「第3回フレッシュホップフェスト2018 in 遠野」を終えて


 この夏に収穫したフレッシュな日本産ホップで造ったビールを解禁して楽しむイベント、「フレッシュホップフェスト2018 in 遠野」が10月20日に終わった。

 ここ遠野では今年で3回目となるイベント。昨年までは「遠野市産業まつり」の中で開催していたが今年は単独での開催となった。今回は東北の各ブルワリーの皆さんにもご協力いただき、10種類のフレッシュホップビールが遠野に集まった。当日は約250人ほどの来場者があり、ビールの飲み比べセットや、おつまみなどそれぞれに楽しんでいただいた。日本でもまだまだ知る人が少ないこのイベント。近年のクラフトビールの人気も重なって国内の主要都市では、徐々に賑わいをみせつつあるも、まだまだ知られていない。まさにこれから育てていかなければならないイベントである。

このイベントの趣旨と目的について

 まずは、今年とれたてのフレッシュホップで醸造したビールを解禁し、みんなで楽しむイベントであるということ。そして、ホップ生産者 、ビール醸造家 、飲食店、ビールファン(原料生産者から最後の飲み手)に至るまで、フレッシュホップビールに関わる人たちが繋がり、日本ならではのビアカルチャーを築いていくこと。さらに、ここ遠野では50年以上にわたり安心安全で良質なホップを生産いただいているホップ農家さまの存在を忘れてはならない。このイベントを通してホップ農家さまへの感謝の気持ちと、遠野ホップの素晴らしさを再認識し、日本産ホップを使ったビールの新たな価値の創造と魅力を国内外に発信していくこと。これが主な目的である。

今年は単独開催を実施。遠野に光を灯す新たな挑戦。

 先にも書いたが昨年までは「遠野市産業まつり(蔵の道ひろば)」の一部を借りて行っていた。これはある意味相乗効果を狙えるメリットもあるが、どれくらいの人が来てくれたのか把握ができないというデメリットもあった。また、蔵の道ひろばが駅から少々歩くということや、この時期の寒さも懸念されたため、どこか会場を借りて単独開催ができないかという議論がなされていた。やがて市内調査がはじまり、遠野駅からすぐの場所に会場として使えそうな絶好の施設があることがわかった。そして、今年はここでチャレンジしてみようということに決まったのだ。ただ、この施設は普段は自転車の保管などに使われていている場所で、普段はほぼ活用されていないもったいない場所。ここが利用できれば人数の把握はもとより、寒さや雨対策も可能となり一石二鳥。早速、実行委員による関係各所への交渉が始まった。

 見ての通りこの場所がビアホールになるとは想像しにくいだろう。実は、倉庫内を初めて見たとき、本当にこの場所を会場にできるのだろうかという思いがよぎっていた。まだ知名度が低いイベントだけに、我々にはこの夏の「遠野ホップ収穫祭」での実績(2日間で7500人の来場者:前年比25%UP)だけが支えであった。駅から近い絶好の場所だけに諦めたくない。不安と迷いがあったそんな時だった。実行委員のメンバーから「やってみようよ!」という声があがった。とても勇気づけられた。確かに、やってみないとわからない。やらないと何も変わらない。このメンバーの一言で不安が一気に消えた。それ以降は強い信念をもってみんなと前に進むことができたのは言うまでもない。

 会場設営はまず、この場所に100台近くある自転車を全て外に出すこと(これは本当に大変だった)から始まった。倉庫内の清掃をくまなく行い、220センチの大型テーブルセットの搬入にブースの設営と、最初から力のいる作業が続いたがみんなイヤな顔ひとつせず運んでくれた。いま思えば、おそらく実行委員のメンバーには想像できていたのだろう。この場所に人々が集まり、思い思いにクラフトビールを楽しむ様子が。早くその光景が見たいと言わんばかりに黙々と、そして情熱的に役割を果たしていった。保健所申請、電源の確保、テント張り、仮設トイレや案内看板の設置、ポスターチラシの作成と配布、集客(SNS、ツアー企画、観光客、鉄道からの誘導)など、ホップ収穫祭で培ったノウハウを存分に発揮し現場にあたっていた。

 そしてイベント当日。準備も万端に開場。遠野産のフレッシュホップを使ったビール達が注がれていく。ブルワリーごとに個性が違うクラフトビールを飲み比べながら、会話も弾み時間が流れていく。

そして、待ちに待った全員での「カンパ〜〜イ♪」
色とりどりのクラフトビールを手に会場がひとつになった瞬間だ!
昨日までここが自転車保管場所だったことなどすっかり忘れていた。

 ここを試験的に使用させてもらったおかげで、まちに眠っている資産の活用事例をつくることができた。そして、市民の多くの方が一様に言われていたのが「こんな場所があったんだ?」「いい場所見つけたね〜」であった。行政と民間の垣根を越えた相互理解とチーム力。チャレンジしないと見えない景色がまた共有できた。それが何よりも嬉しかった。そして、それを見た人たちが共感し希望を抱いてくれたことが最大の成果だったと思う。我々にとってはまさに一石三鳥の結果であった。

 いま遠野市では「ホップの里からビールの里へ」を共通のスローガンとして、新しいまちづくりに挑戦している。実行委員会もこのメンバーである。遠野の民間事業者、ホップ農家、遠野市職員、キリンビールの職員などを中心として構成されている。

そして最近はこのプロジェクトに関わりたいと全国から移住者やUターン者が増えてきている。そして、地元の関係者たちと一緒になって「ビールの里構想」の実現や、それに関連する業務などで様々な活動を行っている。

 下にある写真は初めての試みとなる、ホップ農家さんへの贈り物だ。遠野のホップ生産はこのまちの誇り。そのキャリアとプライドの象徴として「TONO HOPS」というバッジをTK(遠野×キリン)プロジェクトで制作しプレゼントした。胸に輝く金色のバッジはホップ農家の証。もらった農家さんは最初は驚いていたが、みな誇らしげな表情に変わっていったのが印象的だった。小さな事かもしれないが、もっともっと身近にホップやビールを感じてもらえたらと思っている。補足ではあるが、他にも醸造家しか付けれないブルワーバッジ(デザイン済み)も考えている。

来年の開催に向けて・・

 今年はある意味チャレンジの年だったが、来年は今回の結果をもとにまた一歩、二歩と前進できるだろう。この「フレッシュホップフェスト」という取り組みもまだまだ知名度が低いのが現状。しかし、この季節にしか飲めないという希少性と、日本産ホップを使ったビールというポテンシャルがある。さらに、ワインや日本酒のような自分好みのテイストが選べる楽しさや多様性がある。

 開催期間中、嬉しいコメントもいただいた。「こんなに味の違いがあるんだね。ちょっとハマりそう」「このイベントは1日じゃもったいないね」「また来年もぜひやってほしい」など。少しずつクラフトビールの価値や楽しさが認められてきているなぁと感じた。現在クラフトビールの国内シェアは1%程度。しかしながら近年ではアメリカのクラフトブームの影響もあり2014年頃から再び脚光を浴びはじめ、ブルワリー数は今年度、過去最高を更新している。かつての地ビールブームの反省を活かし、新たなクラフトビールブームを一過性のものにしない為にも、エリアを超えての情報共有や、品質を高め合う仕組みづくりなどしっかりしておくことが求められる。

 2014年から始まったこの「フレッシュホップフェスト」は、日本産ホップの価値を高めるだけでなく、クラフトビールの奥深さや素晴らしさを知ってもらう為に、来年以降も参加し続けていく。そしてクラフトビール市場が賑やかになってきた時に、このページをそっと覗いてみたいと思う。

最後に・・

ここまで舞台裏の話を書かせてもらったが、遠野市、KIRINをはじめ、この実行委員会メンバーの懐の深さ、実行力にあらためて敬意を表したいと思う。この先も色々チャレンジする度に様々な変化や困難が待ち受けているだろう。「ビールの里構想」を力強く前に進めるために、今年は実行委員の中から新しく農業生産法人「BEER EXPERIENCE 株式会社」が設立された。新品種の育成やホップの新農法に取り組むという。さらに「ビールの里構想」を実現化していくなかで、全体の取りまとめや企画運営管理業務を担っていたセクションも「株式会社BrewGood」として法人化された。

 いま遠野では、「ホップの里からビールの里へ」をスローガンに本気の取り組みが始まっている。人口約2万7千人のまちで起こっている事を記録として書き綴ったが、実はこの話は我々だけの話ではないということも同時にお伝えしておきたい。つまりこの「ビールの里構想」に興味をもった方をどんどん増やしていきたいのだ。この記事を読んで、少しでも気持ちが動いたら連絡していただけると嬉しい。
(連絡先:info@brewingtono.jp)

 来年はどんな内容にしようか、どんな会場にしようか、早くも次の話で盛り上がっている。皆さんの笑顔が見れることを楽しみに、これからまた1年頑張れそうだ。来年もフレッシュホップフェストで、

LET'S HOPPING !!!!! カンパイ!!!



<書いた人>
上西尚宏(Naohiro Jonishi)1972年生まれ  北海道出身
美大卒業後、フジテレビおよびデザイン事務所にて、CGデザインをはじめとした数々のクリエイティブに携わる。2002年バンダイネットワークス(現バンダイナムコ)に入社。モバイルコンテンツの企画開発および運用業務を経験し、その後独立。2006年 渋谷にヘアサロンをオープンさせ、店舗コーディネート、集客、マネジメント業務を行う。2018年秋、これまでの経験を地方に還元できる仕事がしたいと一念発起。岩手県遠野市に移住し、そこで進められていた「ビールの里プロジェクト」にメンバーとして参加。現在、プロデュースおよび制作業務に携わり、地の利を生かした新たなビアカルチャーの創出に力を注いでいる。



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