きっかけと感謝

社会人になったくらいの頃から少しずつ勉強を始めて、
かれこれ5年くらいかかって気象予報士試験に合格した。
頭の良さではなく、諦めの悪さの産物だ。

もともと理系で自然科学に関心はあったけれど、
それだけじゃあ多分ここまでネチネチ拘らない。
アナウンサー1年目、東日本台風の中継。
これが資格を絶対に取る!という
強い決意を持つきっかけになった。

その日はいわき支社の建物の中からお伝えした。
ひっきりなしになり続ける河川氾濫を知らせるアラーム。
目の前の道路にも流れ込む水。
バイクに跨ったままどっちに逃げようか迷う住民。

翌日、道路が通行止めになり取材クルーも郡山に帰れず、そのままいわきの取材へ。
そこでは町が水浸しになっていて、
やるせなさが滲む表情で住民の方々が自宅から泥をかき出していた。
そのすぐ近くにはまだ水が溜まったままの場所もあり、「この中に人が沈んでいたりしたら…」とゾッとした。
目に映るどれもこれも、災害が少ない東京育ちの私にとって忘れるのが難しいものだった。

「危ない、避難して!」と一生懸命伝えて、誰をどう守れたのかな?何か出来ていたのかな?と自分のちっぽけさを感じた経験だった。
アナウンサーになるだけで、誰かに影響出来るわけじゃないらしかった。
肩書きをもらっただけで、何者でもなかった。
(アナウンサー受験をしていると、どんどん憧れは強まるし、「何かできそうな人」アピールをしているうちに本当に何かできると勘違いしがちな節もあった……)
ちっぽけで何者でもない私の言葉じゃ誰かを守るには弱いなら、少しでも言葉に強度を持たせられるものを…!
そんな気持ちでずっと勉強してきた。
どこかの小娘ではなく、気象予報士のあの子が言っていることの方が少しは正しく言葉が作用してくれるのでは?と。

アナウンサーと気象予報士、どっちがやりたいとかではなく、どっちもやって誰かの役に立ちたい。

局アナ時代、伝えるのも上手で必要な情報をちゃんと届ける先輩達に憧れていた。
私にはそんな力はなくて、ただそれを見ていることしかできなかった。そんな自分が恥ずかしかった。

何がパワーアップしたわけでもないですが、
知識を正しく使って今度こそ私も人の役に立てればと思います。
おめでとうの言葉をかけてくれる人達への感謝の気持ちが、
「私に出来るお返しをしたい」とその思いを強くさせます。

これからも引き続き、よろしくお願い致します。



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