浴衣デビュー。重要なのは『足元の仕込み』

なんでまたこんな2月のクソ寒い時期に『浴衣』なんぞの話をするかと申しますと……タイトル通り、この夏に浴衣デビューするためには、今のうちから足の仕込みをやっておかねばならないからです。

毎年、夏近くなると様々な浴衣記事が出てきますが、足元に関して詳しく述べたものは非常に少なく感じます。そこで本稿では、令和6年こそ浴衣デビューするぞよ!という意気込みのお嬢様・お姉様方へ、和装の足元に絞ったお話をお届けいたします。


●ハイヒールと草履

慈岳は草履や下駄ばかり履くので、鼻緒のある踵が低い履物で歩くのに適した『草履筋』と、鼻緒が触れる部分の皮膚が強くなっています。この足が作られたのは普段の履物を草履・下駄に替えた時期と一致しており、人体の適応力の高さを感じたものでした。

それ以前は10cm以上のハイヒールを好んでおり、爪先に体重を掛け気味にサッサカ歩く癖が付いており、その歩き方で真っ先に傷めるのは鼻緒が当たる部分なんですね。浴衣系記事の執筆者さんに『バンソウコウ信者』が多いのは、そのあたりにも事情があるのでしょう。

●『和風サンダル』で鼻緒に慣れる

ここからは『下駄』を使うことを前提に記します。まずはネットなどで、鼻緒の付いた『和風サンダル』を入手しましょう。このとき、踵が低く、底がしなるものを選ぶと良いです。ハイヒールに慣れていると歩き方がまず違うことと、そもそも指の又の皮膚が軟らかいため、いきなり台の硬い本格的な下駄でうろつくと足がやられてしまいます。

和風サンダルをゲットしたら、コンビニへ行くときなど短距離の徒歩移動で、クロックス代わりに履いて履いて履きまくります。最初は少し痛くなりますが、履くうちに鼻緒が足に馴染み、また、足も『ラク』を求めて次第に鼻緒に合った歩き方に変化して行きます。

●夏でもないのに裸足に和風サンダルは恥ずかしくない?

和小物やネオ和ファッションが好きな方以外は、たぶん誰も見ていないと思います。デニムやジャージなどの普段着に和風サンダルを合わせても問題なし。貴女もコンビニやファストフードにいる馬の骨(失礼)の履物なんて、いちいち覚えていませんよね?

私は寒冷地の住民ですが、真冬でも裸足の人はちょくちょくいますし、大阪にいた頃も冬場に裸足サンダルで特に何も言われたことはありません。特に都会人はよほど目を引く特徴がない限り、ニンゲンもただの風景です。堂々と履いて大丈夫ですよ!

●いよいよ下駄デビュー

和風サンダルを履きこなせるようになったら、いよいよ下駄を買ってみましょう。下駄は台が硬いので、底がしなる和風サンダルよりも難易度は上がりますが、鼻緒に慣れてきた貴女なら大丈夫!

本稿執筆時点で2月ですが、和風サンダルで3ヶ月練習した頃には、ちょうどお祭り&浴衣向けの下駄が出回る初夏の季節ですから、お買い物に出掛けましょう。きっと色とりどりの下駄が目を楽しませてくれるでしょう。

こちらもまずは『ちょっとそこまで』の距離から、足のお供にしちゃってください。和の履物全般に言えますが、『本番』の前に鼻緒を馴染ませておかないと予定調和のバンソウコウ事案が発生します。

お祭りで浴衣をお召しでしたらおおむね7~8月が下駄の出番なので、鼻緒の仕込みは十分間に合いますよ。

●それでもどうしても下駄が苦手なときは……

環境への適応力、有り体に言ってしまえば『運動神経』には、正直言って個人差があります。1ヶ月程度でぱっぱと体得する人がいる一方で、何年も鼻緒擦れや水脹れに苦しむ人もいます。このあたりは脳科学や精神医学も関わるそうですが、ダメな人はいつまでも下駄に苦戦します。

和の履物弱者であれば、もう足袋を履いてしまいましょう。近頃は夏向けの優秀なレース足袋も販売されており、浴衣のテイストに合わせて遊べる環境が整いつつあります。

浴衣は和服の中では最もカジュアルなもの。何をどうしたって構わないTシャツやジャージ程度のものですから、和装中上級者のごく一部の狭量なお姉様方が勝手に述べるしょうもない苦言はフルシカトして、好きなように浴衣を楽しめばヨロシ!

よくあるセット『浴衣+作り帯+焼き下駄』をご利用のお嬢様にあっては、まずそこから和装の門を叩いていただけたら私は脳汁でろでろです。怖がらないで着物の入門として、楽しく遊んでもらえたら嬉しいなと。着付け崩れた?てきとーにそこらへんの量産浴衣で遊んでる慈岳はおいといて、地域密着型の呉服屋女将さんにお任せなされ!

●履物と足袋の関係

ちゃんとした足袋は、その底の織り方で滑りを止めています。これが何の知識のないままに『足袋型靴下』で済ませようとすると花火大会で滑りまくって地獄を見ます。

長襦袢を着けないガチの浴衣装備であれば、カジュアルな滑り止め付き足袋を履いて焼き下駄で出掛けるのが良いのではと感じます。底に\/\/\/と織られているものは、想像以上にホールド力があるのです。

何年か前、足袋型靴下で草履を履いてみたことがあるのですが、歩くたびに前に滑っていって爪先がめちゃくちゃ疲れました。なので、和装用の足袋を使うことを強くお勧めします。

●着物警察のお姉様方へ

貴女が和装初心者の頃のことを思い出してください。慈岳を含めて、ハタチくらいまでに習い事などでそれなりに和装をしてきた人というのは少数派のまた少数派です。和装初心者の若い方に非建設的な苦言を述べるのは『絶対に』おやめください。

それから、ある程度年齢が行った大人の女性が安価な洗えるプレタを着ていても、取締りはしてはなりません。お坊さんも法会に出ないときなど略装のときは、2万円程度のプレタの着物を着ている人がたくさんますのでね。浴衣はカジュアル着ですから、お手入れ簡単なことも大事です!

●[おまけ]セットの作り帯の使い方

履物からは外れますが、ファストファッションで遭遇しがちな『浴衣+作り帯+下駄』のよくある話。作り帯の説明書には、『ヒモを胸に締める』ようにと書いてあります。

はいそこダメ! その説明書、誰が作った?

作り帯のヒモは胸元ではなく、上下逆にして腰で締めてください。女性は骨盤が広いので、腰骨の真上でヒモを結べば物理的に『落ちる』ことはありません。

説明書と胴帯を上下を反対にし、腰でしっかりとヒモを結んでみぞおちに余裕を持たせておけば、骨盤の広い女性の体型からそれ以下に帯が落ちることはありません。みぞおちに余裕を持たせておけば、スマホもぶっこめるしお祭りの食べ歩き、恰幅よろしきスイーツ女子も難なくクリアできます。覚えておいてね!

●おわりに

ね、ね?……和装ももともとは日本人のスタンダードだったのです。令和の今にあっても和装スタンダードな神社仏閣のカジュアル装備にあっては、わちゃわちゃしたシキタリなんぞはほどほどに取り入れつつ、慈岳みたいなハンパな尼サンにとっては普段着も同然なのです。

バブラーは高いお金をかけて『お教室』に通い、センセから高い着物を借金して買わされたのかも知れませんが、本来和服はそんな背伸びして買わねばならないような堅苦しいもんじゃありまん。

2,000円にも満たないキルク草履を、私ら僧侶は大切に使います。カネかければいい、伝統ガーとペチャクチャしゃべって安っぽい承認欲求のみで生きるのは無意味。これから和装で遊んでみようというお嬢様やお姉様は、着物警察の言うことなどシカトして楽しんでくださいね。知れば知るほど、和装は楽しい沼だと慈岳は思います!

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