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「 未定 」#48

イズコは金の苺のケーキを持ちながらバッセーロの部屋の扉を開けた。
カーテンの隙間から薄暗い部屋に光が差し込んでいる。

「バッセーロ!苺を取ってきたよ」

ベッドに近づいた瞬間にイズコは目を疑った。
横たわっているバッセーロは石になっていたのだ。彼は毒が体内に回り完全に石化してしまったのだった。
間に合わなかったんだ・・・
イズコはがっくりと肩を落とした。

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イズコは、一人で宿屋ミノンの前で膝を抱えながら、地面に座りこみ沈む夕日を眺めていた。

「やあ、隣りに座ってもいいかい?」ホルトスがいつの間にか現れて声をかけてきた。無言でうなずくイズコ。

ホル「沈む夕日が綺麗だなあ。本当に。・・・友人の件は噂で聞いたよ。残念だったね、、」

イズコの目から涙がこぼれ落ちた。
「この涙は何なんだ。こんな涙は偽物だ」

ホル「どうして?」

イズ「彼を助けることはできなかった。そして死んだ。それは悲しいけど、そこじゃない。彼は病状が悪化して、あまり動けなくなりそして喋れなくなった。体が麻痺して固くなっていったんだ。僕は彼に合うのが苦痛になった。人が苦しんでいるのをじっと見ていることが耐えられなかったんだと思う。彼の面倒は他の人に任せたまま会いに行かなくなった。そして彼は孤独のままに別の世界に旅立ってしまった・・・人が死ぬことは運命のようなものがあるかもしれない。ただ僕なら彼を孤独にさせず看取ることができたかもしれなかったのに、、、」

ホル「・・・・・」

イズ「また、時を巻き戻したとしても、同じことを繰り返さないという自信がない・・・」

ホル「そうか・・・私もパーティー仲間を失ったことがあってね。その時その彼を助けることができたんじゃないかと自分を責めたんだ。でもね、失った過去はもう戻ってこない。ずっと自分を責めても誰も喜ぶことはないってね。だから、彼の霊がどうすればあの世で喜んでくれるかなって。それをこれからの旅で探していこうと思っている。今はまだ力不足だけどね。」

イズ「・・・そう」

ホル「それに、我々も等しく命が尽きるときがやってくる。それまで精一杯生きていこう。急には気持ちを切り替えられないと思うけどね」



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