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j-hopeくんのドキュメンタリー『HOPE ON THE STREET』その1


BTSのj-hopeくんが、ストリートからダンスを、改めて追求し直す、旅するドキュメンタリー『HOPE ON THE STREET』。Amazon Primeなら観れるぞってことで、これは慎重に観ようと思って、ゆっくり観ています。

まず、軍隊による空白期があることを、却って自分を改めて見直すきっかけに出来ると考えたj-hopeくんが賢過ぎる。そして、ストリートダンスを教わるドキュメンタリーを撮るなら、「トラックがいるぞ」ってなって、それに付随したアルバムを作るj-hopeくんが、事業家として優秀が過ぎる…。Ep.1とEp.2を観ました。Ep.1が、全体を振り返った包括のような視点で、j-hopeくんの語りを中心に構成されているので、これは本編を観終わった後に、改めて観ると、彼の思いの、意味の分かる分量が多そう。

j-hopeくんの話を聞きながら思った。

このドキュメンタリーの、動機は「不安」だ。

だけど、j-hopeくん自身は、それをうまく説明できない。

MV付きで公開された、アルバムの終曲『NEURON』。

わたしはこれを、

「夢を叶えてBTSになった、これから先は何になればいい?」

という問いのように感じた。

早熟の人生が、勝ち組で安泰であろうと考えるのは、一般的な感覚かもしれない。芸能界は他の他業種に比べれば早熟の割合が多い。芸事、スポーツ、若くして才能を発揮して、世に認められ、高額の収入と、名声と、そういう人間がいたら羨ましいよね。わたしも20代、雑誌に取り上げられたり、TVに出演したり、インタビューを受けたりする同世代、同業の表現者は妬ましかったし、「ああならなくては」と思ったよ。あっちが「成功だ」と。

けれど、j-hopeくん、人生はまだまだ、まだまだ長くて先があるのに、もうほとんど人生が完成してしまって、上手くその先がビジョンできない。何をモチベーションに、どう人生を創造して行けば?

と、そこから、『HOPE ON THE STREET』というドキュメンタリーが、j-hopeくんにとって必要であったのだ、というように見えた。

ハクナムさんは、短い時間、j-hopeくんの先生でもあったらしい。ハクナムさんは、j-hopeくんの不安を、完全に、的確に理解して、それに答えを差し出している、完璧に…というように見えた。ハクナムさんは、j-hopeくんのように、世界中に熱狂的なファンがいるレベルで有名な訳では無いと思うが、代わりに、j-hopeくんが一足飛びで成長させなければならなかったものを、彼はじっくり丁寧に、自分と向き合って、すでに自分の感覚として、獲得している。

その価値と言ったら、

なんだ…比較しようがないじゃないか…。

早熟なことが成功で優勝で勝ち組かと言ったら、そうシンプルなもんじゃ無いんだな。若い時は、自分の自己顕示欲が、名声欲が、承認欲求が、全然そういう風に考えさせなかったけど、テトリスの凹凸みたいに、人生の早くに「凸」が有ったら、後半に「凹」があって、自分と異なるパターンを持った他者と噛み合うように出来てるのか…。早熟も、晩成も、であるからして平凡も、なんだ、優劣は無かったか。そういう感動を、ハクナムさんの、j-hopeくんに対する慈愛から感じた。フラットな精神性であることで見える視界の広さ。

EP.2を観ながら思った。j-hopeくん、彼のダンスを、ハクナムさんは本当に真剣に見てる…!j-hopeくんの不安。彼の反射的な動きは、「アイドルj-hope」がショービジネスに適応した結果になっている。瞬間的な華やかさ、愛嬌、短いモーション、印象的な動き。カメラと数秒の動画で魅せる撮影に対処することで身についた表現が、今の彼のストリートのスタイルになっている。

けれど、例えば5分で3つの山を作るようにダンスを構成しようとしたら、かなり丁寧に、じっくりと自分の内面に対峙する必要がある。

それをするのはつまり、「ハート」の部分で、「今の(自分の)気分」、に対峙している必要がある。ダンスは、ストリートダンスは、つまり即興的なダンスは、ハートで踊るのだ。ハートは、自分自身で握ってなかったら、他のどこにも存在しない。

ハクナムさんは、未来に対する不安を解決させるのは、今現在のハートをしっかり自分で捕まえて、今の中に感じる充足感の中にしかない。と、分かっている。そして、j-hopeくんが、自分のハートを捕まえられていないから未来を不安に感じるのだということも分かっている。

j-hopeくんの未来は、ほとんど全部会社の事業の為に存在して、機能している。そういう風にビジョンされてしまっている。彼の中で、その必要最低ラインが、まず重く、厳しい。もう他に何の余地も余力も残せないくらいに。

それに連動して、彼は、今現在の自分の肉体も、会社の仕事のために使って、「自分自身もの」だと思えていない。そりゃそうなのだ、彼の言動、行動、着るもの、髪型、全部、会社のイメージを、「BTS」ブランドのイメージを損なわせない、価値を上げるために存在している。彼の肉体は、「HYBEのBTS」に99%を占められている。だから、当然なのだ。ハクナムさんは、それも分かっている。j-hopeくんにかかっている責任や重圧は、そのくらい重い。自分の好き勝手に考えることが出来ない。

彼にとって、「j-hope」としてのアクションは、すでに反射になっている。

だけど、それは「言い訳なんだ」。

「今、この瞬間何を感じるか」は、持ち続けないとだめだ。

それがないと、心の底から踊れないから。

すべての責任と重圧をj-hopeくんの意識の中から避けた時、どんなに強い意識と意志が、彼を支配しても、動かない、彼がコアに持っている座標。世界でたったひとつの彼の自由。ダンスを踊って、何を感じているか、

自分は、今、何を感じているか、

これは、そういうためのプロセスなんだな、と思った。


…そう思って、どのセリフも、割合さらっと聞こえたEp.1を、もう一度観ると、

…むちゃくちゃ深いこと言ってるわ…!


つづく。




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