見出し画像

サービスチャージ VS チップ 〜法律が最後の砦〜

どうも、しがないラーメン屋店員です。

今回のテーマは、Service Charge(サービスチャージ)とTip(チップ)。
見出しの画像はFree pickのpikisuperstarさんよりお借りしています。

サービスチャージは、サービスに対して顧客の意思に関わらず既に加えられている料金のことです。サービスチャージの割合や支払わなくてはならないかどうかは、サービス提供側に委ねられています。料金が任意かつサービスチャージを支払う義務がないことが明確に示されている場合は、顧客はサービス料を支払わないように請求することができます。私のバイト先では、メニューに'a discretionary service charge of 12.5% will be added to your bill'という形で、12.5%の任意のサービスチャージをお会計額に含めています。
任意とはいえ、悪質なサービス等余程の理由がない限り、サービスチャージを引くようにお願いすることは、マナー上好ましくないというのが一般的な見方です。私は一回だけサービスチャージを引くように言われたことがあります。'ごめんね。あなたのサービスは良かったけど、あなたの同僚がすごく失礼だったんだよ。'との理由付きでした(わざわざ説明してくれることが、サービスチャージを抜くように頼む=失礼という認識の現れだと思います)。
そのために、多くの飲食店では、同様に任意のサービスチャージを事前に会計に含める形式を採用しています。どうせ支払われるのなら支払い義務を発生させればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうすると雇用主がその収益分の国民保険料を払う責任を負わなくてはいけません。

チップは、海外旅行に行くときに、一度は聞いたことのある言葉かと思います。チップとは、サービスに対して行われる、基本料金に加えた任意の支払いのことです。チップに関するマナーは国や地域によって異なりますが、イギリスのレストラン業界では、チップを支払う場合には会計額に10%-15%程度上乗せするのが一般的です。私のバイト先ではカード支払いの際に、0%-20%の幅でチップを選択してもらう画面が表示されます。肌感覚で10組に3組程度のお客さんが10%-15%程度のチップを上乗せしてくれます。しかし、多くのお客さんはサービスチャージが含まれているかどうかを確認し、含まれているので支払わないことを選択します。これは、サービスチャージとチップが同様の目的で徴収され、使用されるとの認識が浸透しているためです。

ここで、私は声を大にして言いたいです。
サービスチャージとチップは、全くの別物です

その最も重要な違いは、サービスチャージとチップが支払われた後、誰の懐にいくかどうかです。
サービスチャージは本来、サービスを提供するスタッフ、すなわちサーバーの貢献に対して支払われるものです。しかし、私のバイト先では、サービスチャージはスタッフには全く支払われません。インフレーションの影響等もあり経営が厳しいために、経営者が維持費をまかなうために使用しているとのことです。

一方で、チップはスタッフ全員に分配され、支払われます。従業員向けのハンドブックにもその旨が記載されています。その額は、平均して1ヶ月でわずか£20ほど。時給2時間分にも満たないレベルです。もしもサービスチャージが支払われていたなら、売り上げの1/9がスタッフの間で分配されるのですから、相当な額になるでしょう。1日の売り上げを(経験則で)£3000と設定して簡単に試算したところ、スタッフ1人当たり1日で£20支払われるということになります。これはスタッフにとっては日々の生活に関する大きな問題です。

現時点で、イギリスではサービスチャージを従業員に支払わないことは違法ではありません。しかし、現在連邦議会では雇用主が従業員からサービスチャージ及びチップを取り上げることを禁止する法案'Employment (Allocation of Tips) Bill'の制定が進行しています。執筆した2023年4月21日時点では、下院での議案提示を終え、上院での3度目の議案提示が行われています。

実は、政府は以前からこの問題に取り組んできました。チップやサービスチャージに関する公式の意見募集は2016年6月に終了しています。7年という時を経て、ようやく法案という形で実現されようとしています。イギリスの労働組合であるUnite the Union(ユナイト労働組合)は、協議が進まなかった5年間で、レストランの従業員はそれぞれ約£10,000の損失を被ったと見積もっています。

立場の弱い労働者にとっては、こういった局面で法律が最後の砦になります。早く法案が可決されて、従業員に公平にサービスチャージが支払われて欲しいと強く思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?