お店で店員さんにあれやこれや質問して、丁寧に答えてもらったけど、商品は買わない。そんな不義理を、別に不義理に感じないのがWeb広告なんだけど、じゃ、どうするの、ってお話

あなたは、デパートを訪れた。
うろうろしているとスタッフさんがやってきて、エスコートしてくれる。
「それでしたら、5Fの家電コーナーに置いてありますよ。」
あなたは5Fへ行く。家電コーナーでは、家電担当者の方に丁寧に説明してもらう。
「そのご要望でしたら、この型がオススメです。お客様が求めている、ほとんどすべての要望をかなえられます。ご購入なさいますか?」
あなたはオススメされた家電の型式番号を控え、怪訝な顔をする。
そしてこう答えた。
「え、ここじゃ買わないけど。普通にネット通販で買うよ???」


あなたは、バーを訪れた。カクテルの豊富さとバーテンダーのホスピタリティが有名な名店だ。
席に着くなり、あなたは矢継ぎ早に質問する。
「それほど甘くなくて、アルコール感は少なめ、それでいて爽やかなフルーティーさを感じられるカクテルはありますか?」
さすが名店と呼ばれるだけあって、バーテンダーさんは要望通りのカクテルをスラスラと述べ、次々と候補に挙げる。追加でいくつかの質問をしたうえで、答えに従って特にオススメのカクテルをざっと3種類程度、その特徴とともに教えてくれた。
「どれをお飲みになりますか?」
あなたは怪訝な顔をして、こう答えた。
「え、ここじゃ飲まないけど。似たヤツをスーパーとかで買うよ???」


あなたは、ブラウザを開きGoogleを訪れた。
友人との会話中、気になる単語が出てきたからだ。
あれやこれやと検索窓に単語を入力して実行すると、いくつかの解説ページを表示してくれた。
検索結果の上位ページが表示されているよりも上の空間に、関連ワードを含んだいくつかの広告が差し込まれる。
「このキーワードで検索している人には、この商品がオススメですよ。」とでも言いたげだ。
あなたは怪訝な顔をして、こう考えた。
「え、ここじゃ買わないけど。」


Web広告だと、日常では起きにくい不義理がよく起こる

上記3つのケースについて、最初と2番目については、なんだか不義理なやつだな、と思うのではないでしょうか。特に2番目のケースは、なかなか考えられないダサい行為だと思います。最初のケースに関しても、もうちょっと断り方があるだろ! と思います。
一方で3番目のケースは、みなさんが日常で行っていることではないでしょうか。少なくとも、私はそうです。そして、まったく不義理だとは感じません。

ですが、考えてもみてください。別にGoogleさんから請われたわけでもないのにGoogleのページへわざわざ出向き、お願いされたわけでもないのにいくつか単語を入力し、検索し、結果を見て満足したり、あまつさえ「けっ、最近の検索結果上位はSEO対策の『いかがでしたでしょうか記事』で荒らされてやがるなぁ。天下のGoogleさんも程度が知れますなぁ」といった悪態をついたりすることさえあります。そのくせ、ブラウザのホームにGoogleを設定していたり、ブックマークにしっかりとGoogleを残しておいて、折に触れて利用するのです。

検索機能にタダ乗りしてるけど、別に罪悪感はないよね

これだけGoogle検索を利用しているにも関わらず、広告で表示された商品を買うことは稀なのではないでしょうか。一度もない、という方もいるでしょう。かく言う私もその一人です。
購入したい商品が決まっていて、どの商品がいいか検索していたという場合は別かもしれません。
ですが明確に購入の意思をもって検索したのでもない限り、突然現れた商品を購入することはないでしょう(※1)。

これは、Googleさんががんばって費用をかけて整備した検索機能をタダで使っている行為にほかなりません。ですがまったく罪悪感はありませんし、ほかの人が同じ行為を行っていたとして注意したりしないはずです。

なければいい邪魔者だと思っている人が多いことは意識しよう

冒頭で例を挙げた3つのケースは、多少の誇張があるかもしれませんし、まったく同じ状況を当てはめたわけでもありません。
そしてもちろん、Google検索にタダ乗りしている人たちを非難する意図もありません。
比較したときに「現実世界では起きにくい不義理が、Web広告では日常茶飯事なんだな(※2)」ということが言いたいのです。

Google検索だけでなく、例えばYouTubeの視聴も同じです。プレミアム会員になれば広告をなくせるのですが、広告に文句ばっかり言ってる人はそれをしませんし、もちろん広告の商品も買いません(サンプル数=1の偏見。サンプルは私です)。マンガアプリも家計簿のアプリもフリー利用できるSaaS系ツールも、みんなそう!
出てくる広告、くっっっっっそジャマぁぁぁぁ~~消えろぉぉぉ~~って思いながら、タダ乗りしています。

タダで使ってるくせに収益感とか金の感じが出てくるとイヤに感じちゃう

広告、くっそウゼぇぇって思う理由は、Webで得られるサービスとかって、タダだなって感じがあるからです。ホントはタダじゃないんだけど。
そうなりやすい性質があるのです。
タダで使えるはずのものが、なんか金をせびってくる感じがするから、イヤな感じになるのです。
本来的にはタダじゃないサービスなので、使用に関して対価を支払うなんて当然のことですよね(※3)。でもなんか、イヤに感じちゃいます。
もちろん、せっかく動画のいいところだったのに動画広告にジャマされてイヤだ、みたいなこともあります。

ユーザーの性質を知ったうえで広告を作ろう

前項でも少し触れましたが、本来はタダじゃないコンテンツにタダ乗りしているくせに「金のニオイがする広告はイヤだ!」「広告とかから買ってやるもんか!」って言っているユーザーが悪い、というわけではありません。
そういった性質があるよね、というお話です。

今は良くないとされていますが、コンテンツに偽装した「ネイティブ広告」も、広告のニオイを消そうとした試みの一つであったのでしょう。

そもそも、Googleの検索結果に挿入される広告は、まるで検索結果の上位であるかのような位置に配置されており、場合によっては検索結果上位のページだと勘違いしてクリックしてしまうこともあるでしょう。
事実として、ここ数年で1ページ目や検索結果1位への遷移は著しく低下しています。検索したユーザーのおよそ30%程度しか検索結果1位の記事へ遷移していないのだそうです。理由は、検索結果1位のページよりも上に置いてある広告を先にクリックするから(※4)。
このように、各社が広告のニオイを消すことに必死です。

やっぱり、誠実に作るしかないと思う

とは言っても、広告のニオイを消し過ぎるとステルスマーケティングになります。ステマは、そういう不誠実なマーケを戒める系のヤツで明確に禁じられています(超うろ覚え……明確とは……気になった方はあとで調べておいてください。そう、Googleでね!!!)。
前述したネイティブ広告もそうです。信用ならないヤツがやっている不誠実な手段であるダークパターンの一つに挙げられています。(ダークパターンについての過去記事はこちら

ニオイを消しても消しても、ユーザーはかぎ取りますし、そして基本的に忌避します。
もう、広告は広告として、変なダマしとか入れず、真正面からバーンと作っていくのがいいんじゃないかな、と思います。
なお、これはめっちゃ私見です!!!!
でもかつてTwitterを眺めてたら「タイムラインに失礼します! 広告です!」って書かれているクルマのプロモーションが流れてきてビックリしましたことを覚えています。今でもそのメーカーには好感をもっているし、誠実なんだろうなと思っています。
テレビCMも、めちゃめちゃCM感が出ているヤツのほうが見ていて気が楽です。
苦労した人のドキュメンタリーだと思ったら謎のサプリのCMだったとか、いい感じの風刺かと思ったらなんちゃら新聞のCMだったとか、そういうのを見るよりも好感がもてます。そういう偽装したCMは、ネイティブ広告と同じような手法なので、やりたくなる気持ちは分かります。

でもやっぱり、あんまりごまかしたりダマしたりせず、ちゃんとコンセプトを明確にして、求めているターゲットにしっかり訴求する広告を作るほうがいいよなぁ、と思います。

まとめ

  • Webとかだとみんなタダ乗りしまくるし、それを不誠実だと思わない。

  • タダだと思ってるから、広告とか金をせびるニオイはめっちゃ嫌う。

  • ユーザーの性質を知ったうえで、ガッチリと広告を作っていこう。

なぜこんな記事を書いたのかというと、「ユーザーって、現実世界じゃ絶対にやんないようなタダ乗りを、Webだと平気でするよな……あっ!!! オレもそうじゃん!!!!」って気づいて、衝撃的だったからです。

そんなユーザーの性質を意識することによって、今まで感じていた、なんでこの広告はイヤなのにこの広告は好ましいと思うんだろう、という疑問を説明できるようになったのがうれしかったのです。

なんとなく頭の片隅にいれておいてもらえるとうれしいです!

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。


以下、本編と同じくらいの分量がある注記です。

※1:明確に購入の意思をもって検索した
ちなみに私はひねくれているので、明確に購入の意思をもってGoogle検索し、良さそうな商品を見つけたのち、Amazonへのリンクを確認したら一旦ブラウザを閉じ、アプリでAmazonを開いて再度Amazon上で先ほど目星をつけた商品を検索したうえで購入しています。ひどいヤツですね。
もはや「Googleにはビタ一文入れたくねぇ」という強い意志があるのかもしれません。

※2:現実世界では起きにくい不義理が、Web広告では日常茶飯事
実は、意図して避けたのですが似たような事例があります。
それがテレビCMです。
多くのテレビ番組は広告費によって制作されているので、その番組が好きならCMで出てきた商品を買ったほうがいいのです。少なくとも、CMの商品を購入しなかったのなら、タダ乗りして視聴したことになります。
厳密にはテレビCMにはマス媒体としてのブランディングなどちょっと違うスキームがあるので、本編では言及を避けました。
詳しく語り合いたい人は、あとでお茶しようね!

※3:対価を支払うなんて当然のことですよね
公園とか道端とかで大道芸をやってる人がいて、「ほうほう、なかなかおもしろいな」と思って見ていたら、最後に「では、お気持ちだけでもいただけたら……」と言って集金しはじめたら、なんかイヤに感じます。
これは文化的な違いがあり、日本の文化として路上パフォーマンスがまだ浸透していないという側面もあります。良いパフォーマンスには相応の対価を、という考え方が浸透している文化もあります。
そういった文化では、最初から最後までかぶりついて見ていたのに、それほど良くなかったのなら払わずに立ち去ることもあるそうです。
この件に関してイヤに感じるか否かは、「最初に言ってよ」ではないでしょうか。
最初っから、「場合によっては金がかかる」とわかっていたら、見るかどうかをその時点で判断できます。でも、最後になって言われるから、なんか裏切られた感じがするのです。
そりゃ、めっちゃめちゃ練習が必要なパフォーマンスが、普通に考えたらタダなわけないじゃないですか。
金がかかることを知っている文化では、最初から知っているので、受け入れられる。受け入れられない人は、そもそも避けることができる。
もしかしたら我々は、優良だけどタダかタダ同然のコンテンツやサービスが身の回りに多すぎて、「良いパフォーマンスには相応の対価を」という極めて一般的な考え方がマヒしちゃってるのかもしれませんね。
この辺は、会社に大道芸にめちゃ詳しい新卒の方(!?)がいるので聞いてみたいと思います。
上記とまったく同じで、GoogleもYouTubeも本当はタダじゃないので、どこかで金を回収しています。でも我々の目に触れるところで「最初に言ってない」ので、イヤに感じる度合いが強くなるのではないでしょうか。

※4:検索結果1位のページよりも上に置いてある広告を先にクリックするから
「広告から買わない、タダ乗りするヤツばっかり!」という意図のページなのに、「広告、めっちゃクリックされてる」という意味のデータを示してしまいました……。君ら、めっちゃ広告から買ってるやん……。
とはいえ、検索される内容全体から計算すると、実際に購入する人は少ないのではないでしょうか。
これは、「明確に購入の意思をもって検索した」人の購買行為であるとも言えるでしょう。
また、「検索結果と見間違えるような位置に、金をもらって掲載しているPR記事を置いておくこと」に対する不誠実さ、みたいなものはGoogle側に責任があると思います。
その広告をクリックしたユーザーは、購入したくてクリックしたわけではなくて、本人は検索した上位ページにしか興味がないのに、誤って広告へ誘導されてしまった、という例ではないでしょうか。

上記のような話題をもとにして、以前、「Googleは所詮、広告会社だ。社会インフラを担っているわけではない。」といった言説を見かけました。「所詮、広告会社」なのではありません。純然たる「広告会社」なのです。
そしてもちろん、社会インフラを担っているわけではありません。
我々が勝手に、彼らが整備した検索網を社会インフラであるかのように利用しているだけなのです。しかも、多くの場合はタダで。
この記事で紹介したWeb広告の考え方と同時に、Googleさんとの付き合い方もしっかりと意識しておくべきだと思います。

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