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女性が視るホラーのヒロイン

知り合いの女性編集者から小説のネタにどうかと話されたとある高齢女性の設定がなかなか面白かった。

金のある夫に離婚された後、経済自力が出来ずにあっさりと貧困に陥り、既婚の息子を頼るも結局は巧くいかずに息子家族から疎遠にされ、同性の友達もなく、色恋に興味ないふりをすれど仕事先のろくに知らぬ男から粉かけられるといそいそと誘いに乗るほどに実は意欲は満々なのを隠せず。
言葉にする格好の良い強がりを己の行動で裏切ってしまうタイプだ。
周りの他人を何かと見下す感覚を根にして自分は人とは変わってるという錯覚の孤高に酔った中二病的な自負を捨てられぬまま老人になったのは、親しい人間関係を築けなかった故に自分を客観視してくれる目線を知らずに来たからなのだろう。
そんな孤独に強がりながら、自分を捨てた夫が重病となった弱気で助けを求めてきたら、人から頼られた歓喜をあらわに手を差し出したあたりは美談にもなりそうな展開となるものの。
あれよあれよというまに、元夫亡き後に自分のものになることを想定して元夫の金で自分の使い勝手の良い家財を買い換え、自分の金は少額の出費も惜しむのに人の金は簡単に使い果たし一文無しにしてしまう。
とにかく一文無しにするまでが速い。
その後は想定外になかなか死なない元夫の介護にうんざりして悪態をつきまくるが、ようやく亡くなった後は心から愛していたのだと美談仕立ての語りに酔い痴れる。

確かに真梨幸子氏あたりが書きそうなヒロインだ。
男にはこういうヒロインで物語は創れない。
女性目線で書くと、こんな設定も極上のホラーになるのだろう。



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