割れる/塩入冬湖

飛行機雲超えてどこへいく
か弱い幸せ束ねて
あなたが目の前にいるうちは
死んでしまう事が恐ろしいのさ

とっておきの癇癪と困惑
出来合いのニュースを速報へ
暴落銃弾 革命の表裏
朝食に一つも変わりはない

片方が割れてちぐはぐのカップ
新しいものを買いに行こう
来週の天気はずっと悪いと
そんな会話が祈りだった

偶発を運命だっていう
プロローグ立てて見世物にしよう
そんな事ではない暮らしがいい
簡単な暮らしを思っていたい

飛行機雲越えてどこへいく
持て余すものの群を掻いて
嫌気がさすほど平凡な
いのちに見惚れていたんだ

哲学のない不時着の会話習慣になった
徒党の記号
血液がかようせいで怖い
あなたがいなくなることが

たったひと匙あなたのにおいを
夏の鞄の底に見つけて
ああ会いたいななんて思うことが
精一杯のわたしの愛

造形の夕飯 剥製の頷き
いつかくるだろう物騒な夜が
真っ暗な中でサイレンの中で
温度と呼吸を願っている

飛行機雲超えてどこへいく
か弱い幸せ束ねて
あなたが目の前にいるうちは
死んでしまう事が恐ろしいのさ

飛行機雲超えてどこへいく
割れて空を一人さして
あなたがめのまえにいるだから
間違えることが恐ろしかった

飛行機雲超えてどこへ
か弱い幸せ束ねて

あなたがめのまえにいるだから
生きていくことを迷わないのさ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?