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東欧のスタートアップ・シーンは「北欧並み」のレベルに到達できるとテックカンファレンスCEOが語る スタートアップへの投資が世界的に低迷する中、中欧・東欧の回復力と「根付いた倹約精神」がこの地域の繁栄をもたらす可能性がある。

2024年、中東欧のスタートアップシーンに注目が集まっている。ルーマニアの主要テックカンファレンスCEOによると、中東欧は北欧のような存在になる可能性があるという。投資トレンドが非投機的で持続可能な成長になっており、倹約志向でコストが低い中欧・東欧のスタートアップが投資家に好まれているようだ。一方この状況は、中東欧内部ではVCファンドが成熟しておらず、この地域のスタートアップは公的資金に依存してきたという課題も浮き彫りにしている。
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ルーマニアの主要なテックカンファレンスであるHow to Web(ハウトゥーウェブ)のCEOであるAlexandru Agatinei( アレクサンドル・アガティネイ)氏によると、中東欧の技術系スタートアップ・シーンは、グローバルな展開と高度に革新的な製品を持つ企業によって、「北欧のような」存在になる可能性があるという。

アガティネイ氏は、2023年の資金調達額が2022年に比べて大幅に減少することを指摘したベンチャーキャピタル取引に関する報告書を共同執筆したばかりであるにもかかわらず、この地域のスタートアップシーンの芽生えについて非常に楽観的である。中欧、南欧、東欧の19カ国を対象としたこの報告書によると、投資額は42億ユーロから18億ユーロ強へと57%減少した。

しかし、これはより広範な傾向の一部であり、ヨーロッパ全体の投資額は同期間に45%減少した。「両極端な1年でした」と、アガティネイ氏はScience|Business(サイエンスビジネス)誌に語った。アガティネイ氏は、この落ち込みは2021年の過大評価された市場に対する反動と見ており、過剰な懸念はしていない。むしろ、2023年に計上された18億ユーロは、中欧・東欧へのVC投資がわずか3億8830万ユーロだった2020年の文脈で見るべきだろう。

アガティネイ氏は、東欧と西欧の間に定着しているイノベーションの業績格差はすぐに解消されると確信している。「私たちは、このサイクルが終わりに近づいていると信じています。」

彼の信念は、人工知能におけるこの地域の好調な業績や、ルーマニアのユニコーン企業UiPath(ユイパス)、クロアチアの電気自動車メーカーRimac Automobili( リマック・オートモビリ)、ブルガリア初のユニコーン企業Payhawk(ペイホーク)など、最近の成功事例に基づいている。

この地域の最新の申し子はポーランドのElevenLabs(イレブンラブズ)で、2年で10億ユーロの評価額とユニコーンの地位を達成した。同社は2023年に2回のラウンドで8910万ユーロを調達した。ポーランドのベンチャーキャピタルInovo.vc(イノヴォドットVC)のKarol Lasota(カロル・ラソタ)氏は、この地域の今年「最も重要な出来事」と呼んだ。「この功績は、中東欧のスタートアップ業界全体にインスピレーションを与えるものです。」

アガティネイ氏もこれに同意し、この地域に対する信頼が高まるだろうと述べた。「地域的なエコシステムから、製品が非常に革新的でその製品を軸とする企業が初日からグローバルに活躍する北欧のような体制へと、さらに変貌を遂げるでしょう。」

持続可能な成長

スタートアップへの投資は、数年前に比べて投機的ではなくなっている。大金を投じるリスクは少なくなり、投資家は誇大広告に踊らされることなく、単位経済学に頼るようになっており、実際に販売可能な製品に基づいて評価を行っている。

現在の投資トレンドは、手っ取り早く撤退することよりも、長期的かつ持続可能な成長を目指す企業を見つけることにある。このセンチメントの変化と市場全般の変化は、中欧・東欧の強みを活かしている、とアガティネイ氏は言う。

この地域のスタートアップ企業には「倹約」が根付いており」、常に着実な成長を重視する傾向がある。アガチネイ氏は、「このような行動の一部は、この地域のDNAに組み込まれた効率性に起因しています。」と述べた。

中欧や東欧ではコストが低いため、VCが他の地域よりも低いバリュエーションで後発ラウンドに投資することもある。「シリーズAのチケットに投資する欧米の投資家がシリーズBで十分なディールフローを得られず、もう少し安定性があり、ディールが高騰しておらず、印象的な人材プールがある中東欧に目を向けた可能性がある」とハウトゥーウェブのレポートは述べている。

中欧・東欧を専門とするビジネス支援・開発機関であるIntertrade Consulting(インタートレード・コンサルティング)のレポートによると、後発の投資ラウンドでは外資が資金の75%以上を占めているという。

西側諸国からこの地域への投資はポジティブなものだが、地元の投資家には大規模な投資を行う資金が不足していることの表れでもある。ハンガリー科学アカデミーの研究者で、2016年から2020年にかけての同地域におけるベンチャーキャピタル投資に関する論文を執筆したJudit Karsai(ユディット・カルサイ)氏は、この点を問題点として強調している。「この地域のベンチャーキャピタルファンドの規模はヨーロッパの平均をはるかに下回っているため、この地域のスタートアップ企業は、ベンチャーキャピタルの国際的な流れに巻き込まれなければ、成功するチャンスはないのです。」と彼女は言う。

長年の問題は、スタートアップ投資において公的資金が目立つことである。公的資金は安全側に偏りがちで、民間投資のような柔軟性に欠ける。

しかし、アガティネイ氏は、「一夜にして成功する近道はありませんが、この地域の勢いは、より多くのサクセスストーリー、より多くの才能、そしてより多くの資金がこの地域に流れ込むことで、かつてないほど強くなっています。」と語った。


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