御朱印あれこれ小噺【弐】

前略 御朱印にまつわる小噺です。続き行ってみましょー!


●御朱印を待つ間はお静かに……

書き手は筆を手にすると集中しますので、書いている間は話し掛けないのがベター。幸いなことに、うちではほとんどのお客様は黙ってお待ち下さるのですが、たまにめっちゃしゃべる人がいます。慣れている人でも書き間違えやすいのでやめたほうが良いでしょう。質問等あれば、書き終わって御朱印帳が返却されるときにどうぞ。

同行者どうしでおしゃべりしていただくのはもちろん大丈夫ですよ! お待ちの間、手持ち無沙汰ですしね。

●書き間違いがあった!

御朱印帳が返却されたらすぐに確認し、間違いがあればお申し出ください。新しいページに書き直すか、そこだけ訂正するかをご指示いただきましたら、すぐに書き直します。私も年1~2回、日付を間違ってしまうことがあります。

御朱印の書き間違いはたいてい書き手が自分で気付くのですが、人間がすることなので絶対の自信は持てないのが正直なところ。書き間違いがあっても、そのお寺とは縁がないとか、縁起が悪いとかいうことはありませんので、その点はご安心いただけたらと思います。

●字が下手で書き直してもらいたい

うちではまだ例がないですが、これは気まずい。下手と言われた本人はもちろん、書き直しを行う書き手にとっても居心地が悪すぎでしょう。恐らく納経所の空気が凍り付きますので、職員や周りのお客様から「面倒な人だな」と思われることを覚悟で申し出てください。

また、申し出ないまでも同行者とヒソヒソ「下手だね……」などと言わないでください。女性観光客に多いですが、こんなことを言われれば、余計な気持ち(「この人は一度お不動様に叱っていただかねば」とか)を込めながら書いてしまうことにもなりかねません。

●どんな筆を使っているか

筆には様々なサイズや種類があり、書き手によってまちまちです。私は小筆を全て下ろしていますが、大筆の先を使って書いたり、中筆を使ったり、字の大きなところと小さなところで使い分けたりと、皆さんそれぞれに本人が書きやすいようにしています。

なお、うちのお寺は御朱印依頼が少ないため、筆を納経所に置きっぱなしにすることが多いです。すると筆が乾いてしまい、当然筆の傷みが早まるので、1,200円くらいの安い筆を擦りきれるまで使っていますね。

●墨は手磨りではなく液体墨

手磨り墨の良さ(奥行きや揺らぎなど)が分かる人は書道を嗜む人だけで、お客様100人いれば数名程度のもの。一般ウケするのは液体墨です。液体墨はただ黒々としているだけで色気がないのですが、印刷された字を見慣れた一般人の目にはこちらのほうが良く映るそうです。

私が使っているのは『作品用』とされる少し上級の液体墨。たまに本物の和紙で自作した御朱印帳をお持ちのお客様が来られるので、同じ液体墨でも普及品や学童用の銘柄は避けています。過去帳やお札に使う墨はちゃんと手磨りしていますよ。

●御朱印を書く人になりたい!

御朱印『だけ』だと相当絞られてしまいますが、筆で何でも書けるのであれば、繁忙期を中心にお手伝いが欲しいお寺は意外とたくさんあります。行事などで多くの塔婆やお札を作らねばならない時期に、菩提寺など知り合いのお寺に聞いてみましょう。ご住職や本職の書き手がお札作りに回り、御朱印を書かせてもらえるかも知れません。

参考まで、関西において夏季は8月のお盆と9月の秋彼岸が連続するため、5~6月から書き物を開始します。毛筆の書き手は年々減っており、人を探すのも一苦労。たとえ1日限りのお手伝いでも書き手が増えると喜ばれますよ。

●御朱印帳の処分の仕方

終活や遺品整理で御朱印帳を処分したい場合は、神社やお寺に相談してみましょう。御朱印はお札と違ってお性根が入っていないため、そのまま処分しても問題はないのですが、『気持ちの問題』でそれがイヤだという場合もありますよね。

自分で処分する場合は白い紙でくるみ、外から見えないようにして燃えるゴミで出します。『生』のままゴミ袋に入れて出してしまうと、ゴミ収集の作業員さんが気にされるかも知れませんし、信心深い人が見たら叱られる可能性があります。

●さいごに

御朱印については授ける側であれ授かる側であれ、様々な考え方を持っています。同じ宗派でもお寺によって意見が異なったり、同じお寺の中でも取り組みスタンスが別だったりして、一口にコレとは言いきれません。

書き手として特筆しておきたいのは、御朱印代は『証書発行手数料』であって『書道作品代』ではないということ。書き手の減少にともなって、書き置きを通り越して、印刷物にハンコだけ押して済ませるお寺も今後現れるかも知れませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?