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あのたび -腹痛とスマトラ島到着-

 インドネシアといえば何が思い浮かぶだろうか。たいていの日本人はインドとの違いがわからず地図上のどこにあるかもわからない。バリ島だけが有名な観光地で、他にはバドミントンが強いとかチェスの世界チャンピオンになったことがあるというくらい。

 数年前のスマトラ沖大地震も覚えている人がいるかもしれない。日本の震災よりもさらに大きい津波が襲って甚大な被害が発生した。ボクが旅行したのはその10年以上前の話しだ。

 マレーシアのペナン島からインドネシアのスマトラ島に渡る船があると聞き、飛行機よりもバス・船派のボクはそのフェリーを利用した。乗船前に出国手続きをしフェリーに乗る。数十人が乗れる程度の中規模の船で、デッキに椅子がまるで中学校の卒業式のように並んでいた。もちろん椅子は床に固定しているが。ほとんどが現地の人々で旅行者は皆無自分ひとりだった。

 蒸し暑い気候だったので涼しい席がよいとおもい、真正面に大きな扇風機らしきものが周っている所に座った。しかしこれが良くなかった。その状態で数時間座っていたらお腹が冷えてものすごく痛くなってきた。

 スマトラ島のベラワンという港に到着しイミグレーションで入国スタンプを押してもらえた。2003年当時はビザなし無料で2ヶ月滞在することができた。このあたりの情報も不明確で、この数カ月後から有料になったハズ。現在は1ヶ月の観光ビザが50$程度支払う必要がある。

 港に到着するやすぐトイレに駆け込んだ。しかし出ない。腹はキリキリと痛むのだが全く出る気配がない。旅行が長くなると便秘になる。移動が長いことが多くなるので、できるだけ大をしないように体と心が変化している気がする。バナナを食べるとうんこが固くなるという話をミツオさんに聞いた気もする。

 そうこうしているとバスに早く乗れ、出発するぞというようなことを言われる。どうやらベラワンからメダンという街へのバス代も料金に含まれていたらしい。もちろん外国人はボク一人であとはみなインドネシア人のようだ。

 そのバスが高速道路でもないのに飛ばすこと飛ばすこと。時速100キロくらいは出てるのではいだろうか。とにかくインドネシアのバスはガンガン飛ばす印象があり怖い。ずいぶんと走ったが道の両脇はヤシの木が延々と連なり風景が全く変わらない。しかも一直線に等間隔にきれいに植えられているのでこれは自生したものではなく、プランテーションとして栽培された輸出用のパーム油ヤシなのかもしれない。

 バスの中で再びお腹がもよおしてきた。もう我慢出来ない。このままだと座席でもらしてしまう。いつ街に着くかはわからない。景色は全く変わらない。あと何時間も着く気配はない。猛スピードで飛ばす運転手に「おい、止めてくれ、もれそうなんだ」とジェスチャーで伝える。と、なんなんだと仕方なくバスを止めてドアを開けてくれる。

 荷物は置いたまま、トイレットペーパー1ロールだけ持って走って飛び出し、草むらの奥の方までいきズボンを下げる。しかし出ない。お腹はキリキリと痛むがいくらふんばっても出てこない。しかしここで出さなければ…。戻って乗ってまたバスを止めることはできない。早くしろというクラクションが聞こえる。なんとか固いものが少しだけ出る。

 その後バスに戻り数時間後ようやくメダンの街に着く。目的の安宿がHOTEL ZAKIAという名前しかしらない。体調も悪いし降りた場所もわからないし歩いて行けるかもわからない。1人、親切そうな兄ちゃんが連れてってやるという。
 東南アジアでこういった場合はぼったくってくることが多いので注意が必要だ。しかしこの旅行者の少ないメダンでは客引きはほとんどいなかった。だから大丈夫だろう。乗り物はいらないと断る。どこへ連れて行かれるかわからないから。今ならUberやGrabというアプリで移動できるので安心なのだろうけど。

 すると歩いて案内してやるという。本当に親切なインドネシア人なのか、宿のスタッフかもしれない。その途中でも腹痛が間断なく襲ってきて、空き地のようなところに飛び込んで座って踏ん張った。数十分歩いてようやくHOTEL ZAKIAに到着。チェックインする前にまずトイレを使わせてもらう。

 インドネシアの安宿ではだいたいトイレと水浴び場が一緒になっている。シャワーはないことが多い。和式の便器と水を貯める所や大きなバケツがあり手桶が置いてある。水浴びのことをマンディといい、手桶ですくった水で体を洗い流す仕組みだ。トイレも同様でペーパーは設置していなく、大をしたあとは手桶で流し、右手に持った手桶で水を尻に流しながら左手で拭くという形式だ。慣れないと難しい。

 タイ旅行の途中から手動ウォシュレットには慣れ始めていたので、これはこれでトイレットペーパーを持参する必要もなく良い文化だとも思える。

 宿はうすぐらい牢獄のような部屋にベッドが何台かありドアは鉄格子のようでちょっと異様で怪しい雰囲気だ。スタッフは人懐こいが、ペナン島の宿で読んだ情報ノートによると評判は良くなく注意が必要とのこと。欧米系の旅行者が何人か泊まっていたので大丈夫かとは思うが。

 宿代はいくらか忘れてしまった。黄色く汚れたパンツとズボンを石鹸で手洗いして干す。夜ご飯は初めてのナシゴレン(まぜごはん≒チャーハン)が3500Rp(≒50円)。水は1.5リットルで1910Rp。100Rp単位のお金はないらしく、2000Rp出してお釣りはもらえなかった。

 ひどいインドネシアのスタート1日目だった。

インドネシアルート

(つづく)


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