<智花の場合 第4話>

<第4話>
翌朝
智花はアラームの音で目を覚ます。いつもと同じ自分の部屋、いつもと同じ日差しが目に入る。昨夜のことは夢だったのではないか、そう思いたくなるような爽やかな朝だった。
しかし、そんな智花をスマホのメッセージが現実に引き戻す。
「おはよう。早速だけど、とりあえずの指示を送るね。長いけど、間違えのないようによーく確認してね♪」
1行目を読み、昨夜の記憶が鮮明に蘇る。美桜の部屋で、全裸で土下座をしている自分・・・
思い出しただけでも胸が痛む。絶望に打ちひしがれながら、メッセージの続きを読む。
 
1.  私からの呼び出しにはいついかなる時も応じること。
2.  SNSの裏垢を作って、一日一枚全裸の写真をアップすること。
3.ムダ毛の処理は一切禁止。脇、陰毛の伸び具合を写真に撮って保存しておくこと。週に1回SNSにアップしてね。
4.トイレに行くときは毎回私に報告すること。用を足したら、便器の中と自分の顔が写るように自撮りをして送ってね。家以外のトイレを使うときは、流さずに出てくるように。
5.おしゃれな服は禁止。着ていいのは無地のTシャツとデニムのパンツ、部活のジャージだけ。家では部活用の水着を部屋着にすること。
6.部活で使う水着は全部胸のパットを外しておくこと。
7.下着を洗濯するときは、その前に全部並べた写真を撮って私に報告、許可を求めること。ショーツは全部内側が見えるようにして並べてね。
 
読んでいてめまいがしてきた。これだけの条件を課されては、もはや今まで通りの楽しい大学生活というわけにはいかないだろう。それでも、決定的な写真を美桜に握られている以上は従うしかない。いつもなら朝食を準備する時間だが、今日の部活で着用する水着のパットを外しておかなければならない。屈辱に震えながら、指示されたとおりの作業を終えた。
その後慌てて朝の支度を整えたが、大学へ行く前にどうしても済ませなければならないことがある。そう、尿意が迫っていたのである。
排泄をすれば指示に従い屈辱的な写真を撮影しなければならない。しかし、ずっと我慢し続けるわけにはいかない。大学に行ってから用を足すことになれば、横の個室に人がいる可能性がある。流さずに個室を出たところを見られればさらに恥ずかしい思いをしなくてはならない。背に腹は代えられず、トイレへいく決心をした。
 
便座に座り、尿道の力を緩める。幼い頃から当たり前のようにこなしてきた行為だが、今日はいつもと同じという訳にはいかない。このあと屈辱的な写真を撮影しなければならないのである。健康診断の尿検査であれば見ず知らずの相手に提出するだけであり、あくまでただの検体として扱われるだけなのであまり羞恥心も感じないが、今日は違う。
顔と名前がセットで残るのだ。しかし全裸の写真が出回るよりはマシ、そう言い聞かせ排尿する。用が済むと、トイレで膝立ちになり便座に顔を近付ける。きれい好きな智花の性格を反映して、比較的綺麗に保たれているがそれでも便座に顔を近付けるというのはいい気持ちはしない。それでも心を無にして自撮り写真を撮影する。
トイレを出た智花は、指示通り美桜にメッセージを送信する。
「写真の確認をお願いします。」
すぐに既読がついた。
「お、早速送ってきたね。アングルはいいんだけど、紙を使う前に撮影してほしいな。そうしないと紙で蓋をされちゃってよく見えないから。」
また一つ、ルールが追加された。この調子でどんどん制限が増えていくのだろう。
智花の気持ちは沈む。
本来なら誰にも会わず家で過ごしていたい気分だが、単位のためには大学を休むわけにはいかない。沈んだ気持ちを奮い立たせ、大学へ向かう。

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