御朱印あれこれ小噺【壱】

どもども。御朱印書く人こと慈岳です。

『御朱印集め』は現地に赴かねばならないことを除けば帳面を用意するだけでよく、書道具が必要となる写経より手軽にできるからなのか、SNSにUPしやすい見た目だからなのか、いつの間にか市民権を得ちゃいました。オリジナルや限定品の御朱印帳が出回り始めてからは『御朱印"帳"集め』をする人も出てきましたね。

人が増えれば問題も増える。授かり方や書記する帳面、保管の仕方など、人によって言うことが違う御朱印。あれこれ小噺です。ここに書くのは主にお寺の話で、神社のことは分かりません。ではではどうぞ!


●御朱印は誰が書いているのか

お寺にいる誰かです!……だと答えになりませんね。小さなお寺ならご住職やそのご家族(寺族)が、大きなお寺なら僧俗の職員が主に担当します。私が務めるお寺は筆の巧拙に関わらず、その日の出勤者やその場にいた人が書いていますね。私がいるときは私の担当です。

よく聞かれるのが「やっぱり御朱印を書いてるのは書道師範や有段者なんですか?」。特にそのようなことはありません。確かに書を能くする人もいますが、全員がそうではなく、書道の心得のない職員に書かせるお寺もあります。

●書き置きの御朱印はちょっと……

『御朱印専門』の書き手を置けるのは、ごく一握りの大寺院と、御朱印依頼の多い観光寺のみ。多くの寺院では法務や一般事務など他の業務をこなしがら書きますし、法事や行事、来客対応などで全員が出払ってしまうこともあります。また、複数のお寺の住職を兼務する人もいて、片方のお寺にいるときはもう片方のお寺にいないことになりますよね。

これらのケースでは、書き置きを作って置いておくしかありません。原則その場で書くお寺が多いですから、書き置き対応となるには何らかの事情があると考えてください。

●お寺の御朱印は崩し字のスゴイやつが多い?

慈岳に関して言えば、崩し字にするのは『速く書くため』です。神社のように楷書で書くと時間が掛かるので、速記性に優れた行草書で次々に書いてゆきます。大きなお寺は団体での参拝やツアー客が来るため、速く書けるかどうかは死活問題なのです。

私は『御朱印専門』ではなく、お寺の毛筆業務のほとんどすべてを行います。御朱印に時間を取られると他の書き物が出来なくなり、自分の首を締めることに。中にはSNS映えを狙っているお寺もあるのでしょうが、私は完全に実務的な理由で崩し字にしています。

●神社とお寺の御朱印帳は分けるべきか

これは意見が真っ二つ。私は『おまつりするなら分ける。しないならどちらでも良い』という考えです。主に年配者で、御朱印帳を神棚や仏壇におまつりする方がおられるのですが、神様のものは神棚、仏様のものは仏壇へのおまつりとなるので、御朱印帳も分けましょうねと。

ただ、私は神道のことをよく知らないので、もしかしたら仏教と一緒クタにされるのを嫌がる神様もおられるのかな?とは思います。仏様サイドは何も言わなくても、神様が嫌がるならそれはそれでよろしくない。詳しくは神職の方にお尋ねください。

●写真や動画の撮影

書いているところを撮るだけなら良いですが、ネットにUPするのはやめてほしいですね。撮影の許可を求められたらそのことを念押ししますが、身分証のコピーをもらうわけでも契約書を取り交わすわけでもない口約束など何の役にも立ちません。

ネットに流すなら書き手は撮影せず、書いたものを後で撮ってUPするだけにしていただきたいです。あと、字が下手でも絶対にディスらないでください。若い職員が御朱印書きを嫌がり、育たなくなってしまいますので。

●納経ってどうやるの?

基本は写経または読経で、四国や西国などのお遍路さんは両方納める方も多いです。彼等は普段から写経を書き溜めておき、お参りの旅に持って行くようですね。一般の方は読経だけで大丈夫。なお、札所ではないお寺の場合、写経のお納め(本堂へのおまつり)は別途1,000円程度掛かることがあります。

●写経も読経も無理なとき

各宗派には短いお題目やご宝号があります。南無妙法蓮華経、南無大師遍照金剛、南無阿弥陀仏、南無釈迦牟尼仏など。これを3回お唱えすると良いですよ。密教系宗派なら、ご本尊様のご真言でも良いでしょう。分からないときは納経所で、何を唱えたらよいかお聞きくださいね。

●御朱印帳以外の帳面に書いてもらうのはダメ?

個人的には別に良いと思うのですが、断言してしまうと各方面から〆られそうです。なので一応お寺の人間として『御朱印帳だけにしておきませう』と答えた上で、書き手視点での考えを述べます。

御朱印は墨を使います。御朱印帳は墨書前提に作られていて墨を吸いやすく、朱肉も安定して付きます。一方、ペンに最適化されている洋紙の例えばジャーナルノートですと、墨を吸いきれずに浮くしハンコは滑りやすいしで、キレイな御朱印になりません。墨取り和紙を挟んでもべちゃべちゃになるため、ノートを開いたまま乾くまで持ち歩くしかありません。

以上のことから、洋紙のノート類は候補から外したほうが良いです。御朱印帳は折本形式のものばかりでなく、和綴じのものもありますので、お好みに合ったものを探してくださいね。

~つづく~

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