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生まれる前の記憶

「生まれる前の記憶なんて、あるのか?」
と信じていなかった。私なんて最近の記憶でさえ怪しいのに。今も半信半疑ではあるが、娘との小さい頃の会話で、もしかしたらと思うことがあった。


 まだ娘が保育園で、おしゃべりがある程度できるようになったくらいだったから、3歳頃かと思う。その頃、弟の方はまだ赤ちゃんだった。娘が始めた話が、生まれる前の記憶のようであった。作り話かもしれないが、なんとなく事実と重なる部分もあり、おもしろかった。だいたいまとめると、このような話だった。

 娘は、泉のようなものがあるきれいなところで、弟と遊んでいた。それは、楽しかったようだ。そうしたら、おじいさんがやってきて、娘たちに言った。
「もう行っておいで。」
娘は弟と一緒に行こうと思ったけれど、弟は、
「僕はまだ行かない。後で行く。」
と、言った。
娘は、1人で行くことにした。
「先に行ってるね。」
弟に言って、娘は泉の中に飛び込んだ。

娘の話より


 娘の作り話かもしれない。子どもの頃は、色々と空想したりするものだ。ただひとつ、気になったことがあった。娘は元々双子だった可能性があるそうだ。産婦人科の検診で、
「赤ちゃんの部屋がふたつに分かれていたようね。双子だったかもしれないけど、1人は消えてしまったのかも。」
と言われた。バニシングツインというそうだ。片方が流産し子宮に吸収されてしまうらしい。
 それを思い出すと、もしかしたら、娘の記憶もただの作り話ではないのかな、と思ってみたりもする。ただ、もう娘はその話を覚えていない。
「私そんなこと言った?」
と驚くくらいだ。娘に双子だったかもしれない話もしたことはない。

 胎内記憶、嘘か本当かわからないけれど、そうだったらおもしろいなとは思う。元々双子だったというのなら、娘と息子の仲の良さも頷ける。

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