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「68海里」台湾統一への思いが見え隠れする中国の島で見たもの

突然だが、中国と台湾が最も近い場所をご存知であろうか。地理的には中国側の廈門と台湾側の金門島が最も近い場所にあたる。その距離はわずかの約2km。肉眼で確認することができ、そのあまりの近さには衝撃を受けるであろう。

しかし台湾側の金門島はあくまでも離島であり、今回のテーマの本質とは少しずれる。一般的に台湾と聞いたら千と千尋を連想させる九份、故宮博物院、中正紀念堂、聳え立つ台北101、こういった定番の観光地、台北を思い浮かべるのではないだろうか。それではその台北がある台湾本島に一番近い中国はどこか。それは福建省福州市に位置する平潭(ピンタン)島である。

なんだ中国側も島じゃねえか!

そう呆れる方もいるかもしれないが少し違う。ここは確かに島なのだが、2020年末には高速鉄道の平潭駅が開業、そして現在アクセスが非常に容易な福建省のリゾート地になっているのである。しかしそれだけではない。綺麗な海を無邪気に楽しむ若者、家族連れの背後には、台湾統一を連想させるスローガンやモニュメントが散りばめられているのが、この島の奇妙な特徴なのである。


台湾統一、中国の悲願が露骨に見える場所がそこにはあった

台湾海峡をバックに写真撮影を楽しむ観光客

中国と台湾本島が最も近い場所の距離はどれくらいか。その距離約126km、言い換えると68海里である。そしてこの数字が名前としてそのまま利用されている「68海里景区」という観光地が実はこの島には存在する。平潭島の中心地からバスで1時間ほど移動すると、潮の香りや蒸された熱気と共に、目の前にとある文字がデカデカと現れた。

祖国大陆距离台湾岛最近的地方

そう、ここが台湾本島に最も近い中国の島の、最も台湾本島に近い場所なのだ。
先へ進んでいくと目立ったモニュメントが2つ目に入ってきた。

同心石

中国大陸と台湾本島が同じ額縁に入っている。

同心窓

また目立ちはしないものの、注意して周りを見るとこんなものも目に入ってくる。こういった台湾に対するノスタルジックな思いが敷地内には散りばめられているのであった。

ご丁寧に日本語表記もされている

島の散策

68海里を離れからも島内でこういったモニュメントを見つけた。

北京から今自分がいる平潭島までラインが惹かれており、そこから台湾に向かって点線が伸びている。中国は台湾統一に向けて、北京から台湾へと直通する、その名も「京台鉄路」を計画しているのだ。それが非常にわかりやすく示されているモニュメントであった。

また、台湾特産店などではこういった露骨に表現されたものも見ることができた。

駅周辺とこの島の今後

ちなみに玄関口として利用した平潭駅は、だだっ広い敷地の割にはかなり閑散としていた。しかしこれから何やらできそうな雰囲気だけは漂っていた。そう、ここは台湾統一後を見据えた玄関口として、総合実験区に指定されている場所なのだ。

この島を表面的に見て、全体的な雰囲気として感じたメッセージ性は、穏やかで平和的なものであった。中国が目標として掲げる台湾統一とは一体どのような形で進んでいくのだろうか。そしてこの駅が終点ではなくなる日が来るのだろうか。複雑な心境を抱え、筆者は廈門駅に向かうための鉄道に乗り込んだ。


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