「サイト掲載後から連日大賑わいで、大繁盛店となった。」
「絶メシリストを見た若者から、後継者になりたいとの問合せがきた。」
広告賞の受賞実績も素晴らしい。

《受賞実績・その他》

・国内最大級の広告賞「ACC TOKYO CREATIVE AWARDS 2018」のマーケティング・エフェクティブネス部門で、最高賞となる総務大臣賞・ACCグランプリを受賞。

・「Web Grand Prix 2018」「PR Award Grand Prix 2018」など、ACC以外の広告賞も複数受賞。

・アジア最大の広告の祭典「アジア太平洋広告祭(ADFEST 2019)」で3部門で金賞を受賞。続いて、5月には国際広告賞の中でも古い歴史を持つ「ニューヨークフェスティバル2019(New York Festivals Advertising Award 2019)」でも銅賞を受賞。

・福岡県柳川市、石川県などが独自の絶メシリストを公開するなど、他自治体へも波及している。

・『絶やすな!絶品町グルメ 高崎絶メシリスト』(一般社団法人高崎観光協会著)として書籍化された。

見る人を惹きつけ、その心を動かす理由とは?

『ブランディング 7つの原則 | インターブランドジャパン』で掲載されているフレームワークに沿って、「絶メシリスト」成功の要因を分析します。

《ブランドオーナーの意思》

ここでは、ブランドオーナーを畑中氏(「絶メシリスト」仕掛け人)と定義。この意思は、畑中さんが代弁した地元飲食店の店主の意思でもあるかもしれません。

「絶メシリスト」を作ったその畑中氏の狙いは、「絶滅しそうな絶品高崎グルメを提供する店舗に後継者を呼び込む」こと。ただ情報を掲載する拠点としてサイトを開設するのではなく、狙いに沿った問題解決の手段としてのサイト開設・運用を行った点が成功要因の1つと言えるでしょう。

手段が目的化してしまい、「とりあえず、サイト作ろう」と作ったけれど役割を果たすことができていないWEBサイトは少なくありません。

《顧客インサイト》

ここでは、顧客を「サイト閲覧者(①市外在住者 ②地元住民)」と定義。
まず、①市外在住者の中でも、「有名店やチェーン店ではなく、愛着や懐かしみが湧くようなお店が知りたい」「高崎にきたら、せっかくなら高崎ならでは、を感じたい」という方にとってはそのニーズを満たしてくれる媒体になっているでしょう。

B級グルメ、ご当地グルメなどの言葉が注目される中で、旅行先や出掛け先ではあえてチェーン店を避けてお店を選ぶような方も一定数いらっしゃると思います。

次に、②地元住民の中でも、「活気を失っていくまちのために何かできることはないのかな」と考えていた人にとっては、「絶メシリスト」があることで絶滅に瀕している店舗を知ることができ、自らが食べに行くことができる機会を提供しています。実際に食べに行ってその評判を広めていくことは、誰もができるお店や地域への貢献。

こうした狙いは、冒頭で触れた畑中氏の問題意識の中にそのヒントがありました。

“みなさん口を揃えて『昔はいい店があったんだけどね』『いい店がどんどんなくなってるんだよ』と言うわけです。(〜略〜)言い方は悪いですが、自らの行動で招いていることだけど、みなさん“被害者”のようにその状況を嘆いているわけです。(〜略〜)ローカルに共通する課題にフォーカスして、本当に大切なものがなにかを気づいてもらい、そしてそれを守るために自分たちができること(=店に行って、たくさん食べるという実行動)をしてほしい。”

《競合との差別化》

ここでは、競合を「大手グルメ情報サイト」と定義。
私は、飲食店を探す時大手グルメ情報サイトをよく使います。星の数や顧客のレビュー等でそのお店の評判をチェックし、携帯で撮られた料理の写真や店舗の風景を見ながらいくつかの店舗を比較します。

そのような大手グルメ情報サイトに対する「絶メシリスト」の差別化ポイントは、大きく2点。1つ目が、「リアルさ、物語性を重視した取材コンテンツが読めること」です。

「絶メシリスト」を見ていると、ヨダレがたれ落ちそうになる料理写真や昔ながらの雰囲気が伝わる店内の写真、店主の人柄が伝わってくるやりとりがどの記事にも詰め込まれています。まるで自分がその場にいるかのような臨場感・没入感を味わえるようなコンテンツばかり。

高崎と全くゆかりのない私ですが、想いや物語を感じられる記事を読んでいると、会った(行った)ことがない店主やお店に対して愛着やなつかしさが湧いてくるような感覚を覚えます。

2つ目が、「後継者募集が掲載されていること」。このサイトは絶メシを提供するお店の後継者不足問題を解決するための手段であり、後継者になりたい人と後継者を求める人とが出会う場になっています。

未来の後継者候補者にとっては物語形式で店主や店を深く知ることができるため、「ミスマッチの防止」「応募意欲の促進」「ローカルエリアの個人経営店と関わる敷居を下げる」ような効果が期待できるでしょう。

後継者候補の方が次の行動に移せるポイントを用意している点は、細かいですが非常に重要だと考えられます。

《プロポジションを体現する仕組み》

先ほどから触れている点が主な要素になるでしょう。

・WEBサイト
・店の魅力や店主の人柄が伝わるコンテンツ
★リアルな雰囲気や光景が伝わる写真
・後継者募集の掲載
・印象に残るCM、ポスター

※写真は、「絶メシリスト」サイト内からお借りしております。

《内部浸透・外部コミュニケーション》

市内の飲食店に対しては、直接お店に伺って取材・撮影をしていく中で関係性を構築したり、後継者が見つかった事例を伝えていくことで意義や狙いを浸透させていくようなことをしたりしているのではないかと思います。

一方で、外部コミュニケーションにおいては定期的なコンテンツ発信のほか、おすすめ店舗情報をサイト閲覧者から募る仕組みや絶メシの秘伝レシピを公開するコンテンツを提供しています。それによって周囲を巻き込み、サイト閲覧者の中から特定のお店を応援するファンや後継者として立候補する人を生み出そうとしているのではないかとも考えられます。

《効果測定・サイクル》

問い合わせ数や新規顧客数、後継者不足問題を解決できた店舗数などによって、効果測定を行い、改善や修正を行っているのではないかと思います。

まとめ

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
「絶メシリスト」公開前後の高崎市の状態をまとめると、このようになります。

一貫して「後継者不足」という問題にアプローチしていることがわかります。手段が目的化してしまうこと取り組みが少なくない中、とても勉強になる取り組みでした。

この分析の結果、「絶メシリスト」成功の要因として考えられるのは大きく以下の5つ。

①問題を効果測定可能な粒度まで課題化。
 →地方創生、商店街の活性化→飲食店の後継者問題 / 後継者問題を解決した店舗数。

②ターゲットにとっての行動喚起要素を設置。
 →サイト名に後継者を求めている店舗を集めたコーナーを作成し、記事の最後に後継者を求める旨の店主のコメントと連絡先を公開しています。これによって、ターゲットが行動を起こしやすくなっていると考えられます。ターゲットにとっての行動喚起要素を設けることは、細かいですが非常に重要な点。

③ターゲットのリスク思考を打破する一次情報量。
 →思わずクリックし、没入してしまうようなタイトル・写真・文章のクオリティは素晴らしいと思います。店主のキャラクターやお店の雰囲気もそれぞれ個性的で飽きがこない。編集者として仕事をする私としては、特にタイトルに込められた熱量をひしひしと感じます!

また、取材で得た量・質ともに申し分ない一次情報が豊富にあることで、人が選択をする際に感じるリスクを軽減させることにもつながっていると考えられます。

④耳と記憶に残るネーミング。
 →似たようなコンセプトで活動している方々はいても、「無くなりそう=絶滅」と捉え、「絶メシ」と名付けられたネーミングが素晴らしいと思います。短くて、わかりやすくて、人にも伝えやすい。

⑤地元住民の巻き込み。
 →その地域のために行動しているのに、何故かその地元住民に受け入れてもらえない。そんな活動も少なくない中、地元住民からローカルグルメ情報を募ったり掲載店舗と取材で密にコミュニケーションをとったりすることで、地元住民に活動の理解を得ていると見受けられる点も素晴らしいと思います。この関係性がないと、活動の持続可能性ややり甲斐が生まれない。

日本各地で悩む人が多い問題に対して、解決すべき課題を特定し、その解決のための手段としてのアイディアを質高く形にした「絶メシリスト」。一見すると、お店に食べに行き、取材や撮影を行い、情報発信するということは誰にでもできそうなことですが、それを他の誰も真似できないほどにクオリティ高く、ビジネス(問題解決)としてやりきっている点が素晴らしいですね!

時流・ニーズ・独自性がマッチした高崎市のアイディアと取り組みからは、勉強になる点が豊富にありました。

商店街の活性化や飲食店の後継者不足問題にお困りの方にとって、この記事が何かお役に立てるものでしたら幸いです。

参考記事

異例の広告賞受賞! 高崎市発の「絶メシリスト」はなぜ成功したのか?
https://dot.asahi.com/dot/2019060400013.html?page=1

群馬県発の地方PR「絶メシ」がニューヨークでも絶賛された理由とは?
https://dot.asahi.com/dot/2019060400014.html?page=1

“秘伝のレシピ”も公開 話題の高崎市「絶メシリスト」誕生のウラ側
https://dot.asahi.com/aera/2018011800079.html?page=1