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フロイド・メイウェザー vs. 那須川天心

RIZIN.14
2018年12月31日 さいたまスーパーアリーナ
第14試合 スペシャルエキシビジョン [3分 3R]
フロイド・メイウェザー vs. 那須川天心

ずっとこの試合の意味を考えていました。
プロレスファンとして格闘技を見始めて、キックも疎くボクシングも疎く、PRIDEとDREAMの流れでRIZINを見てる自分としては、RIZINで見て来た天才 那須川天心がどこまで強いのかを世界に示す機会として、今回のこの試合があります。イメージでは、格闘技の中でももっともボクシングが競争率が激しく技術の差も大きく、番狂わせもなく競技として成熟している・・・かなり前からそれは思ってます。昔のK-1がよくわからん団体でほぼ全盛期を過ぎたボクシング王者を呼んでボクシングに勝ったかのような演出して来たのもわかってます。だからメイウェザーやパッキャオ、カネロやゴロフキン、トップ中のトップはとてつもない壁があるのだと勝手に想像できてました。日本のトップのボクサーでもマッチメイク自体がかなりの壁があるということも。
その中で舞い込んだ神童へのビッグチャンス。メイウェザーの域に行ったら、本人のやる気がどうであれ、天心がパンチを当てればそれだけで世界的な評価が爆上がりでしょ!と、当てれば当てるだけ評価が上がっていくボーナスステージなんじゃないかと思いました。さらに期待を込めたら、天心がこの世界が違う幻想に満ちたメイウェザーという世界で最も大きな壁を打ち破るという奇跡を起こせる存在なのかどうか、そこまでの天才なのかどうかを見れる、技術や経験や常識を超える力を持ってることを信じて、会場に来ました。
この感覚、高田延彦vsヒクソン・グレイシー、桜庭和志vsホイス・グレイシーを思い出します。あれも「自分達が今まで熱く見て来たものが本物であることの証明」だったと思います。自分としては、あれを生で見れなかったから、今回来たのかもしれないと。
メイウェザーの相手が矢沢永吉の曲で入場してくるということからしてとんでもない!ついに日本のリングに。ボクシング史上最高の作品メイウェザー。

那須川天心は今までのキャリアで倒して来た相手、その試合によって評価をして来た人達、関係者、目指す人達、色々な立場の人の思いを背負ってるわけです。対するメイウェザーは練習してない説、アップしてない説、色々舐めたフリを作っていることが、ヒールとして盛り上げる為なのか本当に舐めているのか。本当にこの2人がリングで向き合いました。

世紀の9分。
結果は、茫然自失の・・・2分19秒。

天心のボクシングは全く歯が立ちませんでした。開始早々ニヤニヤしながら大振りで適当なパンチをうつメイウェザー、明らかな挑発。天心の早い右ジャブを捌いてさらにニヤニヤ。あの天心が真面目に打ってるジャブです。そして近づいたメイウェザーがあの最速の右ストレート!スウェーでかわした天心が、あのあらゆるライバルたちを倒して来たあの左ストレート!「当たった!当たった!」と騒ぐ実況解説。観客もほとんどが思いました。しかし、これぞスリッピングアウェー!見事に顔だけでかわしてすぐ返しの左フック、天心はこれをかわしました。

9月の堀口戦をスピード的にも超えた攻防が目の前で行われている!と思ったのも束の間、あとでインタビューで天心が言ってた「プレッシャーが強くなった」のがこのタイミングかな?メイウェザーがジリジリ前に出て上下に打ち分けて進んで来ます。
メイウェザーにもありました、必殺であり必ず当たる、あの左フック。リッキー・ハットンやファン・マヌエル・マルケスを倒した最速の左フック。確かに音がしました、ただ早すぎて、天心が倒れている理由が会場の皆わかりませんでした。天心初めてのダウン。
ダウンすぐセコンドを見る明らかに動揺した表情の天心、そして思い切って全てを出すかのようにラッシュに行く天心、それを堅い、あまりにも堅いガードでゼロにしてしまうメイウェザー。日本待望の神童が、日本が誇る天才が全く敵わないという現実を突き付けられました。すでに階級の違いの前に技術とスピードで負けていること、その上ハンデのついたグローブでも一撃で倒れてしまうパワーの差、もう何も言い訳できないぐらいの差を見せつけられたと思ったところにメイウェザーの右ボディから右フックで2度目のダウン。
起きた天心の腕にも足にも力が入ってないのがわかります。また見えないぐらいコンパクトで速い左フック、フラフラ倒れる天心、よろめいたところセコンドがタオル投入。リングで踊るメイウェザー。誰もが想像したくなかった、でも想像できてしまう最悪の結果が起きました。

ただ現実を知っただけ、なんですがここまでとは・・ともうこの後のカウントダウンとかあまり何も考えれないぐらいショックでした。

自分は那須川天心ほど、純粋に強く純粋に強さを求めて真摯に真剣にキャリアを進む格闘家を見たことありません。さらにまだ20歳という若さ。所属したRISEでの王者になりその時その時最高の相手を用意されクリアしてきてのまさかのメイウェザー戦。まるで漫画の主人公。難しいところで、大事に育てるべき才能は時に過剰なプロテクトを受けて、見たい試合が実現しないまま終わることがあります。天心とチーム天心はそれをせずに常に上の相手を目指す。こんな天才と素晴らしいチームが今の格闘技界にいることを有難いと思わずにいれない。だからここで奇跡を起こしてくれると期待してました。
公式サイト 試合結果詳細
ここの最後にある絶望的な表情で泣き始める那須川天心と、抱擁して慰める父親。このシーン1枚を覚えて心に刻んでおくことで、何年後か報われる瞬間が来た時に感動できるでしょう。それはもうめちゃくちゃ。

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