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そんなに怒ってるなら早く言ってよ。

「訴訟大国アメリカ」と良く言われます。実際の訴訟件数までは調べてはいませんが、感覚として「確かに多いな」との印象はあります。訴訟の中でも横綱クラスかつ「やっかい」(訴えられる側にとって)な集団訴訟 (Class Action)の一例として、最近話題になった「アイス・ゲート」(Ice-gate)(*)について書きたいと思います。おなじみスタバを相手とった集団訴訟なので、対象となる方は少なくないでしょう。

(*)(こいつもか!という感じのスクープ・スキャンダル系の話は「なんとかゲート」(昔、ニクソン大統領を辞任に追いやったウォーターゲート事件にちなんだもの)ともじって報道されることが多いです。

Ice-gateだけでなく消費者集団訴訟は数々あるのですが、「裁判にするほどではない」話が(残念ながら)とても多いです。

訴えられる側も「そんなに怒ってるなら早く言ってもらえれば真摯に対応できたのに」という話ばかりで、迷惑きわまりない感じです。スタバはIce-gate訴訟に対して「根拠のない訴訟。お客様一人一人に満足いく飲み物を出せるよう、言ってくれれば何度でも作り直します」とコメントしています

訴えた側にもそれなりの言い分があって、自分一人のドリンクが良くなることよりもスタバのビジネス・プラクティスを改善してほしい!という世直しを目指しているらしいですが。。。でも実際は(そして一般的な見方は)集団訴訟で弁護士報酬をしっかり稼ぐ(悪徳)弁護士(集団訴訟専門として名を馳せてる弁護士事務所も沢山あるのです)が一番得をして終わるので、なおのこと集団訴訟が悪名高き迷惑な存在になるのです。

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ではまずClass Action(集団訴訟)について簡単に。(前回も書きましたが、私は訴訟とは縁遠い弁護士なので、一般知識ベースです。より高度な話はWikipediaにも良くまとまっています。また、集団的な消費者被害を一括救済する目的の「日本版クラス・アクション」が導入されているんですね。この記事が勉強になりました。)

Class Actionとは「少額大量の消費者被害救済」するための訴訟制度で、一般的には

✔︎ 一人の消費者が被害者として名乗り出る
✔︎ 自分と同様の被害を受けた消費者が大量にいるはず
✔︎ 大量にいる原告人に変わって訴訟をすすめ、救済を求める
✔︎ 救済措置は原告集団全員で分ける

というものです。集団訴訟として正式に裁判所から認定されるには一定要件もクリアする必要があります。連邦・州によって手続き方法の違いがあるとは思いますが、私の理解している必要条件は:「numerosity(人数がたくさんいる), typicality(原告が受けた被害は集団にとって一般的な内容), adequacy(集団訴訟を推進する能力がある), predominance(集団の被害内容が訴訟において最重要要素である), and superiority (集団訴訟がもっとも有効な救済措置である)、というところです。

多くの場合、一般の私たちも知らないうちに原告集団に入っています。アメリカに住んでいるとほぼ必ず経験することですが、「集団訴訟の原告人集団に該当すると思われるあなた様に」というようなお葉書が定期的に郵便受けに入っています。内容はこんなもの:

「◯◯年から◯◯年の間「商品X」を買ったあなたに通知です。商品Xには〜〜〜の不備があり、その製造・販売責任者であるY社の責任が集団訴訟の結果、確定しました。和解措置は以下の通りです。和解に伴い、$Zの和解金が原告集団の間に分配されます。ぜひその分配に参加するべく、以下の手続きに従ってください」

こうした和解にいたった集団訴訟について、classaction.orgというまとめサイトまであります。お葉書をもらってない場合でも、ここにある和解ケースを見て、自分が該当するかどうか調べてリベートとか返金を受けることもできるんですね。なんだか、な。。。棚ぼたもいいところですね。

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さて、スタバIce-gate訴訟に話を戻します。

実際の訴状はこちら。5−16ページ目の「Factual Allegations」(事実関係)が写真入りで読み応えありました。ぜひ見てみてください。文句のポイントは:

アイス系のドリンクに氷が沢山入るので、実際の「ドリンク」の量はメニュー記載の量より少ない。

氷は「ドリンク」ではないので、氷の分は不当課金だ。

私はアイス系のドリンクが好きで良く注文するのですが、確かに、考えてみるとあっという間に飲み終わってしまって、コップにはたくさんの氷が。。。

具体的に「大型Ventiサイズ」で比べると、こういう結果らしいです。

ホット:20ozサイズのコップにコーヒーなみなみ ($2.45)
アイス:24ozサイズのコップに14ozのコーヒー + 氷 ($2.95)

こうやってみるとなるほど〜、と思ってしまいます。

確かにアイスは割りに合わないのね。スタバのメニュー、24ozって嘘なんだ〜。氷こんなに入れるんだ〜。

だからって、訴訟する気にはならないですけどね。

氷、少なめにしてねって言えばすむことだし。

どうしても気になればツィッターで文句言って、スタバ本社に文句のお手紙書いて、「コメントありがとう」ギフトカードもらった方がいい気がします。(私はしないですが)

「過去10年の間に一回でもアイス系ドリンクを注文した人」

が原告集団の対象らしいので、該当しない人を探す方が大変なくらい大量の人数だと思います。怖い訴訟ですね〜。

お客様のお怒りは、できる限り早いうちに鎮めてあげるのが何より大事というレッスンだと思いました。

今日も読んでいただき、ありがごうございました。

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