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あったらあったで、なかったらなかったで

今年に入ってスーツケースを何個か捨てた。

いつか再び海外に行けますように…と真っ赤な大きなスーツケースと、普段使いでやっぱり赤の小ぶりのRIMOWA。2つだけ残した。

使い倒して今や傷だらけのRIMOWAを眺めると、10年近く前に見たヤンヨンヒ監督の「かぞくのくに」という映画を思い出す。

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井浦新演じるソンホは、帰国事業によって北朝鮮に移り、東京に住む妹リエと長年離れ離れになっていたが、重病を煩い、日本への一時帰国が許され再会をする。2人はある時たまたま新宿のRIMOWA ショップに入る。ソンホはそこで、並んでいた立派なスーツケースをリエに見せて「お前はこれを持って好きなところにいけ」と言う。そんなシーン。

値札が目に入ると、それは北朝鮮に住むソンホに到底買える額ではなく、二人は苦笑いをしながら店を出るのだが、いずれ自由の無い国に戻らねばならない兄が、自由の国日本に住む妹に送ったその言葉はとても愛情深く哀しかった。

なぜかその時のソンホの言葉は、ちょうどその頃若くして亡くなった私自身の兄からのメッセージのように思えた。


好きな時に何処へでも行ける人になろう


映画のリエと同じように手に入れたRIMOWAのスーツケースは当時の私にとって目が飛び出る値段だったが、映画をきっかけに、旅をしながらできるワークスタイルにシフトする事を決めた。数年後、カレーの学校に入ると、一応愛知県に住んでるのに普通に東京のイベントに現れるからワープ組だね、なんて呼ばれた。

ワープ先輩には2期のいすずさんや3期の奥田くんがいる。自分と似たようなイッパンニハオカシイフットワークの軽やかさを持つ人を見ると安心する。

それでもこの2年はなかなかワープ(遠出)しづらい日々が続いたから、今年は

カレーの学校長の水野さんがよく言う
あったらあったで、なかったらなかったで
と言う言葉を頻繁に思い出した。


出来なくなったことを追いかけるより、今は死ぬまでにやりたかった事を沢山やってみよう

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まずは、何度誘われても「来世でやるよ」と断っていたサーフィンを今世でやってみた。当然、まだ手取り足取り教わりながらだが、全く泳げない私にとって、サーフボードは海の上を自由に移動できる魔法の絨毯のようだった。思ってもみなかった場所を移動できる手段を知ってしまった


次に長年のペーパードライバーを返上することにした。首都高は涙目で運転、駐車が本当に苦手。それでも自らハンドルを握りながらの移動は、公共機関での移動のドナドナ感に比べて主導権が自分にあるようでワクワクする


山手線を1周する企画にも参加させてもらった。歩く速度で見る景色は、車や電車の中から見る景色と随分違う。調子に乗ってその1ヶ月後、「東京エクストリーム100」なるイベントに一人で参加して小田原から江ノ島まで35キロ完歩できたときは、この先帰宅難民にならない自信がついた


せっかく東京でカレーやビリヤニやら勉強会に参加してるのだからアウトプットしたら?と言われて夏から2ヶ月に一度、3人で一つのワンプレートをつくる間借りカレー屋さんをする事になった。私はなぜかビリヤニ担当。自分のために作るのとお金をいただいて人のために作る…その緊張感の差に毎度おののいている。けど楽しい

やってみたかった事、諦めていた事にエイっと飛び込んでみたら想像してなかった景色が広がった


学校生の間でジワリジワリ定着してきている様子の日の出を写真に撮る10日間チャレンジ。発起人5期まちゃこさんにいつの間にか一度参加させられてたんだけど、朝が苦手と決め込んでいた自分にとって、終わってみたら物凄く良き影響だった。地球が1日の中で最も輝く瞬間を知ってしまった。


同じ景色が全く別の印象を持つ。
時間によって、見る速度によって、心の状態によって。世界はなんともカラフルなパラレルワールドだった。



ところで今年も沢山お世話になったカレーの学校。好きなものは好き!とやってみたい事に躊躇せずトライする、しなやかで自由な、ココロに軽やかさを持った大人達の集まり。

サウナと林間学校
ビリヤニの学校
カレーの粉
玉ねぎ研究
etc

みんなの好奇心に便乗して、この一年も楽しい時間を沢山過ごすことができた。本当にしあわせな事だ

例えば夜な夜なトマトとかキノコとかを乾かす
素敵なカレーの粉チームのみんなで作った作品


好奇心と希望が今を作り、過去を変える。
この2年の、世界中で広がった大騒ぎをいつか笑って思い出せるように、おまじないのように唱える。


あったらあったで、なかったらなかったで

この先も

好きな時に何処へでも行ける人でありたい
来年も心に映る景色をたくさん増やしたい

spice up my life !!!!!



エンディングテーマは
「暗闇から手を伸ばせ」  小沢健二

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