合同会社の設立手続き:法務省の設立手続きページを読む

 合同会社の設立手続きは、法務省に詳しく書かれたページがあるので、これを読んでいく。

法務省:合同会社の設立手続についてhttps://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00141.html


合同会社の設立の流れ

定款の作成

出資(金銭・現物出資)の履行

設立の登記申請

成立

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 会社は、法的には登記の完了をもって、申請日に成立する(定款の日付でも、登録完了日でもなく、法務局に申請した日)。登記に際しては、書類の日付がポイントの一つになる。書類の日付が上記の流れと矛盾のないようにしなければならない。例えば、出資の履行日(出資金の振込日)が定款の日付よりも先になってはいけない(後述)。

定款の作成

(1) 社員による定款の作成
  合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款(法人の組織活動の根本規則)を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(会社法第575条第1項)。
 定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項及び任意的記載事項の3種類があります(会社法第576条、第577条等)。
 なお、合同会社の定款については、公証人の認証を受ける必要はありません。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 定款の作成は社員になろうとするもの(社員は従業員ではなく出資者)が行う。司法書士や行政書士にも依頼が可能。株式会社の場合、司法書士は登記手続きまで依頼できるが、行政書士に頼めるのは定款認証までで、登記申請は依頼できない。なお、合同会社は定款認証は不要。(参考:認証は公証人が行う)

(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
 登記又は供託に関する手続について代理すること。
 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。

司法書士法 | e-Gov法令検索

(業務)
第一条の二
 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

行政書士法 | e-Gov法令検索

(定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
(中略)
(定款の認証)

第三十条 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

会社法 | e-Gov法令検索

第一条 公証人ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ嘱託ニ因リ左ノ事務ヲ行フ権限ヲ有ス
一 法律行為其ノ他私権ニ関スル事実ニ付公正証書ヲ作成スルコト
二 私署証書ニ認証ヲ与フルコト
三 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項及其ノ準用規定並一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及第百五十五条ノ規定ニ依リ定款ニ認証ヲ与フルコト

公証人法 | e-Gov法令検索

 なお、以前私が作成した定款について、以下で公開しています。

絶対的記載事項

 ア 絶対的記載事項
   定款には、次に掲げる事項を記載しなければなりません(会社法第576条第1項)。
  (ア) 目的
  (イ) 商号
  (ウ) 本店の所在地
  (エ) 社員の氏名又は名称及び住所
  (オ) 社員の全部を有限責任社員とする旨
  (カ) 社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準

前述「合同会社の設立手続について」

 絶対的記載事項は記載必須。以下で事項ごとに記事にしているのでご確認ください。

【目的】

【商号】

【本店の所在地】

【社員の名称又は名称及び住所/社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準】

【社員の全部を有限責任社員とする旨】

相対的記載事項

イ 相対的記載事項
   相対的記載事項とは、会社法の規定により定款に定めがなければその効力を生じない事項をいいます。
  ・ 持分の譲渡の要件(会社法第585条第4項)
  ・ 業務を執行する社員(業務執行社員)の指名又は選任方法(会社法第590条第1項)
  ・ 社員又は業務執行社員が2人以上ある場合における業務の決定方法(会社法第590条第2項、第591条第1項)
  ・ 合同会社を代表する社員(代表社員)の指名又は互選(会社法第599条第3項)
  ・ 存続期間又は解散の事由(会社法第641条第1号、第2号)  等

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 相対的記載事項については以下で記事にしているのでご確認ください。

任意的記載事項

ウ 任意的記載事項
   任意的記載事項とは、定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法の規定に違反しないものをいいます。
  ・ 業務執行社員の員数
  ・ 業務執行社員の報酬
  ・ 事業年度 等

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 特に定款に定めることが決められていないが、予め決めて置いたほうが良いと思われる事項。記載して登記されたあとに変更するには、社員全員の承認の他、定款変更の登記申請が必要になる。

出資の履行

社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(会社法第578条)。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 「合同会社の設立の流れ」で見たように、出資は定款の作成後、登記するまでに行わなければならない。定款には日付が必要なので、2023年10月4日の日付で定款を作成した場合、払い込みは10月4日以降でなければならない。間違えて定款の日付の前に払い込みをした場合、登記手続きにおいて補正を求められる。
 以前、小さな非公開会社で株式関連の仕事をした時、この日付が結構問題となる事が多かった。例えば、募集株式に関して事前に約束がなされていたため、当該株主から払い込み期間以前に会社の口座に払い込みがなされてしまっていたせいで、補正が必要になるようなケース。登記において払い込みがあった通帳のコピーを提出する必要があるのだが、日付が矛盾してしまう。
 定款と出資金の払い込みの場合、定款の日付を払い込み前にすれば手続き上は問題がないが(例えば10月4日に定款を作成したが、払い込みを10月3日にされてしまった場合、定款の日付を10月3日にする)、事前に周知して余計な手間を掛けない方がよい。
 なお、会社設立前には当然会社口座はないので、代表社員の口座に払い込み者の名義で振込を行うことになる。

合同会社の設立登記申請の手続き

設立の登記

 合同会社の設立の登記は、その本店の所在地においてしなければなりません(会社法第914条)。
 合同会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法第579条)。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 本店所在地の管轄法務局は以下で確認できる。

(合同会社の設立の登記)
第九百十四条 合同会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる事項を登記してしなければならない。

前述「会社法」

(持分会社の成立)
第五百七十九条
 持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

同上

登記申請の方式

 登記の申請は、書面(持参又は郵送)又はオンラインによりすることができます(商業登記法第17条第1項、商業登記規則第101条第1項)。
 書面申請の場合には、申請人の代表者(当該代表者が法人である場合には、その職務を行うべき者)又は代理人が登記申請書を作成し、所定の書面を添付の上、合同会社の本店の所在地を管轄する登記所に提出する必要があります(※)。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

(登記申請の方式)
第十七条 登記の申請は、書面でしなければならない。

商業登記法 | e-Gov法令検索

(電子情報処理組織による登記の申請等)
第百一条 次に掲げる申請、申出、提出、届出又は請求(以下「申請等」という。)は、情報通信技術活用法第六条第一項の規定により、同項に規定する電子情報処理組織を使用する方法によつてすることができる。ただし、当該申請等は、法務大臣が定める条件に適合するものでなければならない。
 登記の申請(これと同時にする受領証の交付の請求を含む。以下同じ。)

商業登記規則 | e-Gov法令検索

 登記はオンライン/または書面で行うことが可能。手続きについては別途まとめる予定。

登記すべき事項

合同会社の設立の登記においては、主に次に掲げる事項を登記しなければなりません(会社法第914条)。
(1) 目的
(2) 商号
(3) 本店及び支店の所在場所
(4) 合同会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
(5) 資本金の額
(6) 業務執行社員の氏名又は名称
(7) 代表社員の氏名又は名称及び住所
(8) 代表社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
(9) 公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め 等

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 上記については申請画面(オンライン)/書面(持参又は郵送)に記載するため、手続ききちんと行ってけば満たせる。

申請人

設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によって行う必要があります(商業登記法第118条において準用する同法第47条第1項)。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

(登記申請の方式)
第十七条 登記の申請は、書面でしなければならない。
 申請書には、次の事項を記載し、申請人又はその代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者)若しくは代理人が記名押印しなければならない。

前述「商業登記法」

 合同会社の社員は、定款に定めのない限り全員が代表社員なので、社員の中の一名。

記載事項

 申請書には、次の事項を記載し、申請人の代表者(当該代表者が法人である場合には、その職務を行うべき者)又は代理人が記名押印しなければなりません(商業登記法第17条第2項)(※)。
(1) 申請人の商号及び本店並びに代表者の氏名又は名称及び住所(当該代表者が法人である場合には、その職務を行うべき者の氏名及び住所を含む。)
(2) 代理人によって申請するときは、その氏名及び住所
(3) 登記の事由
(4) 登記すべき事項
(5) 登記すべき事項につき官庁の許可を要するときは、許可書の到達した年月日
(6) 登録免許税の額及びこれにつき課税標準の金額があるときは、その金額
(7) 申請の年月日
(8) 登記所の表示

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 申請書については別途まとめる予定。

添付書面

 申請書には、主に次の書面を添付しなければなりません(商業登記法第117条、第118条において準用する同法第94条ほか)。
  (1) 定款(公証人の認証は要しない。)
  (2) 業務を執行する社員の一致があったことを証する書面
  (3) 代表社員が法人であるときは、次に掲げる書面
   ・ 当該法人の登記事項証明書(当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合を除く。)
   ・ 当該社員の職務を行うべき者(職務執行者)の選任に関する書面
   ・ 職務執行者が就任を承諾したことを証する書面
  (4) 出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面(※1)
  (5) 資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面(設立に際して出資される財産が金銭のみである場合は、添付を要しない。)
  (6) 代理人によって登記を申請するときは、その権限を証する書面 等

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 添付書類についても別途まとめる予定。

登録免許税

 合同会社の設立登記の登録免許税額は、資本金の額に1000分の7を乗じた金額です。ただし、これによって計算した税額が6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円です(登録免許税法別表第1第24号(1)ハ)。
 書面で申請する場合には、登録免許税額分の収入印紙を申請書の余白等に貼ってください。収入印紙は郵便局等で購入することができます。

前述「法務省:合同会社の設立手続について」

 計算すると、資本金8,571,428円までだと6万円に満たない計算になる。実際には、課税標準となる資本金の1,000円未満の端数は切り捨て、計算後に100円未満の端数金額も切り捨てとなる。なので、資本金8,585,999円までは登録免許税は6万円である(課税標準8,585,000×7/1000=60,095→100円未満切り捨てで60,000)。ただ、下に書いた通り、資本金額は調整できるので、わざわざギリギリの額を資本金として計上する意味はあまりないのではないだろうか。

(課税標準の金額の端数計算)
第十五条 別表第一に掲げる登記又は登録に係る課税標準の金額を計算する場合において、その全額が千円に満たないときは、これを千円とする。

登録免許税法 | e-Gov法令検索

二十四 会社又は外国会社の商業登記(保険業法の規定によつてする相互会社及び外国相互会社の登記並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定によつてする一般社団法人(公益社団法人を除く。以下この号において同じ。)及び一般財団法人(公益財団法人を除く。以下この号において同じ。)の登記を含む。)
(中略)
ロ 合名会社若しくは合資会社又は一般社団法人等の設立の登記
申請件数  一件につき六万円
資本金の額 千分の七
(これによつて計算した税額が六万円に満たないときは、申請件数一件につき六万円)

前述「登録免許税法」

(国税の確定金額の端数計算等)
第百十九条
 国税(自動車重量税、印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が百円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
2 政令で定める国税の確定金額については、前項の規定にかかわらず、その確定金額に一円未満の端数があるとき、又はその全額が一円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。

国税通則法 | e-Gov法令検索

 合同会社は株式会社と異なり、資本金の計上に制限がないので、払い込まれた全額を資本剰余金に計上することも可能であり、いくら振り込まれようが資本金0円とすることができる。このため、設立時に際して払い込みが1億円あったとしても、資本金0円とすれば登録免許税は6万円のみとなる。以下、参考までに株式会社の資本金についての条項を引用。

(資本金の額及び準備金の額)
第四百四十五条 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

前述「会社法」


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