母のチャーハン

「お母さんの作るチャーハンはベチャベチャで美味しくない」

みたいな“あるある”ってありますよね?

うちのお母さんが作るチャーハンもベチャベチャで味も薄味。
正直、美味しくなかったです。

でも、今になって考えてみると母は家族4人分のチャーハンを
普通のフライパンで、普通の火力のガスコンロで作るのです。
お店のチャーハンみたいにパラパラにならなくて当たり前です。
むしろ家族のために作ったことを感謝すべきですし、
パラパラにはならなくても母の手料理には愛がこもっていたはず。

それなのに高校生・大学生のころの僕は当てつけのように
母が見ている前で醤油やソースで味をつけなおしていました。
母は、自分が息子のために作った料理にそんなことをされる
ことがショックだったようで、何度かこのことで喧嘩にも
なりました。

それでも僕は母のベチャベチャのチャーハンが嫌いでした。

でも、1人暮らしを始めてからというもの、
たまに、あのベチャベチャチャーハンが食べたくなります。
皆さんの中にもそういう人は多いのではないでしょうか?

東京に引っ越したのち、2年ぶりに帰省した時に
久々に母親のチャーハンを食べました。

あいかわらずベチャベチャで薄味。
でも、母のチャーハンはマズいはずなのに美味しく感じ、
なつかしさで、ちょっとウルっと来てしまいました。
僕にとってベチャベチャのチャーハンは“家族の味”。
そして“おふくろの味”だったことに気づきました。

それから5か月ほど経ったある日、仕事を一緒にやらせていただいている
方たちに、日本でも5本の指に入る超高級中華料理店に
連れて行っていただきました。

超有名な超高級店というだけあって運ばれてくる料理は
全て絶品。

そして食事も終盤に差し掛かったころ、チャーハンが
運ばれて来ました。

たかがチャーハンなのにこんなにも美味いのかと感動を覚えるほど
の味でした。さすがは超一流店。

そして、こう思いました。

「家族の思い出がいっぱい詰まった母のチャーハンより
赤坂離宮のチャーハンのほうがウマい」

1流の味の前には家族の思い出も無力だという話です。


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