ルーカスフェルナンデス選手はなぜPKを蹴ったのか

 こんにちは。土曜日にはフットサルのために朝7:30に起きたら1日勘違いしていて実際は日曜日の開催でした。風呂だけ入って帰ってきました。アジアンベコムです。
 札幌ー名古屋戦(2020年8月29日)の終了間際の、札幌のPK失敗について色々と反響があるみたいですね。私は心が狭い人間なので、自分の目に入る範囲にすごく適当な話や思慮の浅い話が出回るのを好ましく思いません。なので、せっかくなので簡単に整理しておきます。

 果たして「コンサドーレの日本人選手は責任取りたくないからPKを避けた結果、自己中で技量やコンディション的にキッカーに不適なルーカスフェルナンデス選手が蹴った」のかという話です。いや、なわけねえだろwってわかる人もたくさんいると思うんですけど、インターネッツのうち95%は適当な情報であふれてますから。

1 元々決められていたキッカー(札幌の日本人選手は責任逃れ?)

 まずPKやFK、CKといったセットプレーって試合前に蹴る選手を決めておくんですよね。それは特定の1人の場合もありますが、通常は2~4人くらいは優先順位をつけて指名しておくことが多いと思います。
 例えばその選手が欠場したら決めなおすのが面倒なので、優先順位をつけておけば繰上りで考えられるのと、特にフリーキックの場合はどの位置から蹴るかで最適なキッカーは変わってきますし、若い頃の阿部勇樹選手なんかはキッカーとしてもターゲットとしても秀逸だったので、直接狙うよりもクロスボールで合わせるスポットからはターゲットに回ったりとか。
 後は、常にキッカーが見えてれば相手GKは対処しやすいので。絶対福森選手が蹴ってくるとわかってて決めるのは本当に凄いんです。

 んで、PKはだいたいFWの選手が指名されることが多いですよね。FWにとっては最大の得点チャンスなので、あまり蹴りたがらない選手は少ない。
 そして札幌のPKキッカーは、明確にこの順番って指名されているのは確認できていないのですが、恐らく2020シーズンは、①アンデルソン ロペス、②鈴木武蔵、③ジェイ選手あたりなんですよね。
 2018シーズンはジェイ選手がスタメンで、都倉選手がサブでシーズンをスタートしましたが、都倉選手も優先順位は高めで何度か決めていました。その都倉選手が去って、2019シーズンから加入した武蔵選手とアンデルソンロペス選手はいずれも”割とうまい”側の選手でした。アンロペは広島時代もキッカーを務めていて、見るからに「こいつ上手いな」って感じの蹴り方をしていました。
 セルヒオ・ラモスのようなPKがうまい選手が他のポジションにいれば別ですけど、札幌の場合はそうでもない(福森選手はどうなんでしょうかね)ので、FWの選手が蹴っていますね。

 そしてCKは福森選手が95%蹴りますが、福森選手のコンディションが悪かったり、後は左サイドからのCKはルーカス選手もたまに蹴ることがあります。CKはチームによって、インスイング(ゴールに向かうキック)、アウトスイング(ゴールから離れるキック)の好みがありますが、コンサドーレの場合は福森選手が絶対的なので左右両方で1stチョイス。その次は、員スイングのキックが割と好まれていて、ルーカス選手はここで選択肢に入ってきます。

2 ピッチ上の状況(自己中な選手がキッカーに?)

 普通は指名されているキッカーが蹴って終わりです。
 が、武蔵選手はシーズン途中で移籍。ジェイ選手とアンデルソンロペス選手はこのシーズンは出たりでなかったりの起用が続いています。だからその間、それこそ(FWを誰も起用しない)トータルフットボール!な期間は誰か代替のキッカーを決めておいてもよかったのですが、特に決めない場合もあることはあります。その場合は、それこそピッチ上での話し合い等で決まります。

 この試合は、アンデルソン ロペス選手が81分にドウグラス オリベイラ選手と交代。ジェイ選手はピッチ上に残っていました。
 なので、本来はアンロペが残っていればアンロペ。ジェイが蹴れるならジェイが蹴る。こうなっていれば余計な論争が生じなかったのですが、

 北海道新聞によると、「普段なら自分が蹴るが、相手選手と強くぶつかって決める自信がなかった」というのがジェイ選手のコメントです。著作権上問題があるので記事は掲載しません。
 これで決めていたキッカーは全員脱落して白紙になり、大事な場面でピッチ上で新たに決めなおす必要があります。「日本人選手が責任逃れをした」わけではなく、想定外のことが起きたから誰かをキッカーに立てないといけなくなっただけなんですよね。
 この状況でピッチ上でのやり取りから自然にルーカス選手に決まったということです。「やり取り」「話し合い」と言いますが、5分も10分も話し合う時間がありません。普通は「俺いくよ」「OK」といったコミュニケーションしかありません。残された唯一のキッカーであるジェイ選手が、チーム内で決してキッカーとしての序列が低くないルーカス選手に譲って、ピッチ上ではこのやり取りは円満に終わり、となりますね。

 ついでに言うと、2019シーズンのルヴァンカップ決勝ではPK戦に突入し、札幌のこの時のキッカーは①アンデルソンロペス、②鈴木武蔵、③深井一希、④ルーカスフェルナンデス選手でした。4人目までは「自身のあるや奴いるか?」とミシャ監督が聞いて、この4人が名乗り出たので決まり。5人目はベテランの石川選手が(あまり自信ないけど)引き受けたということです。これを聞いて、「5人目は自信ある選手にしてくれよ」とおもったのですが。
 それはどうでもいいとして、ルーカス選手はこういう場面でキッカーを名乗り出て決めるくらいなのでチームから信頼されているプレイヤーだと考えた方が自然なんですよね。状況的に「何でお前が蹴ったんだよ」って考える人はチーム内だとほとんどいないのではないでしょうか。

3 ベンチの介入(交代指示を無視したの?)

 ここでようやくベンチがピッチ上に介入します。
 四方田ヘッドコーチによると、「PKになる前に交代を決めていたルーカスがキッカーになっていたのでワタワタとした。結果、外したのは残念だが、誰も責めないと思う」
 日本語の読み、書きって非常に重要な能力だと思うんですけど、要はベンチの意思決定として、最初キッカーを指名したのではなくてATの最後にルーカス選手を交代させようとしたという話です(交代相手は進藤選手だった、という話が別途出てきます)。
 ただ、この時、ピッチ上からはベンチの様子は見えない。だからキープレイヤーのルーカス選手が変わるかも、という予感は選手間で大きくはなかったはず。1点を追う状況でそのレベルの問題を頭に入れていた選手はいたとしてもわずかでしょう。

 その(交代を準備しているのがわからない)状態でPK獲得→キッカーの協議→ルーカスに決定、となる。
 ここで再びベンチにフォーカスすると、ベンチからもこの経緯はよく見えない。なんでルーカスが蹴るの?もありますし、いやルーカス替えようとしてたんだけど、はここで生じます。
 そしてサッカーは高校野球と違って、プレーを止めてピッチ上に伝令を送ることは基本的に許されない。数十秒~1分程度しか猶予がない中で、ベンチがピッチ上の決定に全て介入して操作したりすることはできない。結局最後は選手が決断してプレーするものなので。

 なお、ソースが出てこないのですが、ベンチの希望するキッカーはドウグラスオリベイラ選手だったらしいと見ました。これは緊急事態に慌てて決めた、元々想定していなかった代替のキッカーなので、緊迫した状況でそれを伝えるのはどうしても難しい。

 ここまで書いて、また日本語の読解能力の話になるのですが、「交代を拒否した」という文脈は全然出てこないんですよね(どっかに、それを明言しているソースありますか?)。

 要は、ベンチは「交代しようと思っていたところでルーカス選手を変えられる状況じゃなさそうだったので、ピッチ上の選手の意思決定を尊重した」というだけに過ぎないんですよね。んで、結果ランゲラック選手がセーブ。久々に勝てると思っていたミシャおじいちゃんはガックリして会見ぶっち、という流れだと認識しています。

4 あとがき

 私が子どもの頃に比べると、日本には外国人の方、もしくは外国にルーツのあると思われる方が本当に増えたな~と街を歩いていて思います。実際統計的にも外国人居住者の方は増えていますし、一時的な入国者(観光客)も新型コロナウイルスの流行前は右肩上がりで増えていましたよね。

 差別とか偏見とかレッテル貼りといった行動の大半は無知から生じます。そんな時代に育った、今の10代の方などは比較的フラットに捉えられる人が多いんじゃないかと思っていますが、どうしても世の中には、「◎◎だから▼▼」みたいなステレオタイプな物差しでしか考えられないひともいるよな、ということで気になったのでnoteに書きました。日本人の場合、物事の本質よりも表層的なキャッチフレーズ(トータルフットボール とか)に飛びつく傾向が強いですし。

 これぐらいサッカーではよくあることですし、仮にミシャがこれで機嫌を悪くしてミスした選手を干すとかもよくあることですよね。
 人間だもの。勝てなくて悔しいもの。

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