見出し画像

青森ワッツについて思うこと

2013年10月5日、八戸市東体育館。青森ワッツのbjリーグ(当時)デビュー戦となる岩手ビッグブルズとのホームゲーム。そこの二階席に自分は居た。

2010年、隣県の秋田県に秋田ノーザンハピネッツというバスケクラブが誕生し、bjリーグに参戦した。
元々スポーツ観戦が好きなこと、能代工業高校の影響もあり秋田=バスケのイメージが強かったことも手伝い興味を持った自分は、そこから年数回の割合ではあるが秋田に通い、泊まっては週末の二試合を観戦するようになった(秋田通いは割合こそ減ったものの現在も継続中)。
現在は青森県議会議員になっている北向由樹、アルバルク東京のアシスタントコーチになっている山口祐希、京都ハンナリーズのアシスタントコーチになっているアンソニー・ケント、当時高卒ルーキーだった澤口誠を初めて見たのもこのクラブ。
そして同じ東北勢ということで対戦相手として見ていた仙台89ERSの高岡大輔と下山大地…この面子がのちに青森ワッツの初期メンバーとして集結する。
ワクワクしないわけがない…そう感じた自分はチケットの販売開始日、何故か旅行で滞在中だった帯広のコンビニでチケットを買い、現在は年に何度通ってるかわからないほど行っている八戸に十数年ぶりに足を踏み入れた。

未知数のチームのデビュー戦。
結果より過程を楽しもう…そう思ってた自分の考えは、いい意味でぶち壊された。

68-53…まさかの白星発進


翌日の東奥日報では一面トップを飾るほどの出来事…
翌日の試合は先輩の意地とプライドをむき出しにしてきた岩手にボコボコにされた。文字通りの完敗…でも、そんなのはどうでもよかった。このチームは何かやってくれる…そういう期待を持たせてくれるには十分な週末だった。
12月にはこのシーズンを制することになる琉球ゴールデンキングスをも食った。
秋田や仙台、信州ブレイブウォリアーズや群馬クレインサンダーズや横浜ビー・コルセアーズ…現在はB1でバリバリに活躍してるクラブを相手に一歩も引かず、勝ち越して初年度を終えた。


あれから10年とちょっと…
NBL・NBDLとbjリーグに分かれていた日本バスケも統合されてB.LEAGUEとなった。
クラブ数は激増。3回層制になり、青森ワッツはB.LEAGUE初年度から2部リーグとなるB2に所属し続けている。
華やかさを増し、チケット価格が高騰しながらも観客数が増えていったB1勢。
B2、B3からもB1への野心を隠すことなく上を目指すクラブが出てきて、他のクラブも刺激を受けている。
日本のバスケ界は10年前から比べ物にならないくらい劇的に変わった。

んで、青森ワッツはどう…?
何か変わった………?

当時と変わったことってなんだろう…?
・選手や現場スタッフの面子(←当たり前だ)
・MCが変わった(シャバ駄馬男さん→小倉勝茂さん)
・胸スポンサーが変わった(辻・本郷税理士法人→青森銀行→INFLUX)
・筆頭株主と経営陣が変わった
・チケット価格

…あと何かあったっけ?
それくらい変わったものは少ないと感じている。B.LEAGUEがB革新の名の下に、更に変わろうとしてるその最中でも…

ちなみに自分は初年度のシャバさんのMCも熱さを感じて好きでしたし、2年目から現在まで続いている小倉さんの安定したMCも好きです。なので、MCに関してはポジティブな印象しかないです。

問題なのはクラブの中身…

bjリーグ時代から長く経営は下山保則さんがやってきた。

青森県は一度bjリーグ参戦を断念している過去がある。当時はサッカーもJリーグ入りを目指すクラブがあったとはいえ程遠い存在(のちにヴァンラーレ八戸がJ3リーグに参入することになるが、2019年まで待つことに)。
やっぱり青森にプロスポーツ参入は無理なのか…そう思っていたところにどこからともなく下山さんが現れ、あっという間に青森スポーツクリエイションを立ち上げ、青森ワッツとしてbjリーグに参戦した。
めちゃくちゃ失礼な書き方をしてしまったのだが、bjリーグ参戦断念から1年でこの動き…水面下では色々と動いていたんだろうけど、当時は本当にこんな感じの、文字通り電光石火の参入劇に見えていた。

銀行の支店長をやっていたという経歴の持ち主。リーグ統合の際にはタスクフォースチェアマンからB.LEAGUEチェアマンになった川淵三郎さんに反発するという一面、青森県…特に津軽の「じょっぱり(=強情張り)」の気質もある。
それだけに経営は堅調な感じで、それがbjリーグからB.LEAGUEに変わって最近まで良くも悪くも変わらない感じがあった(ある意味青森らしいというか…)。
ただ、それが他のクラブに比べて停滞してるなと感じていたのも事実で、故に物足りなさも感じていた(今となっては無い袖は振れないってだけの話なのだろうが…)。

件の企業が経営権を握ったのは去年の夏。
B2で優勝する、B1に行く。威勢の良い言葉が聞かれるようになったのもこのあたりな気がする。
ただ、どうやって…?ってのは感じていた。
青森市の中央に建設中のアリーナ体育館はB2仕様でB1に行くには収容人数が足りないとも言われていた。
予算規模もちょっと触れた感じでは足りないよなあというイメージ。佐賀バルーナーズ、長崎ヴェルカ、アルティーリ千葉、福井ブローウィンズなど、言ってしまえば黒船的存在のクラブがどんどん下から出てきてる中で太刀打ちできるの?それなりのビジョンはあるの?という疑問はあった。
だいたい、流行り病の影響も抜け切らず、だだっ広い青森市の街外れにあるマエダアリーナをホームにしてることもあり平均観客数も伸びてない。余程のビッグスポンサーでも連れてこないと厳しいよなあ…とも。
長くワッツを見てきた知り合いともこんな話してた矢先に起こった件の企業の経営破綻と、表面化したクラブの経営危機。
インスタライブでの会見を聞いて最初に思ったのは…

なるべくしてなってしまったのかな

という感想。

結局青森ワッツというクラブはbjリーグのクラブ、というところから脱皮しきれなかったんだろうなと。
bjリーグの頃は選手にかける予算も少なく済んだし、サラリーキャップもあったので、そこそこの売上でもやっていけた。
でもB.LEAGUEになり、稼ぐがすべて、弱肉強食の世界になった。これこそが本来のプロスポーツのあるべき姿だとは思うけど、経営のレベルアップができないまま置いて行かれてしまったなと。
今季の選手を見てもクオリティーの高い選手が揃っている。
現にこの時期でプレイオフのホーム開催も視野に入る位置に居る。それだけに勿体無いなと感じる。

相撲の世界には「家賃が高い」という言葉がある。ざっくり言ったら分不相応という意味だ。今の青森ワッツは、まさにこれに尽きるのではないだろうか。

断っておくが、青森ワッツには消えてほしいとは微塵も思っていないし、どんな形でも生き残って欲しいと強く思う。
たとえB3に落ち、B革新後はBネクストに振り分けられようとも。

Szégyen a futás, de hasznos.

ハンガリーの諺で、「恥ずかしい逃げ方でも、生き抜くことが大事」という意味。
生き残っていれば、曲がりなりにもチャンスはあるのだから…



この記事が参加している募集

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?