米国最高裁判事Antonin Scalia氏が亡くなりました。

Scalia最高裁判事(Supreme Court Justice) の突然の死去が2016年2月13日に報道されました。(日本のメディアでは「スカリア氏」との表記のようですが、イタリア系の苗字なので実際は「スカリーア」と語尾を伸ばす方が近い気がします。)

日本では「最高裁判事」が誰かなんて、一般メディアに出ることも少ないし、法曹界以外では馴染みないようですが、アメリカでは政治・経済を動かす非常に重要な役割を持っています。最高裁建物はワシントンDCの観光スポットとも知られ、判事の名前も一般的に浸透し、政界のメジャー・プレイヤーの役割と言えると思います。大統領の任命(nomination)を受け、上院議会(Senate)での承認を経て就任した後は、死亡もしくは希望退職するまで任務は続きます。長い任期なだけに、それぞれのレガシーの影響力が強い、歴史的重要人物となります。(米国最高裁の説明:Wikipediaがさすがによくまとまっています:http://bit.ly/1VplVeY)

Scalia判事は1986年にレーガン大統領に任命された判事(レーガン大統領が在任中に任命できたのは合計3名)で、79歳の死亡時まで、30年間の長いお勤めでした。現職判事の中では一番のベテラン。保守的な法見解を忌憚なく述べる、パワフルな存在として知られていました。最高裁意見(Supreme Court opinion)は判事全員(アメリカ最高裁では9人)の一致によることは少なく、マジョリティーによる主文とともに、反対意見(Dissent)も一緒に判例を形成します。Scalia判事は主文担当の場合は知性がキラリと光る名文を、反対意見表明の時には歯に衣着せぬ強い語調を用いる「Master Dissenter(反対意見のマスター)」としても知られました。

風貌はいかにもイタリア〜ンという感じですが、「超保守派で近寄りがたい、強い判事」というのが私の個人的な印象でした。(CNN記事:http://www.cnn.co.jp/usa/35077823.html )

Scalia判事の死去はとても突然なものでした。あまりに突然、かつ遠い遠いテキサスの奥地での不慮な事故だったため、検死官の到着が遅れ、よって死亡時刻が2月12日なのか、13日なのか、確定しないままのようです。テキサスの友人と狩りに行く予定でその方のお宅(というか大牧場)に滞在中に突然の死去。週末なこともあったのか、だだっ広いテキサスでは「一番近くにいる」検死官といっても遠い遠い道のりを車で駆けつけたため、その到着はずいぶん先の話だったようです。最高裁の重要人物と言えど、不慮の事故は同じように「不慮」として訪れるものなんですね。。。

Scalia判事の死去により、判事は現在8名。
リベラル派3人
(リベラル寄りな)中間派1人 
 保守派4人
という分布図になるので、次の判事がどこに入るかで今後の政治動向に大きな影響があります。そんなわけで、Scalia判事の死亡に暗殺・陰謀説を問う人もいるようです。(特に大統領候補のDonald Trump(トランプ)氏)

次の判事候補と囁かれている法曹界要人は多くいますが、その筆頭有力候補にあがっているのがSri Srinivasan氏。インド生まれ、カンザス育ちの彼はちなみに、私のロー・スクール(法科大学院)の同級生です。(向こうは絶対覚えてないと思いますが。)学生時代から超優秀で、かつ超ナイス・ガイで、みなに慕われる存在でした。同級生の彼女と卒業後結婚し、双子ちゃんのパパになったようです。同級生という以外の縁は何もないのですが、彼が判事になったらやっぱり、嬉しく思います。また、はじめてのアジア人系判事が誕生する可能性は多くが注目するところです。(はじめての黒人判事は現職のClarence Thomas氏、ラテン系判事は同じく現職のSonya Sotomayor女史。アジア系の判事はまだいません。)

もうすぐ任期が終わるObama大統領。すでに2名の最高裁判事を任命しているので、この任期中に3人目まで行けば定員9人のうち3人(=1/3)を「Obama任命判事」達が占めることになります。それが可能か否か、これから大きな争点となることが予想されています。(記事参照:http://bit.ly/1Xv7Xty)


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