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【雑記】「収益拡大とグローバル展開を実現するクラブチーム戦略」 Giorgio Ricci ユヴェントスFC 最高販売責任者

 先日3/1(金)に幕張メッセで開かれた展示会内のセミナーで、標記の興味深いものがあったため聴講してきた。普段はブログ→ https://1996sapporo.blogspot.com/ で細々と活動しているが、情報収集用に作ったnoteアカウントのサルベージも兼ねて、記憶があるうちに記録として残しておく。
 なお、プレゼンテーションで触れられた話の順番に文章を書き起こすので、非常に雑多な文だがご勘弁を(再構成する元気がなかった)。

<はじめに>

・講演者はユヴェントスのマーケティング部門責任者。コンテンツ、ブランド展開、テレビ放映権ビジネスを総括する立場。2004年入社。
・(3分程度の映像…ユヴェントスの選手がゴールを決めたり、ブッフォンのスーパーセーブの映像を見せて)「スポーツチームとしていかにも典型的な映像だが、10年前の我々のビジネスの認識は『これ』だった」。

<ユヴェントスのマーケティング・経営改革の概要>

・2010年に現在の経営陣に変わった(マロッタGMの就任等)。以前は「スポーツ」にフォーカスしていたが、新しいビジネスモデルに変わる必要があった。
・改革の甲斐あり、2019年現在、目覚ましい成長を遂げている。
KPI1:UEFAクラブランキング 43位→5位
 →フットボールが最も重要な資産である。
  経営陣の維新後も、「まずは本業に集中」との方針を打ち出し、国内タイトルの獲得やUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出2度等の成功を収めた。
KPI2:SNSフォロワー数 全世界で3.8億人。地域別にはアジアが最多で1.5億人、次いで南米8,700万人
 →日本も重要なマーケットであり、ファンクラブの設置とアカデミー設置を行っている。
 →SNSフォロワー数はCR7加入後に急増中。
KPI3:テレビ視聴者数 全世界のクラブで4位(1位はレアル、2位バルサ、3位忘れた)

<事業環境の分析>

・まず事業環境の分析に2015年より着手。
 →「サッカー市場」はプレミアリーグを筆頭に伸び続けているが、セリエAは低成長にある。これはイタリア国内の事業ビジョンやイノベーションの欠如によるとみている。
 →「スポーツ市場」においては、サッカーは支持されているコンテンツ。市場は安定的に伸びている。
 →「エンターテイメント市場」においても、サッカーは上位のコンテンツ。一方で他のコンテンツ(音楽等)と比べると、サッカーは”より深いつながり”が存在するコンテンツである。
・SWOT分析
 →強み (Strengths):市場における堅牢なポジション
 →弱み (Weaknesses):キャッシュ化されていない
 →機会 (Opportunities):市場の伸張
 →脅威 (Threats):(忘れた)

<マーケティング戦略の立案>

・「ビジネスで勝つために、見方を変える必要がある。」
 →「スポーツエンターテイメントカンパニー」(サッカーを中核に、人々の生活を豊かにする)に。
・ブランドイメージの構築:「Bold」「Elegant」「Proud」
 →「イタリアのスタイルの代表、文化の代表」(要するに盟主ですね)であることは変えない。現代的に。
 →全てはサッカー、だったのが、サッカーを中核とするブランド構築、へ。
・エンブレムからブランドロゴへ(最大の転換点である)。

<マーケティングのターゲット>

・新たな哲学を設定し、発信するターゲット
1)イタリア国内のサポーター:国内の31%がユヴェンティーノ。コアなアセット。イタリアでベストチームであることが重要。
2)インターナショナルなファン:世界で3,800万人。世界のトップチームであることが重要。2~3チームをフォローしているような人。
3)より幅広いファン:エンターテイメントに熱心な人。アメリカと中国だけで5.6億人。→この層にユヴェントスのブランドを浸透させる必要がある。
1)2)はプレイヤーに関心、好意を抱く。3)は体験価値に重きを置く人。

<内部への哲学の浸透>

・120年の歴史を変えることになるので、非常に難しい。
・これからはクラブではなくアイデンティティ、ブランドとして、あらゆる活動やサービスが見られることになる。ガイドラインを作った。
1)信条
2)新たなコミュニティの創造
3)サッカーを超える存在

<サッカーを超える存在>

・「black & White & more」:ブルックリン・ネッツ主催試合でのイベント開催
・「black & White & art」:(詳細説明なし)
・「black & White & music」:ブルックリンでの音楽イベント開催。ユベントスのブランドイメージについて知ってもらう。

<ファンとの接点を作るための包括的な取り組み>

・先述の3つのターゲット層に対し、ブランドの接点を作るために包括的にアプローチする必要がある。
 →アカデミー&ツアー 
 →グッズストア
 →ブランディング・コンテンツ
 →パートナーシップ:全てのパートナーと結びつきを強める必要がある。どれだけ関係が強いかが重要。共通のストーリーがあること。
 →トラベル:旅行部門を作った。ユヴェントスの試合観戦以外にも、イタリアを周遊するツアーを売る。(ユヴェントスが、イタリアの”代表”として)
 →カフェ:中国でオープン。食を呼び水に人を呼び込む。カフェを媒体にストーリーを伝える。(結果、グッズを買ってもらう)
 →ホテル&メディカル:これまでにない接点を作るため。プラットフォームの1つに。
・これらをトリガーとして、ユヴェントスを知り、体験してもらう。次のステップへ。
・大切なのは、1人1人にコンテンツをタイムリーに見せること。

【雑感】

・ファンへのリーチ手段として、アカデミーとツアーが同じ括りになっているのが興味深い。
・インターナショナルなファン:2~3チームをフォローしているような人、は確かにその通り。かつてフェラン・ソリアーノがジャパンツアーの際にオレゲールのチャントを歌っていた日本人を見てバルサへの想いの強さを知り、日本でソシオ募集を始めたという話があったが、どちらかというとユヴェントスの認識の方が(少なくとも今は)正しいかも。
・パートナーとの共通のストーリー。スポンサーの数ではなく、つながりの質や密度。
・ただ全般に「まずサッカーに注力した」数年間が礎になっているが、国内リーグ上位→チャンピオンズリーグ進出で多額の放映権料ゲット、というモデルに乗ることが重要であるのは言うまでもないだろう。中堅クラブが同じ戦略をとれるか、というと難しい。
・同時通訳がサッカーを知らない女性?の英語だったため細かいニュアンスが伝わらなかった。

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