見知った単語なのに、リーガルな場所では違うお方になるのね。

今日のメニューです:

前菜:「リーガル英語」について
メイン:リーガル英語を5つ、ピックアップ
デザート:私の失敗談

ではまず「リーガル英語」について。

昔々、ロースクールに入ったばかりの頃、一番困ったのは言葉でした。とても幸いなことに、小さい頃から日本語と英語をほぼ同時並行的に使ってきたので英語自体はいいのですが、授業では知らない単語が出てくる出てくる。法律の世界独特の言い回しとか表現もあって、判例集読むのに一苦労。

知らない単語だけでなく、知ってるつもりの単語が違う意味になったり、発見だらけでした。

弁護士になって実務を重ねるうちに、自然に読み書きできるようにはなりましたが、今でも複数回読み直してやっと咀嚼できる時もあります。

既知のものもあるとは思いますが、そんなリーガル英語を5個、ピックアップしてみました。ランダムなセレクションですが、どこかで誰かの何かのお役に立てれば嬉しい限りです。

1)Service of Process

ロースクール1年目、コアの必修科目の中にCivil Procedure(民事訴訟法)があります。訴訟過程の様々なルールを学ぶのですが、このトピックにかなりの時間が費やされます。

Process
普段の意味:過程とか、進行とか、いわゆる「プロセス」
リーガル英語:訴状

Service
普段の意味:いわゆる「サービス」
リーガル英語:お届け(送達)

Service of Process 
普段の意味:とくになし。
リーガル英語:訴状の送達。訴状だけでなく、立ち退き命令だったり、裁判への出頭命令だったり、さまざまな法的通知・通告も含みます。

Service of Processがきちんと実行されないと、訴状・通知書の法的有効性に影響するので(たとえば訴状が正しく被告人に送達されないと、訴訟そのものが成立しない)、とても大事なポイントになります。送達は専門の業者さんに頼むことが殆どです。たとえばシアトルのこんな業者さん。送達先の本人確認を怠らず、安心のサービスだそうです。訴状を送り届ける時は「You've been served」が決まり文句。映画の場面でも良く出てきますね。

「Service of Process」は会社設立や登記の際にも登場します。アメリカの法人登記は州(State)に届出るのですが、その時に会社の所在地と合わせ、「Agent for Service of Process」を登録します。このAgentとは訴訟を起こされたり、なんらかの法的通知が送られる場合の書面受取人のことです。受取人のところに来たものは拒否できないし、逆に指定した受取先以外のところに送られたものは正式に成立しなくなります。

オフィスがないところに法人登記をしている場合、Agentとして代行業者をお願いします。(たとえばシリコンバレーの多くの企業はDelaware州に会社登記しますが、Delaware州にオフィスはないので、代行業者をAgentに指定します。法人登記関連の話は長くなるのでここでは割愛します。)

2)Consideration 

普段の意味:考慮とか配慮
リーガル英語:契約の対価

「In consideration of the promises contained herein, the parties agree as follows...」これは良く見る契約の書き出し文です。「以下に記された、それぞれの約束事を対価として、両当事者間で合意します」、というものです。

契約が有効になるための四要素は:Offer, Acceptance, Consideration, Performance、と教えられます。そのうちの「対価」の存在を確認するための条文になります。

また、たとえば支払い条項に「as consideration for the services being provided by Party A」といった文面が良くありますが、ここでも「サービスに対する対価」という意味になります。

3)Performance

普段の意味:いわゆるパフォーマンス
リーガル英語:実行

契約の四要素のなかの「Performance」は「契約義務の実行・履行」をさします。

なので、「failure to perform」とは実行を怠ること。あるいは「intellectual property rights created in the course of performing the services set forth in this agreement...」といった文脈では、「本契約に基づいて、サービスを提供する過程において発生した知的財産」という意味になります。

「Compel performance」という使い方もします。義務の強制履行を求めるものです。また、「specific performance」は具体的な義務を指定し、その実行を要請するものです。

4)Exhibit

普段の意味:展示。Exhibition(エクセビション・展示会)はこの派生語
リーガル英語:契約の別紙部分。訴訟の証拠物件。

日本の契約では「別添」とか「別紙」と呼ばれるものですね。番号またアルファベット文字で特定します。契約書によってはExhibitがいくつも追加され、主文より長い場合もあります。主文とExhibitが合わさって契約を形成することを明確にするため、「本契約」をこのように定義します:

This agreement (together with all exhibits hereto, this "Agreement")...  (この契約(別添書類と合わせて、「本契約」と定義する)は。。。)

具体的ビジネス条件(納品内容、スケジュール、支払い条件など)はできるだけExhibitに入れる傾向があります。Exhibitは「リーガル的うんちゃらかんちゃら」の長い文言でない、普通の文章で書かれることが多く、ビジネス部隊が自分で交渉・ドラフト作成しやすい部分です。また、その後の契約修正も主文はいじらずExhibitだけを変える方が何かとプロセスが簡単で、契約運営がやりやすくなります。

訴訟の場では証拠文書・証拠品をExhibitと呼びます。これもまたリーガル系ドラマで良く見ますよね。「陪審員のみなさま、Exhibit 35ご覧ください!」とか。

5)Execution

普段の意味:実行
リーガル英語:署名

署名することは実行を約束すると同じなので、この単語を用いるようになったのかな、と思います。

契約の最後に「the parties have executed this agreement through their duly authorized representatives, as of the Effective Date」と出てきますが、「それぞれの真正なる代表者によって、契約有効日と同日付けにて、署名をします」というものです。署名することで上記の契約四要素の「acceptance」を意味することにもなります。

では最後に、私の個人的失敗談。

まだロースクールに行く前の話です。アメリカの首都、ワシントンDCの小さなコンサル会社にいたのですが、そこで通訳の仕事も時折していました。大学時代から通訳・翻訳のアルバイトの口は多々あったのですが、きちんとしたトレーニングを受けたわけでもないので全て見よう見まね、自己流でした。

そんな私でも、ワシントンDCという場所柄、政府交渉の場に呼ばれることもありました。重要な通商交渉に、こんな私でいいんだろうか。。。と不安いっぱいでしたが。

そんな大事な交渉の大舞台に通訳としてはじめて入った日のことを、今でも鮮明に覚えています。

その日はいつものプロの通訳さんが都合付かなかったので、急遽代打として呼ばれていきました。米国商務省ビルに入るのもはじめて、通産省の方に会うのもはじめて、全てが緊張の連続。しかも、話の内容は以前からずっと続いてきた交渉。でも今日はじめて入る私には初耳な部分ばかり。話の流れについていけるのか、ドキドキしながら会議が始まりました。

「We will start today, with the outstanding issues.」

ここで「outstanding」と言われて、「傑出した」という意味に捉えてしまいました。「those are outstanding results!」とかいう意味で。

私が訳し始めると、商務省側の通訳として同席していた方(アメリカ人女性)が「no, no! outstanding, as in unresolved!」と正してくれました。Outstanding =まだペンディングな物事、という意味なんですね。

交渉しょっぱなから顔面蒼白、穴があったら入りたかったとはこの事、ですね。。。しかもそんなに難しい単語でもないのに。。。。

今となっては自分の中では笑い話ですが。「outstanding」という言葉を聞くたび、この痛い思い出がよみがえります。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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コメント1件

exhibitありますね。。同じ様に使われるscheduleも最初はナゾでした。。
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