この広い海の向こうに世界がある

月曜日、熱があり、バイトをお休みしてしまった。
いつもはユンケルを飲めば次の日には快復しているのだが、今回は結構酷かった。

というか、7月下旬に気管支炎?みたいなのになってからというものボクの身体は不調だ。話をしたり身体を動かしたりすると咳が止まらなくなる。
これやばいな。と思い、今回の風邪とは別で先週耳鼻咽喉科に行くと風邪と診断された。当然、薬を飲んでも治らないため、そろそろ呼吸器科とかに行こうかと考えている。

まぁ、それはさておき、月曜日、バイトを休んで寝ていると音楽フェスに行っていた父と母が帰ってきた。
ルンルンで帰ってきたのだが、母は寝ていたボクを慌てて起こし、ビッグニュースかのごとく言った。

「zenchan!ビシャン、オーストラリアに引っ越すって!」

「あー、そうなの?」

その時は体調悪かったし寝ぼけていたので生返事をした。が、起きた後もう一度聞き、事の重大さに気づいた。


ビシャンはボクの家の隣の棟に住んでいるスリランカ人。
家の前でよく会い、挨拶を交わすうちに仲良くなり、目が合うとニコッと笑い手を振ってくれる。お土産を渡しあったり、遊びに行く時最寄りの駅まで送って貰ったりしていた。



「ビシャン、オーストラリアに行くってもう帰ってこないの?」

「うん、あっちで永住権貰って暮らすんだって。遊びに来てって言ってたよ」

「そうなんだ」



寂しかった。そしてビシャンは3日後にもう飛び立つ予定だった。あまりにも急すぎた。

母はビシャンとLINEを交換してきていて、
「zenchanも挨拶に行くかもしれないし、まだ大学生だからオーストラリアに行く機会があるかもしれない」と言ってくれたらしい。





それから2日が経って一昨日。朝、母のLINEを借りて「今日挨拶に行きたいんですが、」と連絡したら
「夕方ならいます」
と来た。
そのため、夕方に家にあった日本酒を持ってビシャンの家に行った。


緊張して、ビシャンの家の前で10分くらいウロウロしながらインターホンを押せずにいた。


決心がつき、インターホンを押すと、ビシャンの奥さんが出てきた。

「こ、これ、ビシャンにプレゼント」

そう言って日本酒を渡すと奥さんは

「ゴメンネ、今出カケテて家にイナイの。
帰ッテ来たら伝エルね」

と言ってにこにこしながら手を振ってドアを閉めた。


最後に挨拶できなかったなーーーー
そう思いながら家に帰ったが、さすがにこのまま終わるのは嫌だったんで、2時間後にもう一度挨拶しにビシャンの家に行った。


すると、丁度ビシャンが友達と家から出てきたところだった。


「オォー!!!忙シくて会エなくてゴメンネ!!」

「全然!ビシャン、今までありがとう」

「コチラこそ、ドウモアリガトウゴザイマシた」

「LINE交換しようよ!ビシャン!」


ボクがそう言うとビシャンはカバンからスマホを取りだして、QRコードを出してくれた。


「オーストラリアに行くの?」

「ソウダね、行くよ!来ル?」

「行く!お金貯めて来年目標で!」

「ホント!?ジャあ来た時コレに連絡してネ!」

「うん!絶対する!」



「ソレじゃあ!ムコウデ、アソボウネ!!!」





そう言うとビシャンは手を差出してきてガッツリ握手をした。その手は大きく、逞しく、あったかかった。






両親は、「大学生のうちに海外に行っておけ!」と言う。
就職したらまとまった時間が取れなくなり、自分の好きなことに費やす時間が少なくなってしまうから。


最近、就職のことを考えて思い悩むことが増えた。学生でいられるのもあと1年ちょっと。執行猶予4年があっという間に経過してしまっている。

なんでもないような日が続いて終わってって、あっという間に社会人。寂しい。


だから、大学生であるうちに色んなことをしたい。お笑いにアパレル店員に映画のエキストラ等色々なことをしたが、海外旅行は未だかつて生まれてから1度もしたことがない。




ビシャンとの別れは寂しい、超寂しい。が、海外旅行へのモチベーションを大きく上げてくれた。オーストラリアに行ったらそっちで家に泊まらせてくれるみたいだし。

目標は来年の春休み。無理だったら夏休み。それまで何とかオーストラリア旅行の資金を貯めたいと思う。











何はともあれビシャン、SUPER THANKS.
そして、また来年。

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