運動会はスポーツを楽しむ日(イギリスの学校のスポーツデイ)〜号令のない風景〜

あなたにとって運動会ってどういう日です(でした)か?
スポーツが得意なひとにはきっと楽しい日だったに違いありません。観に来るご家族にとっても。(誰も興味ないと思いますけど)運動が苦手だったわたしにとっては、特に楽しくない日でした。まぁ、そんなことはいいですね。お話を先へ進めます。

日本の学校の運動会では、事前にしっかりしたプログラムが作られて家族や地域の高齢者クラブなどにも配布され、当日は開会式、来賓の紹介、選手宣誓やラジオ体操、エールの交換などがあって、各学年の趣向を凝らした演し物や、何週間も前から練習してきたダンスや組体操などが繰り広げられ、各クラス精鋭の選手たちが全力で競い合うリレーで盛り上がったりして、最後に得点発表と優勝旗の授与、のようなかたちが日本の定番でしょうか。学校によってもちろん違うでしょうけれども。
このイベントを準備する先生たちも、校庭にトラックのラインを引いたり、観客席のロープを張ったり、案内表示を取り付けたり、前日からとても大変そうです。

さて、イギリスの学校にも運動会があります。スポーツデイ、といいます。
うちの子どもたちの小学校では2日間に分けて行われました。
日本の運動会しか知らないわたしには何もかもが違っていてカルチャーショックでした。
これをお読みくださっているあなたも、ここではこれからその違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。

1日目は、校庭でいろんな種目を楽しむ日。
入場行進もなければ開会式も選手宣誓もない、来賓紹介もない(そもそも来賓なんて来ていない)、ラジオ体操のようなものもありません。なんとなく始まる。
クラスごとに集合し、校庭のあちこちに用意された各種目を、クラスごとに楽しみながらゆったりと回ります。
どんな種目があるかというと、
・ボールを的に当てるゲーム
・輪投げ
・なわとび
・フラフープ
・地面に描いたわくをケンケンで跳ぶ遊び(日本のケンケンパみたい)
・小さなトラックを何周か持久走するもの
などです。

2日目は、30メートルほどの直線コースを使ったかけっこ及びそのアレンジ種目。
ゴールにはリボンを持った先生が2人立っています。
全校生徒を縦割りでカラー別に分け、各カラーから1人ずつ出場します。
子どもたちは自分のカラーのTシャツなどを着ていますがそれは各自で用意します。イラストがついててもOK。パパのブカブカのTシャツを着てる子もいます。
ゴールした順に高ポイントがもらえて、各カラーごとの合計ポイントを最後に競います。

内容は直線徒競走のアレンジです。
・麻袋に両足を入れてジャンプで前進していく
・コース上に5メートルおきにお手玉のような砂袋が置かれ、それを手前から拾ってスタートに戻りまた走って次のお手玉を拾ってスタートに戻りを繰り返し、最後はゴールまで疾走する
・小さいコーンが並んだところをジグザグに走る
・後ろ向きに走る
・ホッパーという、持ち手のついた大きいボールにまたがってジャンプして進む(上の写真)
・木製の卵模型でスプーンレース
・オーソドックスな短距離走
といった具合です。

ひたすら和やかです。苦しい顔になる種目ゼロ。人間ピラミッドもない。
事前に何週間も準備しなければいけないような種目もない。当日ぶっつけ本番だけ。

保護者は直線コースに沿って並べられているベンチにのんびり座って笑顔で声援を送ります。PTAのお手伝いもないので保護者はずっと気楽に見物しています。コースの反対側にはカラー別に分かれた子どもたちの観覧席があります。

スプーンレースで、上手な子はあっという間にゴールしました。
かと思うと1、2歩進むたびにポトッと卵を落とす子もいます(木製だから割れない)。
ひとり、あまりにもスプーンレースがその子に合ってなくて、このままではゴールまで何分もかかりそうな子がいました。
するとどうでしょう。ゴールのリボンを持ったふたりの先生が、ジリッジリッと選手に近づいて行くではありませんか。
ポトポト卵を落とす子に、コースの真ん中あたりでゴールのリボンが触れました。そこで観客からは大歓声と拍手が湧き起こりました。
選手の子、笑顔。ゴール係の先生、笑顔。観客、笑顔。大盛り上がり!
たいへんな歓声を全身に受けながら、選手の子は笑顔で自分の席に戻って行きました。

ビリになっても頑張っている子(たぶん本人は辛い)をリタイヤさせずに応援して、最後は感動のゴール!というようなことを、非常にあっさりと、やらないのです。
それを観ていて、あぁ、それでいいのだな、と思いました。すごくハッピーなムードをみんなで味わえた。スポーツを楽しむための日に、それ以上に必要なことがあるでしょうか。

こういう運動会を、イギリスの学校ではやっています。

ちょっと興味が湧いて、夫(ドイツ人)にドイツの運動会ってどうだったの?と訊くと、彼はあんまり好きじゃなかったみたいです。
基本的に、短距離走、砲丸投げ、幅跳びをひとりひとり順番に行なって、個人の記録を先生が測って、ひとりひとりがカルテをもらう。記録がよかった子は賞状がもらえる。親の観覧はなし。聞くだけでつまらなそう(ごめん)。あらためて夫に最近の運動会について調べてみてもらいましたが基本的には今でもこのスタイルが多いそうです。

ところで、日本の運動会や体育には戦争中の軍事教練の名残が見受けられますね。
号令でピシッと体を動かさせるところです。
これ、イギリスの学校では一切やめています。普段の学校生活でも、号令で生徒の体を動かすシーン(起立、礼、着席)はありません。

人間を号令で動かすって、本当に教育に必要なのかしら。
どう思われますか?

では、今日はこのへんで。
最後までありがとうございました。

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