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旅する都市計画

行ったことないのに

はじめに断っておきます。私はフライブルクに行ったことがありません。申し訳ございません。バーチャルです。

堅苦しい制度の説明ばかり続いていたのでもういい加減疲れてきました。好きなものであることは確かなのですが、そればかりというのもつまらないものです。読むほうはキットモットつまらないことでしょう。
なので、旅行した気持ちになって、都市計画という観点からブログ旅をしてみるのならちょっとは楽しいかな、と思いました。
最初は「恋する統計学」とかパクッて「恋する都市計画」とかにしようかな、とか思ってたんです。でもやっぱり世界は広いですね。同じこと考えている人はもういました。浅はかでごめんなさい。無難に「旅する都市計画」です。

行ったことないけど。実際に行くわけじゃないけど。

フライブルクとは

フライブルク・イム・ブライスガウはドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州にある人口23万人程度(2017年末時点)の都市です。フランスとの国境にほど近く、スイスからもそこそこに近いところにあります。シュヴァルツヴァルト(黒い森)山地の麓に位置し自然豊かで、フライブルク大学等を擁する学都としても栄えています。
そして何より、フライブルクは環境首都として世界的に有名な街です。

周辺の地理状況はこんな感じですね。

環境首都

戦後復興著しいドイツでは日本同様、1970年代から酸性雨による森林枯死、モータリゼーションと大気汚染等の環境問題が深刻化します。シュヴァルツヴァルトに囲まれたフライブルクではその影響は目に見える形で迫ってきました。また、原発建設反対運動などの市民学生の動きも相俟って、環境との共生が街の大きなテーマとなっていきます。
自然と調和した風景計画(Landschaftplan=ランドシャフトプラン)や19世紀の都市膨張時代(Gründerzeit=グリュンターツァイト)に形成された無秩序な既成市街地への対処、コンパクトな交通計画など、環境と都市計画の知見や実践も集まり、1990年代には「環境首都」としての地位を確立していきました。

交通

5路線43.9kmのトラムと18路線165.6kmのバス交通がフライブルクの都市の中を張り巡らされています。大体直径20kmの円の中に収まるほどの市域で、そのうち40%程度が森林ですから、結構な集密具合です。産業や雇用が創出され、地域交通が維持できる人口密度は大体140人/haと言われています。このためフライブルクでは戸建ては規制対象となっており、戦後一貫して集合住宅しか建築されていません。戸建ての住宅地だとどう頑張っても140人/haの人口密度は達成できませんからね。
トラムの軌道に緑があるのが良いですね。これは市の緑化方針によって実現されているものです。トラムはかつて廃止すら検討されていましたが、上述の酸性雨や大気汚染の問題からこのストックを再活用し歩行と自転車での生活を取り戻そうということで今に至っています。現在は全台低床のバリアフリー車となっているようです。

中心部は自動車の入場制限がかかっており、トラムと自転車と歩行者のみのところも多くあります。市民の主な移動手段は自転車のようです。自転車多すぎ。これはこれで問題もありそう。

住宅

フライブルクの住宅政策で最も有名なのがヴォーバン(Vauban)です。戦後フランス軍に占領されていた、中心地から3kmほど南西の38haの土地が返還され、そこに住宅地を造成したのが今日のヴォーバンの起源となっています。

ヴォーバンで興味深い点に、学習する都市計画というところがあります。1997年から10年かけて5500人が住まう街になったのですが、この間実に4回のBプランの変更がなされています。また、フライブルク市としての制度でも子供の都市計画参加があるなど興味深い点がいくつもあります。

ヴォーバンでは駐車場の設置も制限されています。また、屋上緑化やコジェネ、ソーラーパネルの設置が進んでおり、まさに環境首都といったところ。

庭先の緑化は多年草のハーブ類が基本。植えっぱなしの管理フリー。楽と言えば楽ですがそれなりに苦労もありそう。でもこれはこれでむき出しのアスファルトの黒で視界を埋め尽くされるよりは余程良い気もします。
ちなみにフライブルク市では樹木保護条例があり、そこそこ大きくなった樹木は景観保護、ビオトープ機能保護の観点から、たとえ個人所有であっても勝手に伐採したりすることができなくなります。この制度が運用できているのは地元のフライブルク大学の森林学部の協力あってこそです。さすが森の街。おかげで新興住宅地等においても樹齢立派な木がそこかしこにあるという光景が見られます。

行政

旅行というテーマなのであまり書き加えることもないのですが、市のホームページで素晴らしいと思った点を一つ。

こちらはホームページのキャプチャです。黄色いマーカーは私が加えました。「計画、建設、輸送」というタブがあります。そして、そのタブにとぶと、

進行中のプロジェクトやBプランなど細目があり、Bプランを選ぶと地図上に各計画が表示され、それを選択すると、

計画の詳細が表示されます。
これって素敵
住民参加が進んだ街ですからね。しかし、ざっと調べてみたところ、これは特別でもなんでもなく、同州州都であるシュトゥットガルトから東独の街まで、どこでも大体3クリックくらいでBプランの詳細まで飛ぶことができました。マップリンクがあるところないところ、文字情報だけのところ、PDFリンクのところなど、温度感に差はありますが、それだけみんな気になる情報なんですね。

おわりに

あまり外国を神聖視しないように後付けすると、かの国でも行政が計画を作って、そのあとお為ごかし的に住民参加の機会を設けておしまい、という流れはままあるようで、結局のところ地域住民の熱量によるなぁと思う次第です。でも、その熱量を上げるのも都市計画の役割だったりして。難しいですね。
あとは実際に住んでる方が万万万が一お読みくださったらきっとツッコミを入れてくれるでしょう。

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