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【デュエプレ】絶頂神話 カツムゲン論考


うーん。

正直、デザインとしてはあまり魅力を感じないカードである。ストーリーや、イラスト、ボイスなど、個別のコンテンツとしてはかなりいいのだが、デュエマあるいはデュエプレの秀逸デザインとしてよくみられる、上記のコンテンツの総合的な連関はあらわれていない。また、デュエプレにおいては、もともと弱かったカードを、文脈を逸脱しない形で強化し、魅力的なカードとしてリメイクする優れたデザインが多くみられる。
それらはストーリー上では重要な役割を果たすのにもかかわらず、強さが伴っていなかったり、かみ合わなかったりして、あるひとつの側面だけが評価されがちだった。このようなアンバランスさを解消するようなデュエプレの能力変更を、ここでは「優れたデザイン」と呼ぶことにする。デュエプレにおける「PSドロン・ゴー」は、「UKパンク」をはじめとするさまざまなエグザイル・クリーチャーをより魅力的にする、「優れたデザイン」の最たる例だろう。
「カツムゲン」は、部分的魅力はあるものの、全体性が欠落しているように感じ、「優れたデザイン」とはいい難い。すなわち、単純で卑近な言い方をすれば「ストーリーのわりに弱い」ということだが、私のいいたい「カツムゲン」の惜しいところはそこではない(というか、イズモと和解したという背景を鑑みれば、「弱さ」はさしたる問題ではない、ともいえる)。それについてはまた後で触れることにして、まずはいくつか、「優れたデザイン」事例を確認する。

優れたデザインの例


「サバイバーの王」シータ・トゥレイト

 筆者は、このカードが好きすぎる。デザインについては、以下の記事に詳しく書かれているが、いうまでもなく「優れたデザイン」である。https://note.com/bright_bear726/n/na6da3616c922

「寄生生物 サバイバー」のイメージを、「あらゆるクリーチャーから進化する、シールド・トリガー」として表現している(TCGから、進化条件が変化している)上、効果としてそこそこ強力なもののため、格落ちすることもない。ストーリー上で重要な役割だったが著しく弱かったカードを、ストーリー上の文脈から脱出させることなく極めて繊細に強化した「優れたデザイン」である。
「カツムゲン」も、元の性質としては「シータ・トゥレイト」と類似している。しかし、デュエプレにおいても能力の微妙なかみ合わなさは解消されていない。


 「カツムゲン」と向き合う

先ほどから、カツムゲンをこきおろしているように見えるかもしれない。しかし、個人的感情に準ずればそうではない。むしろ、かなり好きな部類である。
まず、「カツムゲン」のストーリー上の魅力と、能力の連関を確認しよう。
エピソード3の物語最終盤、まさしく「クライマックス」を飾る「カツムゲン」は、デュエプレ(デュエマ)ストーリーで、倒した「G・イズモ」と和解する。秩序、停滞を希求する教団に対する抵抗勢力として激しい闘いと結びつく形で位置づけられていた「アウトレイジ」が、「神話」・「OMG」となって、敵視していた相手と手を取り合うのだ。じつに簡単なことだ。オラクル、ヨミ、Gイズモにも、どこかに「想い」があった。そういう意味でお前はワイと同じや。そういう気づきがもたらした帰着である。実際のカードで確認しよう。(ストーリーはおおすじでは同じだが、デュエプレには「黒幕」とか「カツマスター」の段階が存在しないことに注意。デュエプレでは「カツキング」であるはず)



デュエプレでも同じフレーバーテキストだが、デュエプレではなぜイズモのリンクが断ち切られたのかよくわからない。このへんもカツムゲンと関わるので後述。


これ、なんで「カツキング」なんだろう。
デュエプレと同じ
 



たしかTCGの別カードからの流用





さて、これがいかにしてデザインとして反映されているか。

デュエプレと同じだが、かっこいいのでこちらを


まずは、オラクルジュエル(オメガ)とレイジクリスタル(マックス)を手にしたイズモを乗り越える、カツキング由来の無限パワーがある。
そして二つめ、おそらくマックスのシールド化能力およびオメガのアンタップブロッカーに対抗できるという意味で、シールドの増減に反応するバトル効果。この二つは連動していて、イズモのシールド追加に反応してバトル、パワー無限でバトルに勝つ、みたいなことができる。
三つめは、カツムゲンのみがもつ、「クライマックス・ドロン・ゴー」である。かっこいいキーワード能力ながら、解釈は非常に難しい。ふつうのPSドロン・ゴーは、「墓地から出る」効果だが、こちらは、「手札から出る」効果である点に注目すべきだろうか。
オラクルの信奉する神であるところの「ゼニス」のもつ、エターナル・「オメガ」が「手札に戻る」効果であることは、ゲームプレイ上物理的に「頂点」にある「手札」に単なる除去耐性にとどまらない物語性を付与していた。つまり、手札からの踏み倒しは、時として「神性」の表現である(このあたりは、TCGのクロニクルデッキ「ゼニス頂神殿」にて語られている)。

天門の先は、ゲーム的には手札。エターナルオメガで戻る先、頂点である。


ゼニスでなければ、「天に昇る」


先ほどのフレーバー「そこに集う」への解答は、「集え!」で、やはり手札に加えている。「そこ」とは「手札」であり、「頂神殿」である。

デュエプレゴッドの演出も、ほとんどの場合雲居からの落下として描かれる。まさに上から下に降りる「降臨」の有様であろう。
「オメガ」のアウトレイジであるカツムゲンの「クライマックス・ドロン・ゴー」は、以上で述べた「オメガ」の「神話」を「アウトレイジ」の「ドロン・ゴー」と接続し、まさに物語の帰着として描いている。そう考えれば、「絶頂神話」の名は「クライマックス」と読むにふさわしい。「マックス」でありながら、「オメガ」の神性を備えた、極めて美しいネーミングである。オメガとマックスを手にしたイズモの対として、カツムゲンはすべての要素を過不足なく保持している。


とはいえ、しかし(普段ならこのあたりで終わらせる)。

うーーん。


一方で、


カツムゲンのデザインには、問題点がいくつかある。

第一に、三体でリンクしたイズモは、いくら無限パワーでぶつかろうと「バトルゾーンを離れない」。また、プレイヤーを攻撃し続けて離れないイズモに勝っても、なんにもならないし、スピードアタッカーもない。三体リンクしてないイズモには勝てるが、ストーリーとは齟齬が生じる。リンクする前にカツムゲンが殴り倒して「勘弁しといたるで」ではないはず。デュエプレでは、この点がかなりぼかされていて、イズモが「リンクを外された」という状況すら再現不可能なのにもかかわらず、フレーバーには記載があるため、腑に落ちない感じがある。

この前の状況記述がデュエプレには不足している

結局スピードアタッカーがないから、二体リンクした時に出しても三体リンクされてしまうしね。
第二に、カツキングの∞パワーアタッカーにくらべて、ゴッドのみパワー無限は見劣りする。というよりも、順当に強い、「優れたデザイン」のデュエプレカツキングが、カツムゲンのデザインの幅を狭めてしまっている。

スピードアタッカーがないとか、出しても勝てないとか思うのは、カツキングが「あらゆるクリーチャーにバトルで勝てる、アンタップキラーのスピードアタッカー」であるからだ。カツキングの強化版(カツムゲン)を作るとき、この方向性を維持しながらカツキングよりすごい感じにする、というのはあまりにも難しい。つまり、カツムゲンはカツキングに締め付けられているとすらいえる。

第三に、あれほど素晴らしい「クライマックス・ドロン・ゴー」のゲーム上の手応えはイマイチだ。やはりカツキングがちらついてしまう。難しいものだ。

全体として、「Gイズモ」ありきのデザインなのがかなり枷になっている。イズモはカツムゲンがいなくても成立しているカードデザインなのに対して、「そうなってしまった」イズモへの「抵抗」(アウトレイジ全体に通底しているテーマである)のデザインであるカツムゲンは、単体では薄味に感じてしまうのだ。「ライジング・NEX」の、「ゴッドスレイヤー」程度であれば過不足は感じないだろうが、それが全体にわたっていてかつ単体で完成された「カツキング」がすでにいる状態ではやはり「Gイズモ」ほどの格を感じない。

TCGでのカツムゲン

先ほど、「「Gイズモ」をどかせない」と書いた。だが実はこれはデュエプレに限ったことで、TCGでのカツムゲンは、ほぼおなじデザインながら、あるカードの存在によって物語として成立するようになっている。


ゴッドのリンクを外すカツドン


おどろくテンメンジャン


やはり、「二つの宝石をその身にやどした」ようだ


カツドンがリンクを外す能力を持つことで、カツムゲンにドロン・ゴーしてイズモに勝てるのだ。というか、カツムゲン イズモ の二項対立はこのカツドンありきで成立しているといっていい。カツドンによってリンクを外されて、結果としてオメガ マックスの秘宝を奪い返し、カツムゲンへとなったのであるから、デュエプレでこのあたりが割愛されて表現されていなくては「優れたデザイン」となりえないのである。
なにがいいたいかといえば、デュエプレで「カツムゲン」を実装するにあたっては、じつは「イズモ」だけではなく「カツドンDASH」ありきでデザインせねばならないのである。そして「カツドン」もイズモの耐性依存のデザインであるから、カツムゲンを「優れたデザイン」としてリメイクするにはあまりにも障壁が多すぎると感じているわけだ。
ざっとならべても以下のようになる。

カツムゲンの抱える障壁


①カツキングのグッドスタッフ性をデザイン上乗り越えたいが、難しい
②カツドンDASHとセットにしたいが、「クライマックス・ドロン・ゴー」はカツドンを要求するものではなく、かみ合わない。かといって「クライマックス・ドロン・ゴー」を消せば物語性(絶頂神話)が担保できない
③デュエプレの「中央ゴッドリンク」はリンクを外すみたいな動作とかみ合わない
④変に能力を追加するとイズモとの二項対立がぶれる
⑤イズモの能力をカツムゲンに忖度するしかないが、イズモを変更するとカードパワーが落ちるため、まあ無理筋である。むしろイズモは強化したかったはずだから

袋小路、といってよいのではないか? この手のカードのデザインの全体性を担保したまま強くするなど、極めて難しいだろう。アウトレイジでありながら、あまりにも周辺のカードに束縛されてしまっている。ならば別のすごいカードを生み出す方に舵を切るほうがいい。あきらめてVRとしてそのまま実装する、以上の案が私には浮かばない。あるいは、思い切り「神話」文脈に寄せて、ゼニスやUKパンクのような「クライマックス・ドロン・ゴーまたは召喚によって出た時」の能力をつける、とかか。やはり微妙だろうな。その先が浮かばない。

そして、カツムゲンの先に


これが生み出された。

参りました

これはすごすぎる。よくわからないカードを(つまりストーリー上の制約があまりないカードを)再解釈するほうがやりやすいのかもしれない。

締め方を見失ったため、最後にアレを。

正義は絶対、カツキング!

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