「誰を向いて仕事しているの?」という問いかけ

お客様の方を向いていない?

会社に勤めていると、「うちの会社は内向きばかりだ」「お客様の方を向いて仕事していない」という言葉が、営業だけでなく管理部門、研究部門、管理職、あるいは経営者自身から出てくるのを耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。この記事では、「会社で仕事をするということ」について、改めて考えてみましょう。

会社は誰のもの?

教科書的な所有と経営の分離では、会社の所有者は議論の余地なく株主のもの、ということになります。では、株主さえいれば、たとえ一人もお客様がいなくても会社は存在し得るのでしょうか。従業員がいなくても会社は存在し得るのでしょうか。もちろん、法的には存在し得ます。でも、そのような会社があったとして、どのような意味があるのでしょうか。結局のところ、これは権利と義務をどちらの方から見るかによって、色々な考え方ができるのです。

何のために会社に入ったの?

一人の人間ができることには得手不得手こそあれ、どうしても限界はあります。巨額の資金を投資すること。数万人の人を決められた時間に、決められた場所へ移動させること。数百万もの家に電力を送り届けること。徒歩圏内で豊富な食料を販売し続けること。生活に不可避な道具を安く大量に供給すること。天災にも耐える住宅を建てること。

とても1人の人間ではできません。形態的な違いはあれど、会社に代表されるような組織で可能となるものがほとんどです。ある会社への入社を決めた動機として、収入の安定や社会的地位の獲得、キャリアステップ、会社の事業への共鳴、自己実現など、人によって異なるのは当たり前です。しかしながら会社と雇用契約を締結したからには、会社が担っている社会的機能の継続維持に貢献することは契約上の義務となります。

会社に所属している限り、会社を動かすことが仕事

「誰を向いて仕事をしているのか」という問いかけについては、株主という機関も含めた会社総体にとっては顧客であり、「社会である」という回答となります。そのうえで、会社を構成する個々人が向くべき相手は、敢えて断言すると「会社内」に決まっています。お客様、社会は、口では何と言おうとも「個人」に期待しているのではありません。個人が所属している「会社」に何らかの期待をしているのです。もっと言えば、個人が、自分が所属する会社を「動かす」ことを期待しているのです。その状況で「うちの会社は内向きで」とか「個人的にはやりたいのですが」などと言っては、会社に対しても個人に対しても著しく信頼を低下させることになります。会社員の仕事の大半は内向きです。上司を動かす、財務を動かす、人事に働きかける、開発を提案する、やり方の改善を求める。そうして会社を動かすことに成功すれば、個人では一生かかっても成し遂げることができないような大きな力が動き、社会を変えることができるかも知れません。

モチベーションはどこへ行く

会社に属していることで得られるメリットは、個人では成し遂げられない偉業を達成できるかも知れないということだけではありません。また、収入が安定しているということだけでもありません。会社員であるうちには気がつかない恩恵も相当あります。例えば、フリーランスや個人事業主は大変な手間をかけて自分自身で何もかもやらなければならない納税や社会保険、伝票処理などを全部会社がやってくれます。多くの場合に健康診断や会社員という地位だけで家を借りるとき、住宅ローンを組むときに相当有利になります。結婚もしやすいかも知れません。子供が育って入学面接を受けるようになったとき会社員であるというだけで相当の下駄があります。昨今は人生のイベントにおいても、育児休暇、介護休暇といった制度で復帰が保障されます。また、自分が休んでも何とか業務は回ります。

こうした自分自身の人生を守ってくれる様々な仕組みも、会社に所属する誰かが真面目に業務を遂行してくれているからこそ実現できているのです。みんながみんな、お客様だけに100%向いていたら、誰も生活できなくなります。もちろん会社が果たすべき社会的機能も破綻します。当たり前ながら、会社は人の集まりです。よく揶揄されるように「歯車」なのかも知れません。しかし歯車は歯車の矜持を持って、大きな組織を動かしていきたいものです。

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