エドワード・ホッパーの魅力

アメリカの画家、エドワード・ホッパーが好きです。
プロの画家は、一見稚拙な絵、構造の整わないような画風でも、基礎はしっかりしていて、美しいお手本のような絵をちゃんと描けるそう。
なので、ホッパーもきっとそうに違いありません。
というのも、ホッパーの絵は決して緻密だったり、繊細なタッチというものは感じられず、絵の具をべったり塗ったように素人目には見えるから。
それなのに、不思議なほど惹きつけられる。
人物画が多いですが、街中の絵、風景画もたくさん残しています。
彼の描く人間は一様にしっかりした骨太な体型で、華奢な印象はありません。
女性は見事なまでにグラマラス。
男性は力強い。
現代のLGBTQを重んじる風潮とは違う時代の絵です。
とはいえ、彼にそうした固定観念があるというわけではありません。
印象的なピエロの哀しげな絵もあります。
不思議なのは、彼の描く人物に表情や感情が見受けられないこと。
そこがかえって、観る者の想像力をかきたてます。
あるいは、自分もまっさらな気持ちになって、その絵の世界に入り込める。
私は夜、彼の画集を開くのが好き。
日中より夜に眺めたいのです。
これから一日が始まるときより、一日の疲れを引きずった状態で、力強いタッチで描かれた、ある種無機質とも言えるホッパーの世界に無心になって浸る…。
至福の時間です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?