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Jimin【Like Crazy】から見るジミンくんの到達点

そもそものきっかけは、TikTokの、ジミンくんとTXTのダンスチャレンジを見たことだった気がする。

BTSと同じ事務所のTXTの、スビンくん、ボムギュくんと踊る、【Like Crazy】のチャレンジ。ジミンくんを見ていると、TXTの2人とダンスのニュアンスが微妙に違う。何が違うのか…と見ているうちに、ジミンくんが振り付けにどんなイメージを乗せているか、少しだけ分かったような気がした(ちなみに、解釈が違いはするが、TXTの二人は恐ろしく世界観を揃えて踊っているので、別の意味で非常に感心する。よく訓練された子たち…そして何と脛の長い、腿の長い、足の細い子たちなんだ…)。

この、何かを下から何かを掬い上げるような仕草の後、

腕を頭に沿って下ろしながら、すっと立つ動作。ジミンくんは、首筋が伸びている。少しだけ顎先が上がって、見下ろす感じがある。

その後の「I'm fallin'  I'm fallin' I'm fallin'」の繰り返しでは、二人に比べると、ジミンくんは、ちょっと気持ち良さそうに見える。ような気がする。

ああ…。
そうなのか…。
「I'm fallin'」
「ああ、僕は落ちていく」
それはちょっと、恍惚感のある感じなのか…。

そう思ってから見ると、下から何か掬い上げるのは、水面から掬った水を頭から浴びているようにも見えるし、その後のステップは少しサーフィンのような波乗りしている雰囲気もある。濡れて、沈んで、堕ちて、愉しい。そんな感情。

j-hopeくんによる【Like Crazy】のチャレンジは、j-hopeは、肩の竦め方がなんだかもう、やったらにセクシーでわたしはくら〜〜っとしたんだけど、彼は、見ればなるほど、この、下から何か掬ったものを被り、「堕ちて」いくことに対して、「恍惚のある気持ちよさ」をはっきり汲み取って、振りの中に表現しているように見える。さすがだ…さすがでしかない…。

「堕ちる快楽」。

自分の中にもそれがあることを思い出した時、一気にこの曲の風景が自分の中に見えたような気がした。この楽曲の世界、ジミンくんの振りのニュアンス、コレオも全部トータルして、とっても完成度高いものとして、自分に迫ってきた。

その世界にわたくし、もっと、すっかり入ってしまいたくて、英語バージョンを和訳してみました。

いやー。もう。ね。声のニュアンスそれぞれ、「この文章だからこの声」ってのが、もうね、「くーーーー!!!」って感じでね、たまらないです。たまらなかったです。ぜひ味わって欲しいんですけど。いい訳になったと思います。

英語バージョンの方が、詩の内容が、率直、具体的であるような気がしました。韓国語の方が詩的な感じがあります。若干内容に違いがあります。韓国語が正しいのか?英語はズレてるのか?わたしは、そういう訳じゃないんじゃないかな…と個人的には思っています。わたしのこういう訳は、意訳だと言って、もしかしたら怒る人がいるかもしれません…。

が、最近わたしは思うのですが、直訳って、日本語ですらない、と思っていて、だって直訳の日本語使う人、おらんやん。かつ、英語の単語の意味を「〇〇=△△」って対でデジタルに日本語に当てはめて理解しようとすると、それって、本当に言語を理解しようとする時には、遠回りなんじゃないかなあ、という気になってきていて。その言葉を発する感情のところにシンクロして、それを自分の日常に置き換えて、その時出てくる言葉が訳なんじゃないか。映画の翻訳などは、そういう感じなのかもしれません。歌の日本語字幕を作るのは、1本の映画を、自分の言葉で、持てるボキャブラリーを総動員して説明し直しているような、スケールの大きな中に自分が包まれている感覚があります。うん。わたしは日本語が好きなんだな。

She's saying
Baby, come and follow me
There's not a bad thing here tonight
Save your reasons all for later
Stay with me a little while

あの子が言うんだ
"あっちへ行こうよ"って
"もう 今夜は 何の悪いことも起きないから"
"全部 あとまわしにしちゃいなよ"
"ほんのちょっとだけだから"

これ、まさしく、わたしが「うーん、ここんとこ毎日呑んでんな…」と思いつつ、夜飯を作りながら感じる、酒瓶ちゃんからの誘惑、そのものですな。わたしが住んでいるところには公共交通機関がないので、万一子供に突然何かあった時に、自分の車で高速に乗って病院なりに連れて行かなくてはならない。いやいや。今夜、そんなことは、もう起こらないって、大丈夫だって。

間奏開け、

All my reflections, I
Can't even recognize

は、「自分についてのどんな反省も、認識することすら出来ない」と、英文は本来そういう意味になるようである。公式Weverse Liveでジミンくん本人がこの部分の詩について、「鏡に映った自分にすごく満足している」「何かに酔っていて」。そして、それは未成年には話してあげられないような何か、そんなことが含まれていたらしい。

うーん。何でしょう…。
彼は自分を見てどう思ったんでしょう…。
何かに酔って溺れているジミンくんが、セクシーすぎて、落ちない女はいない、というような感じだったんでしょうか…。

うーん…。

そうだろな…という感じしかしませんが…。

I'm outta my mind
Can you help me numb the pain?

この2文は、曲中最も胸が締め付けられる部分の一つですが、「I'm outta my mind」は普通「気が狂いそうだ」と訳すそうです。意識が、自分の中から逃げ出したくなってるのね。「Can you help me numb the pain?」は、「痛みを感じる僕を麻痺させるのを手伝ってくれる?」。シンプルに訳すなら「僕の痛みを麻痺させられる?」

この、「気が違うほどの痛み」をジミンくんに与えていたものが、何だったか、という話です。が、それは、うん…それぞれで想像するしかないですね…(個人的にはプレッシャーの類かな…という気でわたしはいますが…)。

仕事が引けるとすぐにアルコールに手を伸ばして、それも結構なピッチで飲み進めて、酔って気楽になっている暗い目の男がいて、その男がやたらセクシーだ、と。軽くて、快楽的で、快感があって、リラックスして、楽しんでいるのだけど、魂の底では悲鳴を上げている、と、そういう画なのかな、と。

冷めた快感…。

と、そこでステージです。
ステージを見ましょう…。

'1위/4K' 지민 (Jimin) - Like Crazy #엠카운트다운 EP.790 | Mnet 230330 방송

手のひらを下を向けた手の形とか、ステップとか、わたしが浅い知識で知ってるジャズダンスの感じがあります。ノリがあって、セクシーで、キレもあって、美しく、そして、圧倒的に冷めてるんです。一定の温度感で、一定して冷めている。BTSのメンバーみんなそうなんですけど、この、一貫した世界を保つ保持力っつうんですか、高い集中力、安定感、一瞬もブレません。

Like Crazy - Jimin [Music Bank] | KBS WORLD TV 230331

わたし、今回彼が出演した韓国の音楽ランキング番組の、3つのカムバックの【Like Crazy】が、振り切れて良かったと思ってるんですけど、こちら、2つ目の番組。よく、よく見ることができるのではないかと思うのですが、

このダンス、
実はむっちゃ難易度高くない…?

なんでもない風に踊ってるように見えるけど、いい具合に脱力して、「生まれた時からソウルの魂持ってますんで」みたいな、腰の位置も頭の位置も一定しているけど、この全身の筋力を柔らかく激しく使うダンスで、顔が安定してアンニュイなままって、本当は、むちゃくちゃな難易度なんじゃ…?

そして、バックダンサーさんも、ジミンくんと同じような温度感を保ったまま、ビシッと切れ良く決めてくれています。

この、完成度…

この、「大人」の完成度…

例えて言うなら、アイススケート選手の、オリンピックからプロに転向しました、みたいな。「競技が、違うぞ…?」という。重厚感というか、密度というか、バックダンサーさんたちの浮ついてなさと、安心感と、「あれ、これ、競技じゃなくプロのアイスショーだ」みたいな…この例えで適切か分からんが…。

MusicBankではジミンくんのインタビューも見たのですが、うーん…!司会の2人とジミンくんが、甲子園とプロ野球みたいな…競技が、違うぞ…?というような…この例えでいいのか分からんが…。わたくしには「若者達の息吹…汗〜青春と涙と〜」、と、一線を画してるようにしか見えなくて。えっと、同じ業種だよね、「アイドル」で合ってるよね、えっと、え?これもアイドル?で、いいの?

甘さと言うか、緩みがない。隙がない。精度が高くて、全部の意識レベルが、山の上の上の方まで行ってる…「これを見せたい」という、彼の世界を、彼が強いイメージでもって、ステージ上に創造している。彼自身が完璧に創造主になってる。

加えて、本番以外の時の腰の低さであるよ。ふにゃっと柔らかい人格よ。これだけ集中力を求められる場面で、あの曲想なら、リアクションがぶっきらぼうでも致し方ないと思うけど。でもそうじゃないんだよ〜ジミンくんはそうじゃないんだよ〜ある意味誰よりも自然体で人間的だよ〜。あれだけプレッシャーかかる状況で、自然体で、かつ人格者って、

Q.  何者よ…。

A.  これがBTSの「ジミン」よ…。

初回3月30日分のステージ前後のトークが収められているFanCam(こちらこちら)は、話している内容は、パクチー1割くらいしか聞き取れないものの、始終和やかでハッピーに満ちて、幸せな気持ち…。よかったね、よかったね、ジミンくん…。ジミンくんが幸福そうです。しかしあの人数と笑いの絶えない会話を成立させるジミンくんがすごいな。

[안방1열 직캠4K] 지민 'Like Crazy' (Jimin FanCam) @SBS Inkigayo 230402

そして3回目の音楽ランキング番組収録です。これはFanCamでして、オンエア映像は一瞬公開されたけど、すぐに国でロックかかって見られなくなってしまった、素晴らしかったのに…!また見たいのに…!!!見れる人は是非見てくださいね、埋め込んでおきますから。これ↓

Jimin - Like Crazy l SBS Inkigayo Ep 1177 | KOCOWA+ [ENG SUB]

3回目、収録、これ、パクチー的に前回前々回で「…!」とわずかに引っかかったポイント、が、

すべて、修正されてました…

調整して、精度をさらに上げて、素晴らしい!素晴らしい!ステージだったのではないでしょうか…!床も電光パネルなのが感覚を惑わせて踊りにくそうにしている気はしましたが、美しい美術のステージだと思いました(オンエア動画を見た感想)。

ちなみに、余談だが、【Set Me Free Pt.2】も3日目の収録が特に秀逸でしたな…!パクチー 比(こちらFanCam)。この曲、パフォーマンスしながら、歌いながらって、ものすごいハードタスクなんだな…やはり…と思いましたが、とても綺麗に調整されてました、3日目。さすが。やはり。

【Like Crazy】で、ジミンくんが背中を女子に預けて床に座るところがあります。デュエットダンスの後、「♪wasting time」のところです。

これは初日のM countdown 

この時、歌うジミンくんの腹筋の振動を、女性ダンサーさんが背中で感じるお役目が、「…ッくっ…尊い…!」とパクチー悶えておりましたので、ここが修正対象になってしまったのは、個人的には切なかったです。はい。え、あ、はい、どうでもいいでげすな。

この作品の「大人度」が高い理由には、ひとつ、「ダンサーさんの衣装の普通さ」があるんじゃないかと思います。女子がエロくない。露出が高くない。可愛すぎない。普通だ。そのまま外にも行ける。男性なんかもっとそう。もしかしたら「普通」を超えて「地味」まで行ってるかもしんない。このお衣装も90年代なの?j-hopeくんもそうでした。ジョングクくんもカルバン・クラインのアンバサダーでスタイリングが「90年代」と説明されてた。90年代何かあるの?わたしが持ってるのはこんなストレートのデニムばかりですけれど、呼んだ?

また、【Like Crazy】のダンス、基本的に男女の振り付けが一緒である。振り付けに性差が、基本的には、無い。間奏でジミンくんが踊るデュエットダンスですら、女性はミラーで同じ振り付けを踊っている。

【Set Me Free Pt.2】でも、同じく「男女一緒」のコンセプトで振り付けがなされていて、うむ!面白い!わたくし、非常に面白い!そもそも【Like Crazy】はジミンくんの振り付け自体がユニセックスっぽいというか、男性のニュアンスと女性のニュアンスを折衷したムードでした。だから、バックで踊る女性ダンサーから、時折男性的な感じも感じるし、男性ダンサーに時折女性的な感じも感じる。うむ…!大変興味深い!!!これ…K-POPでは革新的ではないの?女性が女性の「形」を当てがわれないって。ちなみに「愛嬌」もない。曲のコンセプトのためでもあると思うけど、無表情である。

そういう分かりやすい「可愛らしさ」「かっこよさ」で、ステージを構成していない。もう、本当に実力のみで勝負している。貫禄だ…プロのダンサーが、ダンスを見せてショーを魅せている、その、the・貫禄よ…。観客に媚びていない…これが「大人」を感じさせる要因なのかもしれない…。

そもそも【Like Crazy】、この曲であるよ。

ある男が、酩酊状態に毎晩逃避している様を歌っている。

そして、それをバキバキのキレキレで、精度高くシンクロするダンスを踊りながら、美しく歌い上げる男は、酒に逃げている男ではありえない。

と、見ている側にはここに、見るとはなしに矛盾を見ている。

かつ、毎日酒で気楽になっている男は、そんな状態の自分を完璧だと感じている。つまり自分のムードに陶酔している。このナルシズムとも言えそうな自己愛、しかも実際に文句なしに美しい(ナルシズムの語源、ナルキッソス君は美形だった)、その耽美的、退廃的、絶妙の均衡の上に成り立つ「美」は、完璧にダンスで表現されている。

つまり、このパフォーマンスは、3つのレイヤーが重なっている、多重的世界観を持った作品なのだ。

a. 酒に逃避する男
b. ナルシズムのある自己愛
c. 堅実で精度の高い修練と習熟

これを「シティポップ」と、ふわっと軽くイージーリスニングに仕上げたジミンくん、甘くセンチメンタルに歌い上げるジミンくん、a、b、c、は同一人物だぁよ、

歌、楽曲、ダンス、
ただただ、
「ジミンくん」
を軸にして、
多層に展開するレイヤー…。

このステージ…、

とにかく密度が、

重厚…っっ!!!!


これを、小細工なしで、小道具なしで、持てる実力だけで表現しきるジミンくん。どちらかと言えば、ニュートラルなスタイリング、黒髪で、ぼっちゃんぽい髪型がキュートである。ジミンくんが目指したもの、ジミンくんがBTSで獲得してきた集大成、その彼の持てるパワーが、これでもかと、さりげなくこれでもかと、一見そうとは見せないながら、ぎゅうぎゅうにぶち込まれていた、と、そういうステージだったのじゃないか…。

お目目の白いラインのメイクが、とにかく可愛かった…。

最初は、パクチー、そんなに気づいていなかった。あまりにきれいにまとまってるから、するっと受け取ってた。TXTとのチャレンジをきっかけに、「あ、あ…!あれあれ…」と深みにハマったのだった。

チャレンジとは…

良きものよの……!

感謝。


それでは、また!!




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