そのSEOは、なんのため?~目的地なきSEO&SXOは、どこにも行けない~

前回は……
SEO(検索エンジン最適化)に変わるSXO(検索体験最適化)って考え方を知りました。
たけど、検索エンジンが検索体験をチェックするようになっていくので、結局SXOも広義のSEOに含まれるよね!
だからGoogleガイドラインに沿ったSEOしようね!
……ってお話でした。

具体的な「SXO≒ガイドラインに沿ったSEO」をやっていく前に、SEOに関わるWeb業界の変化のあれこれと、考えておかなければならないことを示します。

マーケティングファネルをおさらい

広告を目にした人が10,000人いれば、そのうちクリックしてページへ遷移してくれる人は1%(CTR1%)で、100人
ページを閲覧した人が100人いれば、そのうち購入(コンバージョン)してくれる人は1%(CVR1%)で、1人

主にWebページにおいて、こんな感じで段階的に人が選別されていき、最終的にページが目的としている行動をユーザーに行ってもらう流れのことをマーケティングファネル(※1)と呼んだりします。
ファネル(漏斗)を伝わって、ユーザーが目的(成約)へ下りていく……みたいなイメージですね。

ファネルの各所を強化して成果を上げられる

最後に購入してくれた人が、上記のモデルでは1人でした。
もっと売りたい! たくさんの人に買ってほしい!
というなら、上記の例の場合、テコ入れできる箇所は3つ。

【1】広告を目にする人10,000人をもっと増やす。
【2】広告をクリックしてページ遷移してくれる人100人(CRT1%)をもっと増やす。
【3】ページを閲覧してから購入してくれる人1人(CVR1%)をもっと増やす。

仮に、全部のテコ入れに成功してすべての箇所で2倍になったとしたら、どうでしょうか?

広告を目にした人が10,000人の2倍の20,000人
そのうちクリックしてページへ遷移してくれる人は1%の2倍の2%(CTR2%)なので400人
ページを閲覧した人が400人いれば、そのうち購入(コンバージョン)してくれる人は1%の2倍の2%(CVR2%)なので8人

スゴイ! 8倍の成果!!!

全部で成功する、なんて夢のような話です。ですが、たとえ全部ではなかったとしてもどこかを2倍にできれば、それだけで最終的な成果を2倍にできるわけです。
と、いうのがマーケティングファネルにおける改善手法の基本的な考え方。

ファネルスタートを「検索」にしたいからSEOする

検索によるページ流入は、「オーガニック」とか「自然検索」とか呼びますよね。
上記の例では、「広告を目にした人が10,000人」という定義でしたが、広告を出稿するには費用がかかります。
広告費1万円/月、ページ制作費1万円、1人が購入してくれると1万円相当の成果。……だったとしたら、ビジネスとして成立しないですよね。
だって、1人に購入してもらって1万円相当の成果を上げるために、毎月必ず1万円の広告費が必要だから。

でも、マーケティングファネルのスタートを自然検索に任せられるとしたら、どうでしょうか???
広告費ナシ、ページ制作費1万円、1人が購入してくれると1万円相当の成果。で、売り上げ的にはトントン……初月は。
そう、利益が上がらないのはページ制作費がかかった初月だけ。あとは待てば待つだけ、来月、再来月……と、利益を生んでくれるページになるわけです。
(計算はめっちゃ単純化しています。)

だから、自社ページには広告じゃなくて自然検索で辿りついて欲しい! SEO対策して、検索結果の上位に表示させたい! SEO、したい!
と、いうことなのです。

いわば、自社のマーケティングファネルのテコ入れにおいて、「流入をゼロ円でやりたい!」という際の改善手法がSEO、みたいなものですね。
そして、SEOをやりまくって検索順位をアゲにアゲれば、「流入数を増やせる(テコ入れができる)」というわけです。

マーケティングファネルをバリューチェーンから問い直す

さて、そんな万能かに思えるマーケティングファネルと、それを支える各種施策、そして施策の代表格SEOですが……ちょっと考えないといけないことがあります。

「マーケティングファネル」で検索すると、「マーケティングファネル 古い」とかが提案されるんですよね。
でも「古い」というよりも、この考え方は大事だけど、マーケティングファネルだけだと不完全だな、と個人的には感じています。

なぜマーケティングファネルだけだと不完全なのか。その理由を説明します。

広告効果2倍、なのに購入者が2倍にならないワケ
ある会社では、けっこう攻めた、ギャンブル感のある挑戦的な商材を扱っていました。
なかなか購入者が増えないので、広告へテコ入れを行うことにしました。
結果、広告効果は超爆アゲ!! 2倍じゃすまないくらいの流入増加となりました!
……が、購入者は一向に増えない……。先ほどの例で例えるなら、広告改善でページに来る人を100人から200人にしたのに、購入者が2人にならず、1人のままだったのです。
理由はとっても簡単。
ページを閲覧した人が、それまでは1%が購入してくれていたのに、0.5%になってしまったからです。つまり、かつては100人見たら1人買ってくれていたものが、広告テコ入れ後は200人が見ても1人しか買ってくれなくなっていたのです。
そしてその原因も、とっても簡単。
改善後の広告では、「超安定した、ド定番の大人気商品ですよ!!」みたいな謳い文句だったからです。
その広告を目にした人が、いざページにやってくると……なんか、キレッキレの攻めまくった商品が置いてあるわけです。買うか? それ?
(これは、実際にあった怖い話です。)

バリューチェーンで考えないと、後続の足を引っ張る
上記の問題が起こってしまった根本の原因は、広告チームが自分たちの「流入数を2倍にすること、という数値目標」に終始してしまって、「自分たちが果たしている役割」を意識できていなかったことにあります。

自分たちの広告の先には「攻めた商品」があり、それを買ってもらわないと成果にならない。その、攻めた商品を買ってくれそうな人を集める必要があったのですが、そうではない人を集めてしまったのです。ターゲティングがまったく異なるため、当然、想定された購入率(CVR)にはなりません。

それぞれの段階には果たすべき役割があり、その役割が価値を生み、生まれた価値が連鎖的に連なって、より大きな価値や成果になる……こんな考え方が、「バリューチェーン」だと、なんとなく理解しておいてください。

マーケティングファネルは、それを支えるバリューチェーンで成り立っているのです。

これは、SEOを行うにしても同じこと。
バリューチェーンを意識できずにいると、ここで示したような過ちを犯す可能性が高くなります。

SEOへの逆風:検索上位のインパクト低下

がんばってバリューチェーンにも配慮してSEO対策を行い、検索結果を上位に上げたとしても……その効果は、年々下がっています。

検索結果で、2ページ目以降に表示されるページは存在しないものだと思ってください。そのくらい、クリックされません。これは、ずーーーと同じく言われ続けてきたことです。
だから、できるなら1位、それが無理でも2位、3位の表示順を取れれば、まだ価値がある……と、信じられていました。
少なくとも、2000年代前半から2010年ころまでは。

かつて、検索結果1位のクリック率はかなり高かったのですが、それが2010年時点ですでに1位のクリック率は50%、そこからどんどん低下していき……。今や、スマホでは検索結果で1位を取っても、(平均値で)30%を切っているクリック率だそうです。

何もしていないのに、がんばって検索結果1位を取った際の効果が10年前より20%以上も下がってしまったのです。

これにはいくつか理由がありますが、「広告領域」の影響が大きいといわれています。

Googleも慈善企業ではないので、広告費を得て広告を表示しています。
例えば今、「SEO」でGoogle検索してみてください。「広告」というのが、検索結果1位よりも上部に表示されると思います。(ターゲティングによってはされないこともあるので、ご了承ください。そのときは、なんか別の単語でやってみて!)

かつては「検索結果の1位」が鎮座していた場所に、今は「広告」が居座っているのです。(検索単語によっては、広告がないこともあります。)

しかも、かつてはクッソみたいなどうでもいい広告ばかりだったのが、技術の進歩によってターゲティング広告などと呼ばれるものが発展したりして、すごく「ありがたい、求めていた、思わずクリックしちゃいたくなるような広告」が表示されるようになってきています。

また、生まれたときからインターネットとネット広告に触れてきたデジタルネイティブ世代が増えるにつれ、広告への嫌悪感が薄れているのではないか、とも言われています。
(インターネット老人会のみなさんは、ネット広告やアフィリエイトが親の仇なので嫌悪しており、絶対にクリックしません。わしもじゃ。)

せっかくSEOしても上位表示のクリック率が下がってきている、というのはツラい話です。

SEOへの逆風:新規じゃ大手に勝てない

検索では、最大手(リーダー)が勝ち続けるようにできています。
上位に表示されるから、ユーザーのクリックが集まる。クリックが集まるから、良いサイトだと検索エンジンでの評価が上がる。評価が上がるから、検索結果の上位表示が保証される。
知名度が知名度を生み、集まってきたクリックがさらなるクリックを生む……そういう構造だからです。

例えば現実世界のブランドだったら、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー(※2)がおり、2番手3番手や、それこそ業界の隅っこの零細企業でも生きているチャンスは大いにあります。

ですが、検索でのビッグワード(検索数が多い単語)では、ムリです。2ページ目での表示以降はおろか、昨今のクリック率低下により、検索結果1ページ目でも相当な上位でなければ、存在しないのと同じになります。
生きていけません。

コンテンツありきでビッグワードは取れない

自社のページから購入者を増やしたい。だからたくさん検索流入を増やしたい!
となったときに、「検索上位を取りたいキーワード」を用意したりします。

が!
これまでお伝えしたように、「ページの内容(コンテンツ)」と合ったワードでなければ、検索上位に来ることはできません。
Googleガイドラインより

そして、検索数が多い単語(ビッグワード)には、大抵、すでに大手がいます。
ここで言う「大手」とは、「有名サイト」とか「大手企業」という意味ではなく、ビッグワードでガッチリ検索上位になりきって、不動の1位を獲得しているサイトのこと。
(まぁ大抵、有名サイトとか大手企業なんですけどね……。)
前述したように、ビッグワードは覆すのが難しいです。

ビジネス的にすぐに使えそうなビッグワードって、大抵取り切られているんですよね……。

自社のビジネスに即した内容にすれば、検索に出てきそうなのはビッグワード(よく検索される単語)になってしまう。でも、ビッグワードでは既存の大手に勝てない。
奇をてらったワードを狙おうとすると、自社の提供するコンテンツから乖離してしまい、そもそもSEOが成功しない。

そんな八方塞がりに陥ってしまうことは、よくあります。

そのページ、そもそもSEOやる意味ある?

自社のコンテンツが極めてニッチだったり、到底「自然検索」されなさそうな分野だったり。

そもそも、SEOしても成果につながるようなビジネスモデルじゃない、っていうことも、けっこうあります。

SEOしても成果が上がらないんだったら……そもそもSEO、やる意味ある!? なくない!? 

または、マーケティングファネルとバリューチェーンで考えたとき、ボトルネックが流入以外の場所にありそうな場合、なども当てはまるでしょうか。
広告のクリック率(CTR)や、ページの購入率/成約率(CVR)がクッソ低かったりして。
そんなときは、SEOやるよりも先に、CTR改善/CVR改善をやったほうが、いろいろうまくいきます。
成果改善の鉄則は、優先度をつけること。そして優先度は、「インパクトが大きいものから」と「今すぐ簡単にできるものから」を高く付けます。まずは、成果が出そうなところからやっていきましょう。
SEOに固執する必要はありません。

まとめ

・自分たちのバリューチェーンとマーケティングファネルを意識しよう。
・「検索上位がもたらす恩恵」が低下していることを覚えておこう。
・ビッグワードは取れないもの、と考えて、別の手段を探そう。
・成果アップのための手法が、「SEOで問題ないか」確認しよう。

なんでSEOやるの? 何の目的があってSEOやるの? SEOでどうなったら成功なの?
上記のような「SEOの目的地」を決めておかないと、失敗しちゃいます。

ビッグワードは取れないもの、と考えて、別の手段を探そう。
↑それができりゃ苦労はねぇ!

と、お考えでしょう。次回は……次回こそは、上記を踏まえて実際にページをどうしたらいいか? についてお話します。
しばし待たれい。

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。

※1:マーケティングファネル
余談だけど、マーケティングを初めてファネル(漏斗)に例えた人、確実に漏斗使ったことないよね。口が広いから漏れずに全部注げる、っていう道具じゃん、漏斗って。漏れてるじゃん、マーケティングファネル。
マーケティングファネルの詳しい解説じゃなくてごめんなさい。せっかく注記へ飛んで、わざわざ読んでくれたのに。

※2:リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー
マーケティングのすごい人、フィリップ・コトラー氏が提唱した市場の地位のこと。
リーダーは、その分野の最大手。
チャレンジャーは、業界2位とか3位とかで、リーダーに挑んでいく人たち。
フォロワーは、リーダーやチャレンジャーの手法をそれほどコストをかけずに真似したりして、リーダーやチャレンジャーとは競合しない地位でよろしくやってる人たち。
ニッチャーは、ほかの人たちが攻めていない市場の空白(ニッチ)を狙って、分野は狭いけどその分野の第一人者になる、みたいな方法でよろしくやっている人たち。
茶化さずに、ちゃんと(?)説明してしまってすみません。

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