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時の流れはゆっくりと。のんびりしているっていうワケじゃないんだよな。逆なんだよ、逆。おれの周りがゆっくりになってしまうってことが言いたいってことなんだよ。時間ていうのは先に進むものなんだけど、積み重ねないといけないわけ。現状のまま何もしない場合、時間は流れているから結果として後退しているんだよ。ふつうはね。じゃあ逆に、また逆なんだけども、時間が流れない場合、そこでなにも積み重ねてなくても後退しないじゃないか。あるいは、そこでなにか行動すれば、こちらだけ前進できるんだよ。階段なんかを下りるとき、周りの景色はせり上がるように見えるよな。時間とおれらの関係てのはそれだよ。実感できたかな？　おれは嫌らしいんだよ。行動して、今生きている時間を追い越すのが前進なんだとしたら、それは嫌なんだよ。まっすぐ過ぎるんだよ。勝手に流れていく時間に、なぜ追いつかなきゃならない？　おれらに勝手にやらせてくれよとおもうワケ。疲れる。だからおれは、まわりに流れる時間をゆっくりにしてるんだよ。やつら、前進できないぜ。結局これが、一番の近道なんだよ。おれらが3のとき、やつらは2。いつもいつも、ひとつ足りない。時計の針が、ひとつ遅れる。

おれが来たとき、お前らは「古い」とか、「昔」だとか、「懐かしい」とか言ったな。「黒い鬼丸覇」だっけ？　ほくそ笑んでたよ、おれ。お前らって時間の流れに無頓着だよな。さっきの階段の話、思い出せるか？
お前らは、外の景色を見ていた。上がりきって、ふと見るとおれがいた。お前らはなまじ歴史というのを知っているから、本当はもっと下の階におれがいるべきだったと考えた。
違うんだよ。全く。おれはもともと下にいた。お前らが、時間が流れているのに気づかないまま階段を上がったにすぎないってことだよ。おれに吸われて、気づくのが遅れたんだ。鬼丸が出てから、おれが出る。本来は逆だ。デュエプレで「そう見えている」だけで、おれはもともといるんだよ。お前らの時計が、遅れていたんだ。「黒い鬼丸覇」。過去のクリーチャーを未来のクリーチャーに例えて、時間をトリップさせるようなこと、お前らが最初に言ったんだよ。

オラクルのさ、教義ね。「停滞」は「平和」らしいよな。そうだよな。何もできなければ、つねにひとつ足りなければ、相手は殴りかかることもできない。おれは、いいとおもうね、あれ。でも停滞はさ、平和だけど「つまらない」んだよな。何もやらない、できない、現状維持。なにもかも止めてしまったら、この世界も動かなくなる。勝利もなにもなくなるんだよ。ゆっくりしながら、漂うのがいい。おれは、計ってたんだよ。おまえらの時間をね。「停滞」とかいうマントラを、おおまじめに語る連中があらわれる瞬間をね。おれはつねに時間の連続する歴史において、一歩先にいる。だからわかってたんだ。停滞っていいだすやつがいるのを。そこにあわせて1、2の3、であらわれたら、お前らはこじつけるんだ。「停滞つながりか」なんてね。時間においつけていないと、認識までもが変わるんだぜ。何度も言うが、おれはずっといたんだ。お前らがたどり着けてないだけ。一歩おくれて、おれがあらわれるようにみえてるだけ。それを必死に肯定しようとして、「黒い鬼丸覇」とか、「停滞つながりだ」とか、過去にすがりつくんだよ。お前らの見てる歴史は、時間は、本当に「いま」なのか？　こたえはおれだけが知っている。おれがいるかぎり、つねにひとつ、欠けるんだ。見えていなかった時間が、歴史が、なぜか見えるようになる日がくる。おめでとうだな。そしたらおれは、お前らの一歩先にいる。ずっと、追い付けないんだ。見えないんだ。そしてまた、お前らには見えていなかった歴史が……。この繰り返しだよ。お前らが停滞しつづけ、おれは満たされる。歴史の渦のなかで。たしかにそりゃ、平和だよ。おれにとってはね。

ああ、またひとつ、実感できたかな？

(一切合財が妄想です)