BitMEX社長アーサーのインタビュー要点まとめ(4月11日配信・リンク付き)

海外のYouTuberである"VentureCoinist"が4月11日にアップロードしたBitMEXの社長であるアーサー・ヘイズ氏とのインタビューが興味深い内容盛りだくさんだったので、要点をまとめます。
トレーダーのみならず、彼の考えるビットコインの将来性・もたらす価値についても示唆のある内容だったので、さらっと流しながら楽しんで下さい。

(欲しいって表明してくれた方1人につき1分寄付するつもりで書きました)

BitMEXのこれから

Q. ビットコインのオプション取引拡充の予定はあるのか?
アーサー:既存のビットコインオプションの問題点だと思うところを改善する方法を大学教授数人と開発していて、12-18ヶ月ほどでオプション取引ができるようになるかもしれないが、もう少しオプション市場が成熟するのに時間がかかると思っている。

Q. BitMEXがいま提供している商品に近いものでは何か計画されているのか。アルトコインの無期限先物は拡充されるのか(例えばXRPUSDなど)?
アーサー:去年の8月にETHUSD無期限先物をローンチしてから2ヶ月で業界で一番流動性の高いETHUSD市場になった。ビットコインを使ってビットコインと無関係なリスクを取引する「クアント」であることが特徴で、細かい特徴はたくさんあるけど、投機家にとっては便利と思われたのではないか。他のアルトコインでもローンチしたいと思っているが、ETHUSDの成功でトレードエンジンへの負荷がすごいことになってしまっているので、トレードエンジンの開発チームがGOサインを出すまでは新しい商品は上場できない(笑)

まだ通貨は決めていないが、彼らの許可がもらえたらもう1つコインを追加したいと思っている。クアントという形式は証拠金取引に向いていて大変気に入っている。

Q. ICOブームが落ち着いてきた欧米に比べて、アジアでは未だに多くの新しいトークンが生まれているようだが、もしトレードエンジンの制約がなければバイナンスのように大量のコインを上場させたいと思っているか?
アーサー:デリバティブの上場には現物の流動性がないといけない。現物の流動性が低すぎるとマーケットメイカーのリスク管理のためのスプレッドが大きくなってしまう。なのでおそらくバイナンスほど多くのコインを上場することは不可能だろう。レバレッジを使って現物よりスプレッドが大きい商品を触るのは顧客にとってデメリットが大きい。

Q. CMEなどを競争相手としてどう見ているか?
アーサー:CMEの先物は仮想通貨エコシステム全体にとって非常にいいものだと思う。BitMEXの顧客は主にアジアや東欧の少しレベルの高い小口投資家だが、CMEの顧客はアメリカ人やゴールドマン・サックス、フィデリティなどの機関投資家な上に、ドル証拠金で低レバレッジを提供している。我々にはできない商品を、BitMEXではトレードできない顧客に届けているCMEは新たな参加者をもたらし、裁定の機会も作り出したと思う。そしてその裁定がBitMEXの出来高の増加にもつながるという効果もあるので、BitMEXとしては流動性が増加したことを歓迎している。皆にとっていいことなはずだ。

Q. IEOモデルやBNBなどの取引所トークン、またバイナンスの証拠金取引の噂などあるが、取引所の収益構造が変化していく中、BitMEXは独自のトークンを発行しようか検討したことがあるか。
アーサー:取引所トークンの法律面は難しいし、我々の法務部はすでに十分忙しい。お金は足りているので、取引所トークンにまつわる厄介事はごめんだ。BNBはクリエイティブなソリューションだが、BitMEXがカネ目当てで悩みの種になるトークンを発行することはしない。

Q. BitMEXは仮想通貨のみならず世界の金融市場において最大級になりたいというビジョンを去年発言していたが、ビットコイン市場と比較して遥かに大きい金融市場全体にどうやって食い込んでいくのか。
アーサー:世代毎に消費や投資の傾向が変わっていく。70-80年代に戦後生まれの人達は人生の中で所得が最大限になる時期に家庭を築いたり株や債券を買ったりしたし、会社で言えばP&Gからヴァンガードへと消費傾向の移り変わりの波に乗ってきた。その時々の消費スタイルに密接した成長産業に投資しつづけてきた。

今では彼らは引退して資産を処分していく段階にあり、彼らの趣向は昔ほど重要ではなくなってきている。そして若い人はデジタルネイティブで、人間との関わりがないサービスに抵抗がない。この消費スタイルの世代間の変化を金融業界に持ち込むと、株や金融商品が平日昼間しか取引できないのはアナログ時代の名残で、職場からトレードしたり、午前5時にインスタグラムを見る時代からしたら、むしろ24時間いつでもネットから取引できないことが不自然だ。人々は完全にデジタルなものをスマホでトレードすることに抵抗を感じなくなっていくはず。今の若者が年を重ねてどんどん稼ぐようになってくると変化の圧力がかかるようになる。

ビットコインを使った投資のこれから

Q. 今の仮想通貨取引所はトレード重視だが、金利を生む「投資型」の商品について開発予定などはあるのか。仮想通貨の将来にはトレードだけではなく貯蓄や積立という側面も開発が必要なのではないか。
アーサー:現状では金利を得るには得体の知れない誰かに貸すくらいしかないが、デフォルト率がわりと高いのでリスクが高い。

金融市場では格付けの高い社債がよく発行されるが、ほとんどの場合その会社がその社債に社運を賭けているのではなく、資金効率を上げるために借りているので非常に低リスクと評価される。そこで、例えばビットコインを収入として得る大手の取引所などがビットコイン建ての短期債を発行して、マーケットがその会社の信用リスクを評価するとしよう。そういった低リスク社債が出てくれば、それと比較して適正な金利を考えることができるようになるのではないか。もちろん、何かのプロジェクトを始める際の資金調達方法にもなりうる。

こうしてビットコインの上で債券市場が発達すれば、ビットコインの外の通貨(法定通貨など)とは分離した、ビットコインで取引する会社間のいつでもどこでもアクセスできる債券市場ができるのではないか。数ヶ月以内には何らかの形で市場の興味を測りたい。

BitMEXの立場としては、債券市場は金融市場の中で一番大きいので、債権デリバティブの取引ができるようになれば、世界一大きくて儲かる取引市場に一歩近づくと思う。

Q. ビットコインで株式など既存の証券に投資するアイデアは?
アーサー:BitMEXがシード投資をしたスタートアップがあって、彼らはうまくいけば今年夏までにビットコインでS&P500やNASDAQなどの株価指数をビットコインを使って「ドル建て」で買えるサービスをリリースできるかもしれない。このサービスを使えば、新興国に住んでいるなどして世界で最も流動性が高く有名な株価指数に投資することができなかった人がビットコインを経由することによって株価指数に投資することができるようになると考えている。これはあくまでもBitMEXとは完全に別のプラットフォームだ。

サーバーが重い!System Overloadedについて

Q. 「System Overloaded」はどういう状態で、解決するつもりはあるのか?
アーサー:去年の大型アップデートで改善したが、ETHUSDの成功によって再び悪化してしまった。他の取引所が「うちはBitMEXみたいにならないよ」って言うけど、うちと同じくらい出来高捌いたら絶対なる(笑)

ビットコインや仮想通貨の取引所はNYSEなど既存の取引市場とは設計が根本的に違う。既存の取引所は会員制で、会員(証券会社など)がそれぞれの顧客の証拠金などをチェックしてから注文を市場に流す。一般の投資家は直接市場にアクセスできず、証券会社経由で注文を出してもらっているのだ。つまり既存の証券取引所などは数少ない会員の間で、会員が責任を持つ注文を約定させるだけなので高速なのだ。

一方、仮想通貨取引所の世界ではインターネットに接続さえすれば誰でも取引所に直接アクセスできる自由な世界なので、おびただしい量の注文を全て捌く必要が出てくる。特に我々は最大100倍というレバレッジを提供しているので注文されるたびに慎重に証拠金の計算をしなければならないし、実際にそれが一番処理が重い部分だ。しかも、0.5%の変動でロスカットするようなポジションが多数あるBitMEXが一旦停止して解決するわけにもいかない。とにかく、今はトレードエンジン専任の開発チームが再設計して並列処理化を進めて高速化を図っているところだ。

また、System Overloadedの通知を見ると最低な気分になるかもしれないが、もしその通知がない代わりに発注した注文が10秒後、1分後に約定したらどんな気分だろう。最悪で10分、20分経ってから注文が受け付けられたりするプラットフォームもあると聞いている。BitMEXでは意図的でない約定や、注文が受け付けられたか分からない状況を避けるため、3-5秒以内に通知を表示して注文が通ったかどうかがわかるようにしている。処理できる量が限界に達しているなら、注文を受け付けないことのほうがユーザーにとっていいことだと考えている。

Q. System Overloaded時に優先的に注文を受け付けられるアカウントがあったり、何か注文が受け付けられやすくなる基準があるのか?
アーサー:System Overloadedは誰もが平等に経験する不便だ。「金を払うからそのときは優先で注文を通してくれ」というリクエストを頻繁にいただくが、我々はフェアプレーを重視していて、全てのアカウントは平等との理念のもと、System Overloaded時には皆が同様に苦しむ設計になっている。

保険基金がでかすぎるんじゃないか?

Q. 保険基金が順調に大きくなっているが、なんのためにあって、大きすぎるのではないか?
アーサー:保険基金はロスカットされたポジションをBitMEXが引き継いだとき、ロスカット価格より有利な価格でクローズできた場合にその差額が追加され、利益の出る価格でクローズできなかった場合に支出されることで補填される。BitMEXがゼロカットの取引所である以上必要なものだ。

例えば2017年3月にウィンクルボス兄弟のETF申請が却下されたときに5分で30%ほど価格が下落したが、そのとき数百BTCあった保険基金が全滅してしまったので、利益の出ているショートを強制利確することによってロングのロスカットを解消する必要が出てきてしまった。せっかく正しいショートポジションを取れていたのにゼロカット制度のせいで勝手に利確されるのは腹立たしいことだ。しかし、我々がポジションの決済を保証するとなると、BitMEX社の資産にリスクが及んでしまう。だから全ユーザーで損失に備えるために保険基金がある。ちなみに、CMEなどでは会員が証拠金を預けてこの事態に備えるので、保険基金は存在しない。

ここしばらくボラティリティの低い状態が続いているので過多に見えるかも知れないが、私は今の金額でも保険基金は全然足りないくらいだと思っている。保険基金が大きければ大きいほど瞬発的なボラティリティが出ても利益が確保されるだろうという信頼が増して、大口の注文や長期的な注文が入りやすくなる。充分に大きくなったら保険基金に触れるのではなく、維持証拠金を下げたりするなどして対応するつもりだ。

仮想通貨エコシステムへの還元について

Q. 多くの人がBitMEXを利益主義と批判するが、一方でBitMEX Researchの無料でハイクオリティな記事や、英国の新聞でのビットコイン10周年おめでとう広告など利益を直接生み出さないこともしている。なぜ?
アーサー:BitMEXやこの業界の多くの会社の成功はビットコインとその周りの環境が盤石で機能していることが前提となっている。BitMEXはビットコインのみを証拠金として受け付けることによって新規顧客が10分程度で取引開始できる環境を提供できるし、入出金の手間に関しても人手を省きコストダウンにつながっている。銀行等の金融機関に認められる必要もない。我々はビットコインなしには存在できないと考えているので、公正な研究記事を公開したり、一部の利益でビットコインに関する広告を打つなどしてビットコインをめぐる環境に投資することにしている。

相場について(2019年)

Q. 仮想通貨の冬はまだ終わっていないのか?
アーサー:最近も言ったが、ここ一ヶ月ほどでMMTという極端な金融緩和政策が話題になっているが、人類の金融史の流れで見た現時点では各国政府や中央銀行は金融マーケットが下がることをあらゆる手で阻止するのではないかと思っている。なぜなら各国中銀が金融引き締めムードを出していたときにはマーケットが明らかに苦しんでいたが、中央銀行がビビってからはMMTが出てきて金融緩和継続を正当化する流れになっている。私は、次なる緩和マネーは一番ハイリスク・ハイリターンな市場である暗号資産に流れ込むと考えている。そのペースによっては2019年末までに10,000ドルもありえると思う。2,000-3,000ドルくらいまで下がる可能性についてはわからないが、上昇も一気に起きるとは思わない。まずはLyft, Uber, Pinterestなどのテック系のIPOが金融緩和マネーを惹きつけるのではないか。次から次へと「利益を生んでいないユニコーン企業」にお金が循環していく流れの中で暗号資産に流れてくるのでは。

相場について(中長期)

Q. ビットコインの長期的な成功はどう思うか?3-5年後の価格予想は?
アーサー:お金に関するプライバシーは5年以内に全くなくなると思う。キャッシュレス化が進むのはUX的にはとても便利だが、「なに主義」を標榜しているかに関わらず、政府というものは権力を使ってなにかと市民の生活をコントロールし、市民にとって欠かせない存在となりたがるもの。最後のフロンティアは「お金」なのだ。基本的には政府は現金を嫌う。徴税が難しいし、何を買うのに使われているのかわからない。でも便利なアプリで全ての支払が済めば、運営者はあなたのすべての購買行動を知ることができるし、正確に税金を請求できるし、ルールに従わない場合は「お金」を使う権限を剥奪できる。中国やインドから始まりそうだが、世界中の政府にとって魅力的なシステムでいずれ導入されるだろう。そのとき、人々は「お金に関するプライバシー」の本当の意味を理解するだろう。でも、大量の金塊を持っていたって不便がすぎる。そこでデジタルで誰の許可もいらない通貨があったらどうだろう。今まで10ドル札で買えてた大麻がこっそり買えない。高級車買ったら税金ごまかしてたのがばれちゃった。という状況になって始めて皆に理解されるのが暗号資産だろう。
ビットコインが使われるかどうかはわからないが、一番認知されているし、そのとき使われる可能性が一番高いだろう。3-5年後の価格はわからないけど…50,000ドルかな?もし世界が私の思い描いた通りになってしまうのなら、もっと高くなっているかもしれない。

Q. 仮想通貨のボラティリティはいつまで続く?
アーサー:ビットコイン市場の規模が世界経済に比べて小さいことがボラティリティの原因。例えば、1億人が突然お金のプライバシーを求めて数千ドル分のビットコインを買ったらすごいボラティリティが生まれるだろう。ということはビットコインの値段がとても高くなるかゼロになるまでボラティリティは長く続くだろう。
そうしてボラティリティが下がったら、トレーダーはレバレッジを上げればいいのさ。

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btc_dakara

ビットコインが好きです。「ビットコイン研究所」に寄稿してるほか、トラストレスサービス株式会社でBTCLogなどの開発をしています。 ツイッター @btc_dakara

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