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Skyrim MODリストレビュー; Nolvus Ascension




初めに

これは、SkyrimのMODリストであるNolvus Ascensionのレビューになります。
MODと聞くときかんしゃトーマスとかニコラス・ケイジが思い浮かぶ方も多いと思います。ですが、それだけではありません。2011年の発売から、約12年にわたって煮詰め続けられたSkyrimのMODシーン。そのディープさの一端をご紹介できればと思っております。

MODリストとはなにか?

その名の通り、MODの詰め合わせです。製作者が一定のコンセプトに基づいてキュレートしたMODのリスト。外部ツールを使用してMODの掲載サイトから一括ダウンロードできるものです。膨大な時間がかかるMOD環境の構築が「ワンクリック」で完成するというのが、良く謳われる文句であります。

Nolvus Ascension

このMODリストのコンセプト

2000個以上のMODで構成され、300GBの容量を消費する重量級MODリスト。ビジュアル面の大幅な強化と、ソウルズライクな戦闘が大きな売りとなっております。
Skyrimの画面が現世代のコンソールレベルまで強化されて、そこにソウルズの戦闘が乗っかれば面白くなるはず。おそらく、そういう意図で製作されています。バニラSkyrimのゲームプレイループ自体には大幅に手は入っておりません。バニラに足し算をするタイプのMODリストです。

導入まで

Q: ワンクリックなのか?
A: No.
時間がかかります。私は6時間かかりました。
2000以上もMODがリストされていれば、当然リンク切れのものもあります。そして、外部ツールの仕様として、リンク切れがあればその都度ダウンロードがストップします。ネットの海から目的のファイルを探し当てねば、ダウンロードは再開しません。目を離して放置、というわけにはいかないのがつらいところ。
足りないファイルがあってもダウンロード自体は継続して、最後に足りないファイルを教えてくれる、そういう仕様ならまだ拘束時間は短くなるのですが。

起動時間

6分かかります。SSDです。
最適化されていない膨大な数の重量級アセットの暴力。初代プレイステーションに先祖返りしております。これはこれで懐かしい感覚。ゲームの前に瞑想ができるとでも思っておきましょう。

安定性

極めて良し。想像するだに気の遠くなる時間をかけてバグ取りがされております。クラッシュするのは、体感で1時間半に1回ほどでしょうか。Bethesdaのゲームはクラッシュするもの、MODをいれればなおさらですので、これは驚異的です。

パフォーマンス

Ryzen 5 3500, メモリ 16GB, RTX3060の環境で、平均40fpsです。
重い。
これの原因は、ENBと呼ばれるものでございます。シェーダーをハックするツールです。ゲームのアセットから画像が生成される経路に介入して、出力を変えてしまうものでございます。最終的な画面を大きく変更できるメリットの反面、プログラムの根本に介入するので、とてもマシンリソースを食うデメリットがあると、私は理解しています。

グラフィックス

美しいです、本当に。
手を入れていないSkyrimと比べると、笑えるくらい別物となっています。Cyberpunk 2077と並べて、同世代のゲームだと嘘をついても、まあ通じるぐらいの美しさです。
12年かけて積み重ねられたアセットの山は伊達ではないということでしょう。テクスチャ、メッシュにシェーダーと、ありとあらゆるところに手が入っております。
一見の価値はあります。

ゲームプレイ

プレイヤーキャラの動作には、一瞬、感動できます。
ぬるりと動くロックオンシステム。攻撃アニメーションは様になっており、おまけに4つのスタンスに切り替えられるという贅沢さ。武器には本物の接触判定まで実装されています。
バニラの1人称視点の戦闘が、完全に3人称視点のソウルズライクに作り替えられている。よくぞここまで練り上げた。すさまじい労力の集積です。
しかし、それで浮き彫りになるのは、ダークソウルやエルデンリングとの越えられない、悲しいまでの差です。
部分の総和が全体を構成してない。

何が違うのか?

ディレクターがいない。
ソウルズの面白さを生み出しているものは、偏執的なまでのゲーム全体を通した調整です。敵の配置、マップデザイン、敵のモーション、数値など、すべてが監督されて、調整されて、あの面白さになっている。つまり、首尾一貫したデザインがあるということです。
MODの制作というのは、当然ですが、個々人がそれぞれの意図をもって、勝手に行うものです。首尾一貫した哲学などというものとは無縁のもの。それを寄せ集めても、やはりそこには方向性が生まれないのです。
個々に面白いパーツはあっても、何か方向性のある全体を構成していない。どう受け取っていいのかわからない。
……なんだかこれは、Starfieldの感想に似てきましたね。あのゲームの抱える構造上の欠陥も同種のものかもしれません。やはり、MOD遊びというのは、ゲーム体験に対して洞察を与えてくれます。

まとめ

厳しいことを書いてしまいましたが、だめなMODリストとかそういうことでは全くありません。(そもそも有志が作っているMODリストにシビアな批評をするのは違うと思っています。)
「Skyrimのもともとのゲーム体験は好きで、ただ、戦闘には飽きてしまった」とか、「単純に美しいSkyrimをみたい」といった方には、すごくお勧めできます。ですが、ゲームを通じて一貫した哲学のようなものを体験したい方、大切にされている方には向いていないということです。
ソウルズのシステムをSkyrimに乗せるアプローチはここが限界のような気がしますね。MOD制作の構造上、本家のアクション体験にはおそらく永遠に到達することがないでしょう。
ただ、それでもMOD製作者たちは手を止めることはないとも思っています。見果てぬ夢、完成形に向かって走り続けるのが、MODというものなのかもしれません。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
実は、MODリストには違うアプローチのものも存在します。乗っけるのではなくて、数字を詰めて理想に近づけていくもの。
そういったものも後々ご紹介できればと思っております。

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