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【SWAT】融雪のいろいろ

はじめに

Soil and Water Assessment Toolと呼ばれる流域の水循環のシミュレーションモデルについてのおはなし。
この記事では特にSWATの融雪量の計算についてお話します(SWAT+ではないよ!)。


SWATにおける融雪イベント

SWATにおける融雪は,気温や積雪温度,融解速度,積雪面積によって1日毎に計算されます。
そしてこの融雪は,水循環の計算をする際には降雨として扱われ1日の間で均等に水が発生すると仮定しています(実際の河川では融雪の日変動により一日の中で流量が上下します)。
以下では融雪パラメータの簡単な解説をした後に,融雪の計算について解説します。


キャリブレーションパラメータ

SWATではユーザーが変更することのできる融雪量を制御する定数としてSMFMX,SMFMX,SMTMP,TIMPが存在します。しかし,これらのパラメータは流域で1つの値しか定義できず,仮に個々の地点毎(例えばサブ流域)に,これらの値を定義したいならSWATの改変が必要となります。基本的に降雪量の多い地域ではキャリブレーションの対象です。

SMFMX

6月21日(夏至)の融雪係数 $${(mm H_{2}O/day-°C)}$$
北半球では,SMFMXは最大融雪係数となり,南半球では,SMFMXが最小融雪係数となります。デフォルトの値は4.5。

SMFMN

12月21日(冬至)の融雪係数 $${(mm H_{2}O/day-°C)}$$
北半球にある流域では,SMFMNが最小融雪係数となり,南半球の場合は、SMFMNが最大融雪係数となります。デフォルトの値は4.5。

SMTMP

融雪が発生する閾値となる温度$${(°C)}$$
積雪温度がこの値を超えると融雪が発生します。デフォルトの値は0.5。

TIMP

積雪温度の計算に持ちいるラグファクター。積雪密度,積雪深等の積雪温度に影響を与えるその他の要因を諸々加味した値。デフォルトの値は1。


融雪量の計算

融雪量を求める式

当日の融雪量は融雪閾値温度と当日の最高気温の平均値から雪塊の温度を差の切り捨てした値に,諸々の係数を掛けた値で計算されます。

$${\displaystyle SNO_{mlt} = b_{mlt}\cdot sno_{cov}\cdot \lfloor \frac{T_{snow}+T_{mx}}{2}-T_{mlt}\rfloor }$$

$${SNO_{mlt}}$$ :当日の融雪量$${(mm H_{2}O)}$$
$${b_{mlt}}$$:当日の融雪係数$${(mm H_{2}O/day}$$-$${°C)}$$
$${sno_{cov}}$$:雪で覆われたHRU面積の割合
$${T_{mlt}}$$:当日の雪塊温度$${(°C)}$$
$${T_{mx}}$$:当日の最高気温$${(°C)}$$
$${T_{snow}}$$:融雪の閾値となる温度 つまりSMTMP$${(°C)}$$


融雪係数を求める式

融雪係数はSMFMXとSMFMNと元日から経過した日数で計算されます。経過日数は1年経ったらリセットです。SMFMX,SMFMNの値が大きいと融雪係数は大きくなり,融雪量は増加します。また,SMFMXとSFMMNの差が大きいと融雪係数の1年間の変化が大きいということを示します。
夏至、冬至に最大値、最小値を表現するようになっています。

$${\displaystyle b_{mlt}=\frac{b_{mlt6}+b_{mlt12}}{2}+\frac{b_{mlt6}-b_{mlt12}}{2}\cdot sin(\frac{2\pi }{365}\cdot (d_{n}-81))}$$

$${b_{mlt}}$$:当日の融雪係数 $${(mm H_{2}O/day}$$-$${°C)}$$
$${b_{mlt6}}$$:6月21日の融雪係数 つまりSMFMX $${(mm H_{2}O/day}$$-$${°C)}$$
$${b_{mlt12}}$$:12月21日の融雪係数 つまりSMFMN $${(mm H_{2}O/day}$$-$${°C)}$$
$${d_{n}}$$:1月1日から数えたときの日数(例:2月1は32)


積雪温度

積雪温度は,前日の積雪温度と当日の平均気温によって決まります。ラグ係数はそれら2つの温度がどの程度のバランスで当日の積雪温度に影響するかを表します。

$${\displaystyle T_{snow(d_{n})}=T_{snow(d_{n-1})}\cdot (1-l_{sno})+T_{av}\cdot l_{sno}}$$

$${T_{snow(d_{n})}}$$:n日の積雪温度$${(°C)}$$
$${T_{av}}$$:当日の平均気温$${(°C)}$$
$${l_{sno}}$$:積雪のラグ係数,積雪密度や積雪深等を考慮した値 つまりTIMP


最後に

今回は積雪の中でも融雪についてのみ触れました。SWATの積雪はもっと深いです。詳しい説明はドキュメントを読もう!!
よしなに。

参考文献

SWAT公式ドキュメントを参考にしています。

https://swat.tamu.edu/media/69311/ch04_input_bsn.pdf

https://swat.tamu.edu/media/99192/swat2009-theory.pdf


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