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20-21シーズン セリエA第2節 トリノvsアタランタ ~可能な限りの想定~

0.はじめに

 皆さんごきげんよう。マッチングアプリで「趣味・サッカー観戦」の女性をとりあえず探してみるけど、大抵レッズサポか鹿島サポで賢者モードに切り替わる男・アジアンベコムです。
 今週はミッドウィークにJリーグ開催がないので、夜中に噂のアタランタの試合を見ています。去年から数試合見ているんですけど、たまにはこういうのを書いてみるのもいいかと思って、です。変則的な日程となり、第2節が9/26、第1節が9/30開催でシーズンが開幕しています。

1.スターティングメンバー

 めんどいので交代選手は割愛します。トリノは2トップとGKは知ってます。アタランタは2トップとトップ下のアレハンドロゴメスはわかります。この図を作る過程で色々調べていましたが、左右のWBはドイツとオランダだったり多国籍軍+地元出身のイタリア人、という構成でしょうか。CB中央のカルダラはボヌッチとトレードでユベントスに移籍した選手なんですね。13番なのはネスタ意識でしょうか。後は、メンタル面のコンディション不良でこの試合を欠場しているイリチッチも知ってます。昨シーズン何試合か見た感じでは、いるといないとで相当影響がありそうな選手です。あと英語で表記しているのは、外国人選手で名前が長いとマーカーが被って嫌だからです(英語表記の方が短くて済む場合が多い)。

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2.アタランタの狙い

2-1 高速かつダイレクトなアタック

 簡単に言うと、前方のスペースを使ったダイレクトな、ゴールに最短距離かつスピーディに向かうアタックがファーストチョイスです。
 速くゴールに向かうための最低条件は、走力とスペースです。走力は説明不要だと思いますが、スペースは、あればあるほど選手が持つスピードを削がずにゴールに向かうことができます。
 スペースがありすぎる(ゴールまでの距離が長すぎる)、かつ相手のDFが背後に強い(速い)選手だと走り負けてしまうこともありますが、ムリエル、サパタの2トップは大抵のDFに勝てる走力と強さがあります。イリチッチとゴメスがトップに入ることもありますが、この2人はタイプが違うので、相手によって使い分けているんじゃないかと思います。

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2-2 狙いたい展開への誘導

 このダイレクトなオフェンスは、特徴的なマンマークディフェンスから始まっています。相手がボールを保持している際のアタランタは、基本はセンターサークル頂点付近に2トップを設定して守備をセットします。この日はトップ下に㉑ベレングエルを配する1-4-3-1-2のトリノ相手ということで、上記のような配置でマークを決めます。
 強みと言うかコンサドーレと比較すると、冒頭に言及したCBの⑬カルデラが相手のFWじゃなくてトップ下の選手をマークできる柔軟性があるのは、戦術的には非常に大きなアドバンテージといっていいでしょう。このあたりはミシャの言うトータルフットボールもそうですが、尖りすぎているスペシャリストが何人もいると、相手の動きに対してリアクションが難しくなります。マンマークはそれ自体リアクションというか、「おれDFたくさん起用するの嫌いだからうちのチームはCB1人だけな」というのは通じません。相手が2トップならCBを2人用意しないと、純粋な意味でのマンマークは成立しませんので。
 マンマークの度合いとしては、自陣では基本的に相手にフリーな選手を作ることは許さず、例えば相手の2トップが前後で深さを作るポジションをとる時、アタランタのDFはそれぞれにマンマークでついていきます。なので、トリノで言うと⑨ベロッティが引いて、⑪ザザがトップに1人で張るシチュエーションでは、④シュタロはベロッティについていく。左CBの②トロイがザザを1人で守るので、トリノがザザに長いフィードを当てると、その瞬間、GK以外は誰もトロイの背後をカバーしてくれない状況の純粋なマンマークでの対応が基本です。絶対抜かれてはいけないのですが、DFとしてはトラップの瞬間は最大の狙いどころですので、ボールが入るとアグレッシブにアタックします。

 対面の選手をマークするとともに、中央に絞ったポジションを取ることで、相手の攻撃をサイドに誘導することが重要なポイントです。トリノのように相手が4バックだと、相手のSBをウイングバックがマークしますが、このWBは最初は高い位置取りをしない。これは一種のリスクマネジメントでもあるし、サイドに誘導する仕組みでもあります。

2-3 奪ってダイレクトな攻撃へ

 極めてベーシックな話ですが、サイドに誘導することで守備側としては、相手の展開を限定できる、そして反対サイドを捨てることで密度を高め、局面で数的優位で守れるメリットがあります。特にマンマークだと、純粋なマンマークを仮に遂行するならば局面で絶対に数的優位にはならない。1on1で勝てる相手ならいいですけど、勝てないならかなり厳しくなる。正しく運用できるなら枚数は揃っているに越したことはないです。
 アタランタはボールサイドの選手と前線の選手に対してはマーカーを維持しますが、例えば下図の、トップ下の⑩アレハンドロゴメスは、状況によっては88リンコンのマークを捨ててボールサイドのスペースを切ります。リンコンは浮く形になりますが、もし何らかリンコンに出ればゴメスがリカバリーするか、絞っている⑮デローンがカバーする等で対応する。このやり方自体は札幌が当初試行していたものとも近いと思います。

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 ゾーン1(自陣ゴール前30m)までの侵入を許さず、ゾーン2(ピッチ中央)でボールを回収できれば、狙っているダイレクトなアタックが発動します。
 奪った後は、ボールサイドのウイングバックがまず縦に抜ける動きをし、相手のSBの背後の強襲を狙います。この時の動きには迷いがなく、ネガティブトランジションで必ず出遅れてしまう相手SBは頻繁に置き去りにされてしまいます。なので、CBがカバーしたいところですが、CBが動けば2トップが背後を狙うので、ピークのチアゴシウバのような突出した選手でない限りは、サイドを爆走するアタランタのWBをCBがカバーリングするのは勇気が必要になります。
 一連のプレーで指摘できるのは、アタランタの選手はポジションを変えすぎない、具体的には横移動が少ないので、WBと2トップは決まったポジションから、そのまま敵陣ゴールラインに向かって直線的に走ることができます。これについては、相手がそれこそミシャチームのような大胆なポジションチェンジを好むチームだとどうなる?とも考えますが、恐らくセンターサークルまで待ってからマンマーク対応をする(オールコートではない)ことと、ゾーナルな守備を併用しているので、本来のポジションから大きく乖離することにはならないと予想します。

2-4 ビルドアップからのアタック

 ここまで読んで、勘のいい方はこんなことを考えるかもしれません。

 「それ、ソリボールで詰まないか?」

 真面目に話すと、相手がゴール前を固めてスペースを与えてくれない場合はどうするんですか、ということです。ヨーロッパでは反町監督の松本山雅のような極端にゴール前を固めて、トップの大型選手に放り込んでシャドーが爆走するスタイルはあまり見ないのもありますが、それはシンプルにソリボール的なチームの攻略法が一定程度知れ渡っているのがあると思います。
 アタランタは引いてくる相手に対しては、自陣に引き込んでスペースを作って縦に突破を図ります。これもサイドを起点に行われますが、恐らく失敗した時にサイドで失う形であれば、リカバリーが効くことが大きいためだと考えられます。
  左サイドでの展開を例に説明します。どのチームも、どのようなシステムでも、大抵サイドは最大2枚で守るのがサッカーの原則です。稀にサイド1枚のチームや、かつてのザッケローニのチームはサイド3枚と形容できると思いますが、2枚がベーシックだといっていいでしょう。アタランタの左CB、左利きのDFトロイは、相手のサイド2枚のうち1枚を引き付ける役割を持ちます。1-4-4-2ならサイドハーフの選手がターゲットです。1-4-3-1-2のトリノに対しては、インサイドハーフの㉓メイテが該当します。
 もう一人、左WBの⑧ゴセンスもサイドに張り、ゴセンスはもう1枚のサイドの選手…トリノであれば㉗ヴォイヴォダを引き付けます。そのために、アタランタのウイングバックはビルドアップの際にかなり低めのポジションからスタートするのが特徴的です。低い位置でボールを回していれば、相手としては、そこにプレスをかけてボールを回収できればゴールに近い位置で攻撃を仕掛けられる。この”相手にとってのインセンティブ”を逆手に取ります

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 最も典型的な形は、ウイングバックにボールをつけて、相手のSBを引き出す。そしてその背後のスペースに、低い位置からウイングバックの⑧ゴセンス、㉝ハテブールが爆走して縦に突破します。
 この際にウイングバックがうまくサイドバックと入れ替われたり、単独で突破できればいいんですけど、単独で突破できて、アップダウンもする、守備もできる、フィニッシュのクオリティもある…こんなサイドプレイヤーはとてつもなく高価な時代になっています。ダニ・アウベスのような1つ欠点がある選手ですら、庶民のクラブには手が届かない金額です。
 恐らくアタランタの両ウイングバックも、静止した状態から仕掛けて無双できる選手ではない。但しオープンなスペースに出ていく走力は目を見張るものがあり、チームの設計においてはサイドプレイヤーはこの部分の能力が最重要視されていると思います。

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 単独突破が期待できないとなると、アウトサイドでのSBを引き付けて1on1での攻防でサポート役が欲しくなります。ここで顔を出すのが、フリーマンの⑩アレハンドロゴメス。ゴメスと、この試合は欠場のイリチッチはアタランタのエクストラプレイヤーで、この2人は他の選手とは異なり、横方向の列移動、そして縦方向の移動(主に落ちてボールに寄る動き)が認められています。
 ゴメスはチャナティップを彷彿とさせる機動的でクオリティのあるMFで、これもチャナティップのいい時と似ているのですが、失わない彼にボールを預けることで味方に時間を提供します。このゴメスのロールが1人しかいないこともあって、アタランタは一度攻撃のサイドが決まるとサイドチェンジをあまり使わない。サイドのトライアングル+ゴメスのスクエアでフリーの選手を作って、最後にウイングバックを縦に抜けさせる形を狙います。
 後は、ゴメスが積極的に下がってくる理由として、ゴールキーパーの57スポルティエッロにあまり負担をかけたくない、ほぼ専守防衛としたい考え方はあると思います。
 ウイングバックが抜けた時に、2トップが残って一気にゴール方向に突っ込む(中央レーン付近とハーフスペース付近)ので、相手のCBが簡単にカバーできないのはトランジションの際とも共通です。
 イリチッチに触れると、長いレンジのキックが正確で、シュートレンジが広いアタッカーで、この選手特性もあって下がっても仕事ができるFWだとの印象を受けます。この2人は下がって、ゴールから遠ざかってもクオリティを発揮できるタイプであるので、これはボールを受けに下がるだけでなく、相手のビルドアップへの対応として、マーク対象の選手がボールを運んでくるので下がって対応せざるを得ないようなシチュエーションでも、低い位置からアクションを開始して攻撃の形を作ってしまう。予算的に、アタランタは「持たざる者」だと思うのですが、この2人は明らかに特別なプレイヤーだと感じます思います

3.リスクマネジメント(アグレッシブなチャレンジ&迅速なカバー)

3-1 撤退の判断

 全般に、ここまでは机上論的な狙いや、狙っている形通りに展開できた場合の説明ですが、狙い通りの形にならなかった場合のアクション(リアクション?)についても見ていきます。
 2-1~2-3で見たアタランタのセットディフェンスは、「中央を切ってサイドに誘導、DFはFWをマンマークし、中央に誘い込んで奪う」というものです。
 ここの、中央で奪えずゴール前までの侵入を許した場合の対応を考えます。シチュエーションとして、仮にサイドに誘導した後、相手のインサイドハーフの選手がスペースに流れてマンマークを振り切ったとします。▼のような構図です。

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 この時のアタランタの対応は、マンマークの原則を一時的に捨て、とにかくゴール前の枚数確保のために高速で戻ります。CBの3人と両ウイングバックのこの切り替えの速さは驚異的で、ポジティブトランジションにも劣らないほど迅速な切り替えを見せます。
 この「例」では中盤センター2枚のうち⑪フロイラーがサイドのボールホルダーに出張していますが、中盤センターの2人も切り替えが速く、DFラインの前のスペースを埋めます。
 まず枚数確保を優先した上で、再び相手のFWを捕まえてゴール前で対抗します。

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 恐らく判断の基準として、マンマークで守っていながら「ボールが自分を越えるとすぐにカバーリングに切り替えて枚数を確保する」みたいな約束事があるのではないかと思います。勿論約束をしても破る大人は世の中にたくさんいるので、このタスクを遂行できる選手がチョイスされていると思います。

 そして引いて守った後に特筆する点がもう一つあります。自陣深くでボールをゲインしたとして、そこから再びどうやって前に出ていくか、という点は、サイドハーフを置かない3バック⇔5バックのチームに共通する課題だと言えると思います。
 アタランタの解決策は、ここでも⑩アレハンドロゴメスで、自陣深くでボールを奪った時に彼が下がってきて、ビルドアップの出口ないし中継点になります。ゴメスを一度経由して時間を作っている最中に、ウイングバックが本来のポジションに戻り、再び組み立てのフェーズに移行することができます。

3-2 ネガティブトランジション

 ビルドアップの失敗からのネガトラも同様の対応で、一時的にマークを流動化してボールホルダーにアタックします。この時も、中盤の攻防で、反対サイドのウイングバックが絞っているのが効いています
 ウイングプレイヤーがワイドに張っていると、この攻防に参加することが難しいのですが、アタランタのWBは最終ラインのプロテクトもできる、トランジションの際は中盤に加わって、誰かが空けた(マークがズレた)分のマークの受け渡し要員としても貢献することができるので、ネガトラの際に各選手は(本来のマーク対象を気にせず、捨てて)ボールホルダーに強くアタックできる構造となっています。

4.トリノの狙いと試合展開

 サッカーは相手を見てプレーするものなので、トリノのアタランタ対策についてももう少し触れてみます。
 ポジショナルなビルドアップにせよ、トランジションにせよ、トリノはアタランタのボール保持に対し、ボールサイドに寄せて守ることでスペースを圧縮しての対抗を試みていました。

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 イリチッチがいないアタランタは、あまりサイドチェンジを試みません。トリノの圧縮守備に対して真っ向勝負というか、サイドを変えずにそのまま得意のやり方で突っ込んでいく対応でした。これについては、突っ込んで突破できればいいのですが、仮に失敗してもトランジションからの対応で優位に立てるとの計算があるからだと思います。

 試合展開については、トリノが見事な攻撃で11分に先制します。先述の、アタランタのマーク関係(CB⑬カルダラがトップ下㉑ベレンゲルをマーク)を逆手に取り、ベレンゲルが中央からサイドに流れる。これでバイタルエリアにスペースを作り、77リネッティがドリブルでスルスルと侵入、最後に⑨ベロッティをマークしている④スタロを引き付けてからスルーパス。リネッティはそんなにドリブラーというタイプではないと思いますが、そんな彼もシチュエーションが整うと役割を遂行できる、狙い通りの形ではないでしょうか。

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 が、直後13分にアタランタが⑩ゴメスのミドルシュートで追いつきます。やはりこの時もゴメスは流動的に動いていて、下がったポジションからスタート。トリノはゾーン基調で守っており、アタランタの中盤に対して特定のマーカーを置かないのですが、アンカーの88リンコンと77リネッティの間にゴメスが後方から入ってきて、ここで捕まえるという対応になります。が、その前にゴメスが右足を振りぬき、ドライブがかかったシュートがゴール右隅に決まってGKシリグはノーチャンスでした。

 直後の14分にもアタランタのいい形がありました。結果的には⑧ゴセンスがオフサイドでしたが、この時はゴメスが下がっており中央にいない状態。なので、左CBの②トロイがコンドクション(運ぶドリブル)でトリノの㉓メイテを引き付けて、ゴセンスに渡そうとします。これがメイテに引っかかってカウンターのピンチなのですが、下がっていたゴメスがリカバリー。そしてボールを拾って振り向きざまに、裏を狙っていたゴセンスへ(この瞬間オフサイド)。アタランタは狙いたいマッチアップ(ゴセンスとSBの㉗ヴォイヴォダ)が明確に作れているし、その周辺にスペースもあるということで、再現性のある形だったと思います。

 21分のアタランタ。あんまり目立たないGKの57スポルティエッロがゴールキックで素晴らしいフィードを見せます。デローン、フロイラー、ゴメスと渡り、ゴメスが裏のムリエルへ浮き球のスルーパス。ムリエルがファーに強烈なシュートを突き刺し、パス4本で得点を奪ってしまいました。浮き球の難しいパスで、角度的にも所謂ビエルサゾーンを逸れていましたが、シュートが見事でした。

 アタランタの同数守備に対し、トリノはビルドアップで苦戦していた印象があります。が、ジャンパオロがポジションチェンジによる局面の同数状態解消を望まなかったのは、例えばアンカーの88リンコンを落とす(サリーダ・ラボルピアーナ)と、中央でボールをドライブさせる選手が1人減ってしまいますし、結局CBの2人がボールを運ぶ(コンドクション)必要があるので、根本的な解決にならないからだと思います。トリノはアタランタとは対照的に、GKシリグを使ってボールを大事にしつつ、トップ下の浮きやすい㉑ベレンゲルにボールを入れて、ギャップを突こうとしていたように思えます。

 41分、右サイドからデローンが対角のサパタにフィード。ゴセンス、ゴメスと左サイドで渡って、5秒前にデローンがフィードを蹴った時はゾーン2の右サイドで張っていた㉝ハテブールが大外を走ってきて、ゴメスの柔らかいクロスをファー詰めで1-3。これも攻撃が始まってから、4本のパスで決めてしまいました。

 直後の43分のトリノ。1点目と似た形で、左から⑬カルデラを動かしてスペースへの侵入を図ります。これはクリアされましたが、クリアボールが右サイドに転がり、右SBの㉗ヴォイヴォダがアーリークロス。ベロッティが頭で合わせて2-3。
 トリノはSBの攻撃参加はあまり多くないのですが、アーリークロスは比較的狙っていたように思えます。アタランタ相手に時間をかけると枚数が揃ってしまうので、その前にスペースを狙うという考え方でしょうか。また、この時は、⑧ゴセンスが最終ラインをカバーしているので、サイドが変わればヴォイヴォダはフリーになれる、という構造も味方しました。

 後半はアタランタが⑬カルダラに代えて⑥パロミノ。この選手が昨シーズンはレギュラーだったようです。トップ下のベレンゲル対策ということもあったのかもしれません。
 54分に中央に走り込んだデローンが決めて2-4。スコアはこのまま動かず終了します。

雑感・まとめ

 まずアタランタについて改めて思うのは、選手のアスリート能力が高い(特に前線)。そのアスリート能力やフィジカルについても様々な定義がありますが、「3回だけとんでもなく速く走れるけど他は寝てる」よりも、「90分の中で30回スプリントして、2~3回ビッグチャンスになることを理解している」選手の存在が大きいと思います。
 もう一つはリスクマネジメントで、何らかチャレンジをしている限りは何事もリスクが付きまとうのですが、「リスクを負ってプレーしていて俺らかっけー」的な発想で終わるのではなく、「リスクを負うことでこの部分でメリット、アドバンテージがあるし、ここはデメリットになる。そのデメリットで試合が決まってしまわないようにマネジメントしておこう」とする緻密な設計を感じます。
 あと、ものすごく大事な話ですが、松田浩さんがかつて言った通り「純粋なマンマークも純粋なゾーンディフェンスもこの世に存在しない」。アタランタもまずマンマーク基調でスタートしますが、最終的にはカバーリングだったり2人目がサポートしてボールを奪う設計になっています。その意味では、ミシャチームのディフェンスで「個の力」を強調しすぎているとしたら、それは軌道修正が必要でしょう。FWにそこまで守備が得意な選手を置かなくても成り立つと思います(某J様は、守備というよりポジティブトランジションでアドバンテージを活かせないのが課題でしょうか)。ただ、中盤は局面的に人を借りてくることでカバーリング関係を作れますが、最終ラインはそうはいかないので、恐らく「個の力」は最終ラインに必要なんだろうと思います。そう考えても、やはり人選は再考の余地があるでしょう。

 この試合だけではカバーしきれない、別のタイプのチームに対するリアクションも今後、見ていきたいと思います。それではみなさん、また逢う日まで、ごきげんよう。

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