<智花の場合 第5話>

大学での講義はいつも通り進んだ。学年が違うため、美桜と顔を合わせることもない。
トイレに行くのを避けるため水分摂取には気を遣うが、智花に訪れた束の間の休息であった。問題はこの後である。智花の所属する水泳部の活動日は週3回。今日も練習日なのだ。
下手に休めば美桜の不興を買うことは確実なので、休むという選択肢はない。
最後の講義が終わるまであと30分。大好きなはずの部活が、今日は心に重くのしかかる。
 
やがて講義は終わり、嫌々ながらプールへと向かう。
いつものように水着に着替えたが、パットがない分胸元が心許ない。目をこらせば胸の突起も判別できる状態だ。いつもなら堂々と歩くプールサイドも、今日は背筋を丸め小走りで移動する。他の部員から挨拶をされても、返事はそこそこに、さっさとプールに入った。
ニヤニヤしながらこちらを見る美桜の視線に気がつかないふりをして、ルーチンのメニューを始める。
 
周囲の視線を気にしながら3時間、なんとかメニューをこなし食事の誘いも断り早々にプールを後にする。急いで着替えているところに、美桜が声をかける。
「お疲れさま。どうだった?いつもよりも集中して練習でいたんじゃない?笑」
理不尽なことを要求しておきながら嘲笑するような問いかけをしてくる美桜に腹は立ったが、揚げ足をとられないよう黙々と着替えを続ける。着替えがほぼ完了し、荷物をバッグに詰めようとしたところに、美桜の手が伸びる。
「ちょっと、返してください」
水着を取り上げられ、智花が精一杯抗議する。
「今日見てて思ったけど、せっかく毛を伸ばすんだったらもっと小さい水着がいいと思うんだよね。その方が智花の可愛い毛を皆に見てもらえるでしょ?今度私が買ってきてあげる。これは没収ね。」
理不尽な理論を展開されるが、智花には逆らう術もない。愛用の水着をあっさりと取り上げられ失意の智花は帰路につく。
 
家に帰った智花は、心神の疲労が限界に迫っていた。それでも、美桜から課せられたノルマが残っている。衣服を脱ぎ裸になると、浴室の鏡の前に立つ。まずは全身が映るように写真を一枚撮影する。さらに、股間と脇のアップをそれぞれ撮影した。
次に、撮影した写真をアップするためSNSのアカウントを開設する。アカウント名は「羞恥娘T」もちろん美桜の命名である。
アカウント開設後、今日の一枚を投稿した。これでやっと今日のノルマは終了である。
屈辱に打ちひしがれる智花の涙を、シャワーの音がかき消しながら夜が更けていく。

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