ロック1300GSは本当に凄いのか?(その5)ハンドリング編


 いろいろな試乗記事に判で押したよう様に大型バイクとは思えない軽快な走りだ!みたいなコメントが並びます。その理由として出てくる理由は
・軽量化・マスの集中・ボクサーエンジンならではの低重心ってとこでしょう。ボクサーエンジンはBMWの専売特許としてあとはどの新車の試乗記事にも登場する文言ですね。ではもっと具体的に言って何が凄く良くなっているのか?
 先ず皆さんの勘違いが多いのがボクサーエンジンならではの低重心。実は初期の空冷時代のボクサーエンジン搭載のBMWはホントにウルトラ低重心でした。がモデルチェンジする毎に少しづつエンジン搭載位置は上がってきています。4輪では重心が低い程ハンドリングが優れている!は無条件で正しいのですが、2輪はそう単純ではありません。ここで理由を説明するとそれだけで膨大な量になるのでこれはまた機会があれば。
 次に軽量化も確かに頑張ったのですが、車高調整やアクティブクルーズ等々の新装備でチャラになって総重量はあまり変わりません。マスの集中はミッションの配置を見直したり確かに進化しています。が他のメーカーの新型車もやってる事でGSだけが凄い訳でもありません。
 じゃあ何?って事ですが、ズバリ!ハンドルを切った時の遊びの少なさ、路面からのフィードバック、4輪で言うところのニュートラル付近のハンドルを切った時のフィーリングが物凄く良くなっています。バイクは乗っていてコーナーを曲がる時は、ハンドルを切ったって事を意外に意識して無くて、バイクを倒し込むと同時にハンドルは勝手に切れている?って言う感覚だと思います。ハンドルを切った具体的な感覚があるのは極低速でゆっくり進む様なシチュエーション、そう一本橋を教習所で渡った時の様な状況です。R1300GSは信号停止で完全停止の直前まで足を着かないでもコントロールが容易です。これは自分で意識して無いけどコーナーで自分の思った通りの細かいラインどりが可能になっているって事なのです。R1300GSが教習車になれば一本橋は楽勝でしょう😆
これは主にフロントサスペンション、テレレバーエボの進化の賜物だと思います。バイクのフロントサスペンションはほとんどテレスコピックを採用しています。ブレーキング時のノーズダイブなど欠点も有るのになぜか?それはフロントサスペンションの路面追従性を各バイクメーカーは最優先して設計しているからだと思います。バイクは路面の凹凸等でフロントサスペンションが路面から離れてグリップを失うといきなり転倒のリスクが有ります。ここが4輪とは決定的に違います。逆に4輪では体でマシンを倒し込むことは出来ないので、ハンドルを切る操作がコーナリングで物凄く重要で、どの試乗記事を見ても必ずステアリングのフィーリングがどうだこうだ…ってコメントが並びます。BMWモトラッドはフロントサスペンションに4輪で言うところのロアアームに似たリンク機構を使ってハンドルを切ることと路面からのショック吸収を分離して機能させています。他メーカーがユーザーが感じ難いハンドルのフィーリング向上を後回しにしてきた中で、そこに挑戦し続けてR1300GSでほぼほぼ完成形に到達したと感じます。ブレーキングの姿勢変化も圧倒的に抑えられて、これは他車の1歩も2歩も先をいく画期的なところで、フロントタイヤが17インチならオンロードで軽快!19インチはオンロードってステレオタイプなコメントはもう意味を持ちません。
 エボテレレバーを実車でいろいろ観察すると、外見上ピボット剛性が上がっていたりジオメトリーの修正をやってる事は分かるのですが、何がどのステアリングフィールに結び付いているのかは詳細な因果関係は実際の設計者から技術説明を聞かないと分かりません。いつかミュンヘンに行ってFIZのエンジニアに直接聞いてみたいものです。

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